JUNKには、ブログなどで勢いのままに書きなぐった小ネタが5話ずつ格納されています。
たまにこっそり加筆したり訂正したり。↑OLD↓NEW
◆フラグ…(ロスサガ)
「このあいだ双児宮に泊めて貰ったんだ」
アイオリアのところへ遊びに来た星矢の話を、何気なく隣で一緒に聞いていた14歳のアイオロスは、星矢の発言を聞いて姿勢を変えました。
それまでは片肘を付いてお菓子などをつまんでいたのに、すっかり向き直って弟と星矢の二人の会話に真剣拝聴モードです。
「あそこって客用寝室とかないし、ソファーで横になるつもりでいたら、寝台が広いから一緒に寝ようってサガが言ってくれてさ…サガの髪って、近くで触れると凄いイイ匂いがするのでびっくりした!」
1つ年下の星矢が自分より先にサガとの同衾イベントをクリアしたことに、アイオロスは内心のショックを隠せません。そんな兄に気づくことなく、アイオリアは穏やかに元気な後輩と会話をしています。
「そうだな、確かにサガの髪はいい香りがした。オレが子供の頃も良く面倒を見てもらったものだ」
「それ、なんか判る。サガって面倒見良さそうだよね。黒いほうはともかく」
「黒サガの時も、髪の香りは変わらなかったがな」
動揺しつつも聞き耳を立てていたアイオロスは、弟の発言に慌てて突っ込みました。
「ちょっと待った!アイオリア、何故お前が黒サガの事まで知っているのだ」
突然会話に割り込んできた兄の追求に、アイオリアは『しまった』といったような顔をしましたが、星矢がいることを考慮したのか、無難に答えます。
「偽教皇であることを追及しに行った時、幻朧魔皇拳受けて近くに寄ったことがあって」
星矢だけでなく、弟までなにやら特殊イベントをクリアしている様子です。
悔しくなったアイオロスは、さっそく自分もフラグを立てるべく、二人を獅子宮へ残して双児宮に向かいました。
「サガ、今晩泊めてくれないか」
双児宮から出てきたサガは、突然こんな事を言うアイオロスに目をぱちくりとさせました。
後ろにいるカノンは、悪い目つきを一層鋭くさせています。
「どうしたのだ突然。私のところへ泊まらずとも人馬宮はすぐそこだろう」
「君と一緒に寝たいんだ」
直球といえば直球すぎる告白に、カノンがギャラクシアンエ(略)の体勢に入りかけていますが、肝心のサガも、言った本人のアイオロスも、その言葉を深い意味は無く捉えているのが判るだけに、薮蛇を起こさぬよう技を繰り出すのを我慢している状態でした。
「それは構わないが…お前を泊める場所が無い」
「星矢のことは泊めたと聞いたぞ」
「星矢はまだ子供…」
言いかけて、サガは黙ります。アイオロスはこんな見かけ(身長187cm体重85kg)ですが、自分が殺したせいで13年前と変わらず14歳のままなのです。星矢とそう変わりません。
「判った。私がソファーに眠れば良いことだしな」
「オレと一緒に寝るのは嫌か?」
しょんぼりして一人称がオレに戻っている事にも気づかないアイオロスでした。
サガはとりあえずアイオロスの手を引いて宮の中へと招き入れました。
「嫌なわけはない…ただ、その…お前と一緒に寝ると言うのは、何だか妙な心持がして」
「妙?」
「私がお前を子供とは思えない…落ち着いて眠れないような気がするのだ」
頬に朱を走らせつつも、困ったようにふわりと笑うサガはやはり綺麗でした。
「サガ…」
目の前でこんな中学生日記を見せ付けられたカノンが、とうとう我慢できずに必殺技を放ったので双児宮は半壊し、結局三人で雑魚寝になったわけですが、アイオロスは冷静に
