JUNKには、ブログなどで勢いのままに書きなぐった小ネタが5話ずつ格納されています。
たまにこっそり加筆したり訂正したり。↑OLD↓NEW
◆理解…(双子+支えた人たち)
13年間も離れていたというのに、未だに双子たちそれぞれの1番の理解者は、サガにとってはカノンであり、カノンにとってはサガなのだった。
それは、それだけ深い双子の絆があったという事でもあるが、逆に言えば、それだけの年月、他人に心を開くことが出来ずに過ごしてきたという事でもあった。
彼らの傍にあった者たちはそれが悔しくて、全てが終わった聖戦後、年中組はカノンに、海将軍たちはサガに、自分たちには何が足りないのかと聞いた。
二人は驚いたものの、真摯に答える。
「足りなくなど無い。むしろお前達は、あれには勿体無いくらいの存在だ。あれは、お前たちを憎むことは絶対に出来ないだろう」
自分たちの理解の源は憎しみだったからと、双子は寂しそうに笑った。
『過去の自分たちは、互いを1番理解していても、1番必要な相手となる事が出来なかった』と二人は言う。
13年間半身の傍に居てくれてありがとうと、双子は相手たちに頭を下げた。
2007/1/15
◆腕…(シュラ×サガ)
生き返っても、シュラの落とされた片腕はそのままだった。
もう聖剣はそこに無いのだと言うかのように。
シュラ自身はそれほど気にも留めていなかったのだが、それを見た者は少なからず心を痛めた。中でも紫龍とサガはかなりショックを受けていたようだった。
紫龍はそれでも直ぐに、自らが引き継いだシュラの志を無駄にはしないと決意を新たにし、前向きにあることが山羊座への礼儀だと堪えていたが、サガの方は蒼白になって立ちすくんでいる。
あまりのサガの顔色の悪さに、却ってシュラが対応に困り果てていると、サガは突然、
『私がお前の片腕となる』と言い出したのだった。
それ以来、サガは麿羯宮に通いつめては、何かとシュラの世話をするようになった。黄金聖闘士の超常能力があれば、片腕をなくした程度では生活に困るというほどのことは無かったのだが、そうシュラが言ってもサガは納得しなかった。
そのうち、サガが麿羯宮にいることが当たり前となり、シュラもその生活が嫌いではなかったので、年上の双子座の好意に甘んじることにした。
そうなると、サガにくっついてカノンが乱入するようになり、いつの間にかデスマスクやアフロディーテもちゃっかり夕飯に相伴するようになった。
サガは相変わらずシュラにすまなそうな顔をしていたが、シュラはにぎやかな食卓を目の前にして、そっと女神に感謝を向け、にこりとサガに笑ってこう言ったのだった。
「サガ、俺は片腕を失ったが、もっと大切なものが戻ってきましたよ」
2007/1/16
◆牛蟹魚A!(冥界編で牛が冥界側に居た場合妄想)
「貴様ら!アテナの為にそこをどかんか!」
アルデバランの猛吼に、演技指導をしていたデスマスクは長ーい溜息をついた。
「オッサン。演技以前に、そこは『ハーデス様のために』な?」
「年上にオッサン呼ばわりされたくはないぞ」
「今は全員肉体年齢18歳なんだから、年は関係ねえなあ。さ、もう1回台詞いってみようか」
デスマスクの合図のもと、アルデバランはノリノリで敵役っぽい台詞をまわしている。演技としてはそれほど下手ではないのだが、サマにならないこと甚だしい。
誠実実直な牡牛座が悪役をするという時点で、彼を知る者の目から見ると白々しいのだ。ある意味、人徳が邪魔をしているといえよう。この場にアイオロスが居たら、おそらく同じ白々しさを発していたと思われる。
「あ奴に悪役演技は無理なのではないか?」
シオンも段々遠い目になってきていた。
「彼が敵に廻るという時点で、我々の寝返りの信憑性が落ちますね」
隣でアフロディーテが冷静に同意する。カミュが首をかしげながら意見を述べた。
「しかし、信憑性が落ちるのは、アルデバランの性格を知る聖域の顔ぶれにだけだろう。ミロ達も彼が寝返る筈はないと、裏を読んで大人しく通してくれるかもしれない。却って好都合ではないだろうか」
