HOME - TEXT - CP&EVENT - 約束の彼方46〜

◆約束の彼方
※ ロストキャンバスでの前聖戦双子関連SSよせ鍋。設定はバラバラです。
  連載と同時進行で書いていたため、元ストーリーと繋がらない勝手なパラレル多め。
  星矢とのクロスオーバーが混じったりもしますので、苦手な方はご注意下さい。
46.良妻賢弟 / 47.クッ○パッド / 48.珈琲 / 49.すれちがい鬼ごっこ / 50.独自技
◆良妻賢弟…LC&無印双子同居設定


サガ 「食事の支度はどちらが?」
アスプロス 「デフテロスだが」
サガ 「掃除洗濯もか?」
アスプロス 「勿論だ」
サガ 「その上、買い物までさせているのか…」
アスプロス 「俺は修行に専念する必要があったからな。お陰でデフテロスは一通り家事を出来るようになった」
サガ 「何を『自分のお陰』のように話しているのだ!それでは自立出来ていないのはお前の方ではないか!」

2010/12/04


◆クッ○パッド…LC&無印双子同居設定シリーズ


 現代に身をおいた異世界先代の双子座アスプロスが、あっというまにパソコンを使いこなしてカノンを驚かせたのはつい先日のことだが、彼の弟もいつの間にか兄やデスマスクからインターネットの仕組みを学び、使いこなせるようになっていたらしい。
 目の前でキーボードを叩いているデフテロスを見て、カノンは感嘆の声をあげた。
「お前ら凄いな。すっかり現代に馴染んでいる」
 双児宮にインターネットの回線は敷かれていない。それをアスプロスは、空間を繋げるという荒業により、聖域の拠点の空いている無線LANへプロトコルを飛ばして使えるようにした。デフテロスはそれを見よう見まねで同様の作業をこなしているのだ。
 そんなことを当たり前のようにさらりとこなす過去双子座のスペックを目の当たりにするたびに、負けていられないという克己心も沸く。今まではサガ以外に自分よりも優れた奴などいないという慢心があったが、聖戦での青銅たちといい、後輩黄金聖闘士たちといい、うかうかしていられないとは思っている。
 だが、先の話ではなく現時点で、この異世界の双子座たちは脅威だ。この男達と自分やサガが同時に双子座聖衣を呼んだとき、いったい聖衣は誰を選ぶのだろうか。
「そうでもない。まだまだ知らぬことばかりだ。情報を得るたびに、新鮮な驚きがある」
 キーボードを叩き終わったデフテロスが返事をする。
 一体どんなサイトを見ているのだろうと、ひょいと画面を覗き込むと、表示されていたのは、料理コミュニティ・クックッドのつくれぽ頁。しかも、ハンドルネーム『ニバンメ』の名で、もう幾つか投稿しているようだ。食卓で見た覚えのある料理写真が並んでいる。
「……」
 いつの間にか携帯写真まで使いこなしているということか。
 いや、突っ込みどころはそこじゃない。
「デスマスクがこのサイトを教えてくれてな。現代料理を知るのに大変役立っているのだ」
 肌黒の美丈夫が、真面目な顔で語ってくる。
「……そうか、良かったな」
 おそらくデフテロスが料理の腕を磨くのは、それを食わせる兄のためだろう。
 彼の人並みはずれたスペックの約9割は、アスプロスのために使われているんじゃないだろうか。
 カノンは遠い目のまま、何も見なかったことにして自室へ戻った。

2011/10/26


◆珈琲…双子の飲み物分担


「眠れないのかデフテロス」
 隣のベッドから呼びかけてきた兄へ、デフテロスは無言で頷いた。
「珈琲という飲み物は神経に作用するようだ…飲ませる時間帯を考えなかったな、すまん」
 いつも各種様々な茶やハーブティを用意してくれる弟への礼として、アスプロスの持ち帰った嗜好品が珈琲だったのだ。この時代においてはまだ高価な輸入品である。黄金聖闘士となった今だからこそ、入手可能なシロモノだ。
 アスプロスは起き上がって、デフテロスを覗き込んだ。
「暖かくすれば、神経も落ち着いて眠りやすくなろうだろう」
 言いながら、奥へつめるように動作で促し、寝ているデフテロスの隣へと潜り込む。
「実は俺も眠れんのだ…明日の修行も早い。稽古に障らぬようお前で暖をとらせてもらうぞ」
 ぴったり身体を寄せたアスプロスは、眠れないと言っていたくせに、直ぐに寝息を立て始める。眠りをコントロールするのも戦士の素養のひとつなのだ。いつどこでも眠り、緊急時には即座に目覚めて戦闘態勢に入れるようにするためだ。
 しかし、無防備な兄の寝顔を目の前にして、デフテロスの目は冴える一方なのだった。