(イベントフラグを立てる時は、カノンの居ない時でないと駄目だったのだな)
と攻略チェックを心に刻みました。
2007/2/10
◆バレンタイン…(蟹+双子)
双児宮の主と巨蟹宮の主は、守護宮が隣であることと、元叛逆仲間であることもあいまって、わりあい隣人付合いが深い。
13年間を思えば隣人付合いどころではない深い関係なのだが、周囲の人間から見ると真面目で正義感の強い白サガと、悪も厭わないデスマスクが仲が良いという事が不思議なようだ。
聖戦後はサガだけでなく、カノンも一緒に巨蟹宮へ押しかける状態となっている。
というのも、
・サガは相変わらず村民に慕われているため、食材の差し入れが多い。
・カノンは海界土産に新鮮な海産物を持って帰ってくることが多い。
・デスマスクは料理上手だ。
…といった理由により、食料のお裾分けがてら、双子揃ってデスマスクの手料理を振舞われる機会が一層増えたからだ。今日もカノンの持ち込んだ海老とムール貝でブイヤベースが作成されている最中だ。
カノンが肘を付きながら呟いた。
「あいつ、聖闘士をやめても、料理人でやっていけそうだよなあ」
隣で食事を待つサガが頷く。
「ああ。彼は料理に限らず、いろいろと世の中の事に長けていると思う」
「サガに『長けている』と言わせるほどってのは、そりゃ凄いんだろうな」
「それは誤解だ、カノン。私は物識らずだ…デスマスクを見ていると、特にそう思う」
「そんなものかな」
双子がとりとめのない会話に花を咲かせているうちに、デスマスクが鍋を持ち込んできた。
さっそく皆で食卓を整える。
「熱いうちに食えよ。今日のはサフランをたっぷり利かせたからな」
まだくつくつと音をたてるスープから、食欲をそそる匂いが漂ってくる。
デスマスクは双子にそれを取り分けてやりながら、軽くウインクした。
「サフランの花言葉は色々あるが、中でも”残された楽しみ”をお前らに贈る」
双子は顔を見合わせた。それは、荒涼とした冬に向けて、子羊が安らかに夢をみることができるようにフローラが咲かせた晩秋の花言葉。人生をかけた贖罪という冬へ向かう二人の罪人への応援花だった。
「お前はいちいちクサイんだよイタリア男が!」
カノンが照れ隠しにスープを乱暴にかきこんだ。
サガは微笑んでスープスプーンを手に取る。
「ありがとうデスマスク。料理も上手いし、お前を夫にした者は僥倖だろうな」
「そんならサガ、俺のところへ嫁に来るか?」
「二重人格でお前よりも背が高くてゴツくて罪人で男の嫁か」
「楽しませてもらえそうなので、むしろそれは大歓迎だぜ」
聞いていて、何となく天然サガとデスマスクの仲の良い理由が判った気がしてきたカノンだったが、とりあえず机の下でデスマスクの足を踏んで妨害をしておいたのだった。
2007/2/12
◆ローテク…(風呂場の蟹&双子)
双児宮と巨蟹宮はお隣さんのため、双子はよく巨蟹宮に食事をご馳走になりに行っていました。逆に、デスマスクは双児宮の広い風呂へ身体を休めにきます。
聖戦後にカノンが驚いたのは、デスマスクが平気でサガの入浴中に乱入することでした。しかもそのまま一緒に風呂に浸かってしまいます。どうやら偽教皇時代に培われた慣習のようです。
多少の不満はありつつも、自分も時折サガとともに風呂に入るので、文句を言いにくいカノンでした。
ある日のこと。
サガとデスマスクの二人が、風呂へ行ったまま、なかなか戻ってきません。いくらサガが長風呂だといっても、デスマスクまで出てこないのはおかしいと、カノンは不安になりました。脳内であらぬ心配をしながら浴室へと足を運びます。
