連載と同時進行で書いていたため、元ストーリーと繋がらない勝手なパラレル多め。
星矢とのクロスオーバーが混じったりもしますので、苦手な方はご注意下さい。
41.お題1 / 42.お題2 / 43.相身互い / 44.意見の相違 / 45.耳掻き
以下妄想お題をだしたーというお遊びスクリプト結果から頂いたお題2つ
◆お題1…礼服姿で「これ、脱いだ方がいいかな」と言っているアスプロスを妄想してみよう
威圧的なツノのついた肩あてと、仰々しい文様の入った法衣。
数ある教皇服のパターンのひとつだ。
だが趣味が悪い(とデフテロスには見える)。
この法衣を、たとえばセージは着ないだろう。
それを目の前の兄が肩から羽織っている。
「死んだときに作ったものだが、お前との戦闘前に着替えて、異次元に片付けておいたのが放置したままになっていた。なつかしいな」
アスプロスは教皇の兜(レプリカ)を片手にくるくる回している。
デフテロスが半眼で兄を睨むと、その視線の強さに珍しく兄が怯んだ。
「…脱いだ方がいいか?」
「ああ」
即座にデフテロスは肯定した。
それだけでなく、脱いだ兄の手から法衣を奪うと、返事も聞かずにカノン島の溶岩の中へテレポートさせて、叩き込んでしまった。
(トラウマだったのだろうか)
そんな弟の姿を、アスプロスはほんの少しだけ反省しながら眺めた。
2011/8/26
◆お題2…浴衣の前をはだけた状態で動けなくなっているデフテロスを妄想してみよう。
日本の着衣だといって、ユカタとやらをアスプロスが持ってきた。
どういう経緯で兄がその知識を得たかと思うと、はらわたが煮えくり返ってくるので、それは考えないようにしておく(日本出身の男など、あのひげ面の半神もどきしか知らん)。
「日本の衣服は、基本的に一枚布を有効に使いまわせるようになっているのだ。このユカタも糸を外して広げれば再利用できる。発想としてはギリシアのヒマティオンと同じだな」
「随分薄い布地に見えるが」
「夏用のものだからだ。火山島であるこの地でのくつろぎ着…そうだ、風呂上りに羽織るには丁度よかろう?」
アスプロスは楽しそうにそれを広げ、それだけでなくデフテロスを脱がせ始めた。
「に、兄さん何を」
「サイズの確認だ。俺に丁度良いサイズなので、お前にも合うはずなのだが…」
「アスプロスに丁度良いなら、確かめるまでもなく俺にも合う」
「俺は俺、おまえはおまえだ」
よく判らない理屈で上着を全部奪いとり、こともあろうに下衣まで脱がそうとしはじめる。
「ま、まて、下は関係なかろう!」
「しかし日本人はキモノの下に何も履かぬと聞いた」
「それは女性の話だろう!」
「……あの男、騙したのか」
騙されたと言うのはなんだ。どういう状況なのだそれは。間違いに気づいたのか、兄の手が止まる。しかし、俺の皮のズボンは既に半分以上下ろされている。
「まあ、細かいことは気にするな」
最強の星を持つアスプロスは、時々とても大雑把で、強引だ。
人形遊びをするように、俺を脱がせてユカタを羽織らせた兄は、満足そうにニッコリと笑っている。
「実は俺の分もある。お揃いなのだ」
豪快に脱ぎ始めた兄を目の前にして、俺は真っ赤になって固まるしかなかった。
2011/8/26
◆相身互い…双子同居シリーズ
「アスプロス、まだ背中に泡が残っている」
湯船へ戻ろうとした兄へ、デフテロスが声をかけた。
「浸かれば落ちるだろう」
「駄目だ。湯を汚す」
アスプロスは計算高く頭が良いくせに、わりと大雑把なところがある。たしなめながら湯から上がり、デフテロスは兄を椅子代わりの平らな岩に座らせた。
「髪もまだ濯ぎのこしが…丁寧に流しておかないと痛む」
「細かいな。お前こそ、髪を乱雑にしか洗っていなかったではないか」
「俺の髪はどうでもいい」
手作りの桶にたっぷりと湯を汲んで、アスプロスの頭からかけ流す。兄用にと風呂場に常備してある象牙の櫛でゆるやかに髪を梳き、綺麗に整えた後は、背中に残るサボンの泡も流し落とす。
そんな弟へ背中を任せながら、アスプロスは呆れたように言った。
「お前は俺のことばかりで、自分のことに無頓着すぎる…そうだ、次からは俺がお前を洗ってやる」
「!!!!!」
「そうすれば鏡がなくとも…デフテロス?」
無言のデフテロスの表情は変わらなかったが、隣の露天風呂が突然沸騰しはじめた。
周囲ではところどころ石がとけて溶岩ゲルと化している。
「そ、それほど嫌ならば、無理強いはせんぞ」
それを拒絶反応だと思い込んだアスプロスが、デフテロスの顔を覗き込むが、まだ弟は押し黙ったままだ。苦笑してアスプロスは衣類置き場へと向かう。弟の心情を正確に推し量ることには疎くても、その無言が怒っているのではなく、言葉を選んでいるゆえのものだとわかる程度には、アスプロスも弟を理解してきていた。