2011/3/2


◆すれちがい鬼ごっこ…過去の思い出


「兄さんは、物凄く鬼ごっこが強かった」
 ふとデフテロスが懐かしそうに昔を振り返る。二人で酒を飲み始めて小一時間、アルコールには強い二人だが、そろそろ顔には赤みが差しはじめていた。アスプロスは当然とばかりに頷き、オリーブの塩漬けをつまむ。デフテロスお手製の肴だ。他にも燻製にした干し肉や、小魚の焼き浸し、薄く切られたパンなどが並んでいる。
「あの頃は、お前に追いつかれたら終わりだと思っていたからな」
 特に杳馬に闇の一滴を落とされたあとは、自分を見つめる弟の目が恐ろしくて仕方がなかった。負けず嫌いの気性もあいまって、絶対にデフテロスに捕まらぬよう、遊びとは思えぬ真剣さで逃げたものだ。
 しかし、デフテロスを振り切ることはできなかった。捕まりはしなかったものの、どこへ逃げてもデフテロスは追いついてきた。それがまたアスプロスの無意識を脅かしたのだ。
 種を吐き出してから、ストレートの蒸留酒を舐めるようにして口に含む。あの頃はデフテロスの前で酔うことなども考えられなかった。成り代わられる危険を常に抱いていたのに、隙などみせられるわけがない。
「それに比べて、デフテロスよ。お前は自分が逃げる側となるとてんで弱かった。今思えば、手を抜いていたのか?」
 軽く睨みながらも、アスプロスの口元は笑っていた。殺しあった自分達が思い出を楽しく語りあうなど、冗談のような贅沢だ。神々の思惑による隔離世界での蘇生であるものの、そこだけは感謝してもいいと彼は思った。
 睨まれた方のデフテロスは、もぐもぐと何か言いかけては言いよどみ、暫くしてからぼそりと呟く。
「わざとではない。しかし、アスプロスが追いかけてきてくれるのが嬉しくて、つい振り返ってしまう。捕まえて欲しいと思っていたのかもしれないな…そんな風に雑念が沸くと、次の瞬間には追いつかれていた」
「わざとのようなものではないか。鬼ごっこで、捕まえて欲しいなどと考える奴があるか」
 苦笑しながら、アスプロスもまた遠い記憶に想いをはせる。自分は逃げるばかりで、弟を振り返ったことなどあったろうか。
 デフテロスも少し酔っているようだ。目元の赤くなったまなざしで、アスプロスを見る。
「俺は今でも、兄さんに捕まえて欲しいと思う」
「…そうか」
 たまには自分の側が追いかけるべきなのかもしれない。
 アスプロスは杯の底に残っている酒を、ひといきに呷った。

2012/9/2


◆独自技…マヴロスエラプションクラスト


 目の前にあったはずの岩山は、放ったGEで跡形も無く吹き飛んでいる。
 デフテロスは己の手を見つめた。双子座の最終奥義。兄が血のにじむような思いで得た技だ。
 1度だけアスプロスが放ったのを見たことがある。本当に銀河が砕けるような、激しく眩しい輝きだった。同じ技のはずなのに、自分が撃つと色合いが異っていて、どうにも全く同じには再現できない。双子であっても、個性や小宇宙の差が表れるのだろうか。
 こんなところでも今更に、自分は兄の複写(コピー)ではなかったのだと思い知らされる。
 デフテロスは兄のGEが好きだった。
 大仰でもなんでもなく、アスプロスは死ぬほど努力して努力して、その果てに奥義を掴んだのだ。

(兄が完成させたあの技は、見よう見まねで真似をして近道をした自分のものとは違う)
 もちろん努力なら負けていないとは思うが、それでも自分の技はすべてアスプロス経由なのだ。
(自分だけの力が、欲しい)
 目の前の火山を見上げる。カノン島の活火山は、いまにも噴火しそうに煙を上げていた。
(そうして初めて、俺は自分の力で双子座になったのだと思える。死んだ兄の代わりにではなく)
 握った拳に力が篭る。

 ギャラクシアンエクスプロージョンを封印し、マヴロスエラプションクラストが編み出されるのは、もう少し後のことだった。

2012/9/3


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