脱衣室までくると、風呂場の方から広い浴室に反響して、くぐもった低い声が聞こえてきました。慌てて小宇宙を落とし気配を伏せたカノンの耳に聞こえてきたのは、兄とデスマスクの会話でした。
「チッ、狭いな。奥まで入らねえ」
「デスマスク…あまり乱暴にすると壊れる…」
「ああもう、薬を使うか?」
「…そういったものは、置いていない」
「大体アンタ髪が長すぎるんだよ、邪魔なんだよ」
光速で風呂場の扉を叩き壊したカノンの目に映ったのは、棒を排水溝につっこんで、詰まった髪を除去しているデスマスクとサガの姿でした。
「普通こういうのってマッサージネタとかなんじゃねえ?お前ら黄金聖闘士なんだから、詰まりの除去くらい念動力でやれよ!」
お門違いなカノンの怒りにもデスマスクは平然としています。扉を壊されてサガはむしろ怒り返しています。
「何でも超能力に頼るのは良くないんだぜ?」
「詰まっているのはお前の髪だろうカノン!私は毎回自分の髪の掃除はしている!」
むかついたカノンは、排水溝どころか浴室全部の湯カビを小宇宙で剥がして綺麗にしてやりました。
2007/2/25
◆メメント…(遡り聖域叛逆劇)
「このサガ、本当は正義の為に生きたかったのです…」
サガはアテナと黄金聖闘士達の前で胸を貫き、命を絶った。
その数日前。
偽教皇として聖域に君臨するサガの前へ、突然行方不明だった弟カノンが現れた。
『お前によって水牢に閉じ込められた』という弟の言葉に、覚えの無いサガは動揺する。
「それすらも記憶できていないのか」
カノンは苦笑した。
「聖域は兄さんをおかしくする。教皇の地位なんぞ捨てて、オレとこないか?」
けれども、その誘いをサガは断った。
「友を殺してまで手に入れた場所を、女神が戻るまでは守らなければならない」
本当は弟と共に、二人で外の世界へ行きたかったけれど。
しかし、反逆者としてのサガが今さら聖域を捨てて、一人逃げることは許されない。
聖域を去っていくカノンは、ひっそりと呟いた。
「女神なんざ、いやしねえよ」
アイオロス追討の命令を下した時、サガの意識は黒い半身が奪っていたため、本来のサガはその時の事をよく覚えていない。
実際にアイオロスを殺したのはシュラであったし、射手座の主を慕っていたシュラに対して、その時の事を詳しく尋ねるのは、傷を抉るようで憚られた。
黒サガはアイオロスの連れ去った女神の行方が判らぬ事を歯がみしていたが、白サガの方はその事に安堵を覚えた。いつかきっと女神は戻ってくる。その時までは、何があろうとこの世界を守り抜こうと、固く誓いを立てていた。
「次期教皇はアイオロスとする」
てっきりサガが教皇となるとばかり思っていたアイオロスは、素で驚いた。女神の降臨されて間もない聖域を、自分がまとめていくだけの力があるだろうかとシオンの顔を見る。
シオンは双子座や従者たちを下がらせると、さらに奥の間へアイオロスを連れて行った。強大な小宇宙で、何重にも部屋の周囲へと結界を敷く。完全に外部と遮断されたのを確認してから、彼はアイオロスに命じた。
「教皇となるお前に、最後の勅命を下す。聖域を出て、この世界のどこかに降臨されている筈の女神を探し出し、お連れするように」
まだ若い射手座の主は首をひねる。
「女神ならば、神殿の奥におわすのでは…?」
シオンは仮面の下で、とても苦い顔をした。
「あれは、替え玉の赤子…聖戦が近くなった今、聖域は女神なしに持たぬ。敵には女神の存在をもって牽制とし、黄金聖闘士にすら真実を知らせることなく、士気を保たねばならない」