「…嫌ではない」
ゆうに五拍ほど置いてから、ぼそりと弟が返した言葉に、アスプロスは「そうか」とそっけなく、しかし口元に笑みを浮かべながら答えた。
2011/9/26
◆意見の相違…双子同居シリーズ
「悪くはないな」
呟かれた兄のことばに、デフテロスは振り返った。
「なんの話だ?」
「ああ、すまん。話しかけたわけではないのだ。黄金聖闘士による過去の任務報告などに目を通していたのだが…」
デフテロスが兄の手元を見ると、それはどうやら水瓶座の記録のようだった。視線に気づいたのか、アスプロスは弟の見やすいように、記録箇所をみせてやる。
「歌声と美貌で領地を支配した女と、その女に入れこみ、貢ぎすぎて破滅した男の妻による対決があったらしい」
「任務と関係のない部分だ」
「まあな。この未亡人、残った財産すべてつぎ込んで兵を募り、女領主ガーネットに仕掛けたそうだ。もっとも、ガーネットに従う宝石児たちに難なくあしらわれたようだが」
デフテロスはわずかに顔をしかめた。それが本当であれば、哀れな話だ。
「兄さんは、か弱い未亡人より、ガーネットのような女が好みか」
思わず尋ねると、アスプロスが噴出した。
「相手の誕生パーティーへ銃を持って乗り込む女の、どこがか弱い」
「しかし」
「己の持つ力でもって、領地を支配する女は確かに嫌いではない。だが、俺はこのフライユ夫人も嫌いではない。夫の死と失われた財産を嘆きながら、負け犬としてただメソメソ泣いて人生を終えるのではなく、自分の全力でもって己の意思をまっとうしようとしたのだ。好感が持てる」
アスプロスが女性を、他人を褒めることはめずらしい。以前のデフテロスであれば、兄の前で自分の意思を伝えることなく黙ったかもしれない。だが、今のデフテロスは違う。
「何を持って勝ち負けとするのか、オレにはよく判らん…しかし、死んでは何もならないと思う。ただの自棄ではないのか。妻をないがしろにした夫や、相手の女のことなど忘れて、残った財産で平凡に暮らしたって良いではないかと思う。未亡人のことを大事に思う家族とているのだろうから」
今度はアスプロスも笑わなかった。目を和らげ、デフテロスの顔を覗き込む。
「それは考え方の違いだな。俺であれば、負け犬であることを己に許すくらいなら、出来る限りをつくしたい。たとえ死のうとも、家族が止めようとも、俺の人生だ」
「では、俺は止めることにする。兄さんがどう考えようとも、俺は俺の意思で止める」
二人は顔を見合わせて、何も言わず口元をほころばせた。
「お茶をいれようか、アスプロス」
「ああ、頼む」
窓からは秋の風が流れ込んできた。
2011/10/14
◆耳掻き……LC&無印双子同居設定
「サガ、あれをやってくれ」
「ああ、あれか」
指示語で行われた会話が耳に入り、アスプロスは何となしにそちらを見た。サガは弟から棒状のようなものを受け取ると、ソファーへ腰をおろす。カノンがその隣へ寝そべり、サガの膝へ頭を乗せた。膝枕である。
いつものじゃれあいかと思って見ていると、サガがカノンの髪をかきあげ、串にも似た何かをカノンの耳へ差し込んだ。思わずぎょっとしてマジマジと見つめてしまう。カノンが視線に気づいてアスプロスを睨んだ。
「何か文句でもあるのか」
「いや、何をしているのかと思ってな」
そっけないカノンに代わって、サガが穏やかな声でアスプロスの疑問に答える。
「これは日本の耳掃除道具だ。星矢が土産に持ってきてくれてね。このようにして使うものなのだ。それにしても、日本はこういったものが土産として販売されるというのが面白いな」
串に見えた先には小さなヘラがついていて、それで耳垢を取るらしい。
「そんなものを耳に入れるなど、正気か」
アスプロスは思わず本音を零した。細い串とはいえ、充分凶器となるシロモノだ。自分に置き換えて考えてみる。
(もしもデフテロスが、あの串をオレの耳に突きたてて来たらどうなるか…)
思いかけて首を振り、いい加減自分は疑心暗鬼のクセを直すべきだと自省しつつも、あの細い棒を他者に使わせるなど正気の沙汰とは思えない。
アスプロスの逡巡をみた双子が、かわるがわる耳掻きの安全性を述べてくる。
「いや、自分でやるより安全だと思うぜ?」
「綿棒とそう変わらないと思うのだが」
アスプロスは後輩である双子座たちに尋ねてみた。
「兄弟であれ他人に急所をさらけ出すことが恐ろしくはないのか。そこまで耳腔を清潔に保ちたいのであれば、耳垢などアナザーディメンションで片付ければ良いではないか」
サガとカノンは膝枕の姿勢のまま顔を見合わせ、それからアスプロスの方を向いて同時に答えた。
「「耳内でアナザーディメンションを使う方が危険だからやめておけ」」
2011/10/26