「しかし、目的を隠したまま、次期教皇となる私が長期にわたって聖域を離れるのは難しいかと。それに、小手先の誤魔化しでは黄金聖闘士の皆までを欺き続けるのは無理です」
アイオロスによる当然の反駁に、シオンは深い溜息をついた。
「…策はもう考えてある」
次期教皇選定の少し前、サガはシオンに呼び出されていた。
シオンはサガに頭を下げた。
「聖域の為に、犠牲になって欲しい」
サガは内容も聞かず、笑って即答した。
「この身が役に立つのであれば、いかようにも」
年老いた教皇は、サガに計画のあらましを話した。
「儂は、今からお前に幻朧魔皇拳をかける。お前は反逆者として生きることとなるだろう。女神とアイオロスに刃を向けたと思い込みながら、聖域をその能力の全霊をかけて保持することになろう。そして、いつの日か見出された女神によってお前は討たれ、戻ったアイオロスがお前の守った聖域を継ぐ。そのために、お前は大切なものを全て切り捨てねばならない」
それでもサガは笑っていた。
「お戻りになられた女神を、私の血などで汚すことはありますまい…その時が来れば、私は自分で命を絶ちます」
シオンは仮面をとると、目の前で跪いているサガの額へと、祝福のキスを落とした。
「侘びにもならぬが、お前には儂の命をやろう。先に冥府で待っている」
シオンの指先に小宇宙が集まっていく。
三人の命を懸けた詐欺舞台の幕が、切って落とされようとしていた。
2007/2/28
◆駄目関係…(双子+ロス)
サガに会いに来たアイオロスが双児宮を覗き込むと、中では黒サガとカノンによる兄弟喧嘩の真っ最中だった。どうやら、弟に対しても遠慮なく格下扱いする黒サガに、カノンが実力行使で反発しているらしい。
「サガ、確かにお前の力は人外レベルだが、聖衣を着用せぬ同士なら、むざとお前に負けるつもりはない!」
「ふん…相変わらず口先ばかりは達者なことだ、この愚弟が」
増大していく二人の小宇宙をみて、慌ててアイオロスは双子の合間に割って入った。こんなところで双子が暴れたら、修復したばかりの双児宮があっというまに吹き飛んでしまう。
「喧嘩するほど仲がいいのは良いことだけど、場所とか方法を選んで欲しいなあ」
仲裁の言葉をかけるアイオロスに返って来たのは双子の冷たい視線だったが、いちおう現教皇の命令は聞く耳を持つようだ。二人の小宇宙の増大が一時的に停止する。
先に反応を示したのは黒サガだった。
「方法を選べば良いのだな?」
「いや、出来れば喧嘩自体ちょっと…」
しかし、そのアイオロスのお願いは無視された。
「私と愚弟で同時に互いに技を放つ。幻朧魔皇拳ならば宮に被害は出まい。力の強い方の技が相手にかかる…それで文句はないな」
「え〜と、幻朧魔皇拳って確か、目の前で誰か死なないと元に戻らないんじゃ?」
「その時は、お前が死ねサジタリアス」
「あははは、相変わらず君は冗談がキツイなあ。私が死ぬと、もう一人の君が泣くよ?」
他の聖域の住人には絶対に聞かせられない黒サガと現教皇のやりとりだ。
横からこの二人よりは少し常識のあるカノンが口を挟んだ。
「幻朧魔皇拳でなくて幻朧拳でというのはどうだ。それならば死者は出ぬし、勝った方は技ついでに1日相手を支配出来る。それで文句ないだろ、サガ」
「構わぬ。どちらにせよ、私が負けるはずはないからな」
「言ったな、愚兄。なら、オレが勝ったら跪かせて足を舐めさせてやるから覚悟しろ」
「面白い。私が勝った暁には、腰が立たぬほど攻め立てて、その生意気な口をきけぬようにしてやる」
どちらに転んでも聖域の公序良俗が乱れそうなので、アイオロスは二人の頭をぽかりと殴り、兄弟喧嘩禁止令を言い渡したのだった。
2007/3/5