その場に居た黄金聖闘士は、心の中で突っ込んだ。
(いやいや、それはミロに関してだけはありえんぞ…)
シオンも内心はそう思いつつ、苦笑してカミュに答えた。
「それでは困るのだ…冥界は直ぐに馴れ合いに気づくだろう。まず味方から欺けと言うとおり、簡単に黄金聖闘士に意図を読まれるようではまずい」
シオンの言葉にサガも頷く。
「シオン様。アルデバランは、無理に台詞を言わずとも良いのではありませんか…?」
「ううむ、そうよの…お主を参加させることには何の躊躇いもないが、アルデバランをこの作戦に参加させること自体、良心が痛むしの」
「……前半にひっかかりを感じますが、後半には同意です」
複雑そうに返事をしているサガの肩を、シュラが無言でぽんと叩いて慰めた。
「それでは、彼は私とデスマスクの組に編纂しますか?」
とアフロディーテが尋ねる。
「アルデバランはサガ組でも良いような気はするが…ふむ」
シオンは口元に手を当てて考えこんでいる。
「サガ達三人が慟哭キャンディーズなら、オレとアフロとオッサンで冥界少年隊でいいんじゃね?」
「デスマスク。自分で言っていて、何か違和感を覚えないか。せめて三匹が斬るとか…」
「シュラ…私はお前のその台詞にも突っ込みたい」
デスマスクとシュラとサガの会話を他所に、シオンは組み分けの決意をしたようだった。
「アルデバランは先鋒とする。黄金のヒヨッ子どもは、あ奴に一番拳を向けにくいだろうからの」
シオンの読みどおり、味方に対しては強いアルデバランだった。魚と蟹は軽くふっとばしたムウですら、牡牛座が出てきたときには目を点にして攻撃を躊躇した。
黄金の牡牛は、魚と蟹とのアテナエクスフラメーションという、破壊力があるのかそうでないのか微妙な禁止技まで見せて、多大なる混乱を聖域側にまきおこしたのだった。
2007/1/18 ↑こんな妄想の微妙なイメージイラストはこちら
◆制圧者(統合サガ×シュラ)
「サガ、そろそろ朝練の時間だが」
シュラは寝台に眠る双子座の主を見下ろし、そっと声をかけた。
黒サガが麿羯宮へ押しかけて酒肴を楽しみ、そのまま泊り込むのは良くあることだ。
だが、大抵翌朝にはいつものサガに戻り、誰よりも早起きをして従者とともに食事の用意などをしてくれるのが常である。
ましてや、今日のように早朝から候補生達の指導をする日には、サガはまだ暗いうちから床を離れ、陽の昇る前に準備を整え終えているのだった。自分も早起きの方だとシュラは思っているのだが、彼ほどではない。
そのサガが、未だ寝台の中にいる。自分という他人が傍に居るのに、他者の気配に敏感なサガが眠ったままというのも解せない。具合でも悪いのかとシュラは心配になってまた声をかけた。
「…サガ?」
寝息を確かめようとシュラが屈み、顔を近づけた途端、白い両腕がスッと伸ばされ、シュラの首へとまわされる。
「今日の指導はサボらせてもらうことにする…本日の当番にはアイオロスもいる、問題はあるまい」
柔らかいながら、はっきりとしたサガの口調は、隣室の従者へ向けて告げられたものなのだろう。よくできた麿羯宮の従僕が、サガの欠席を伝えに去っっていく気配がした。
決まりごとには厳しい筈のサガの言葉に、シュラは驚いてまず髪の色を確認してしまう。
黒くはない。
サガはシュラの目の動きに気づくと、薄く笑みを浮かべて首から手を離し、顔を見上げた。聖なる雰囲気を帯びながら、その表情はどこか蠱惑的で、獲物を狩る肉食獣の獰猛さがある。
カノンとも白サガとも決定的に違うそのアンバランスさに、シュラは『ああ』と言葉を吐いた。
「今日は統合しているのですね、サガ」
応えは無かったが、間違いは無さそうだ。
サガは白い人格と黒い人格の統合により、戦闘時には安定し強大な力を発揮する。が、その統合配分によって性格にはかなりのばらつきが出るのだった。今日は随分と黒サガの割合が多そうだ。
「指導に行かないのであれば、朝食にしますか?」
「いや…もう少しここでお前に触れていたい」
無遠慮に手を伸ばし、シュラの髪に触れる。黒サガの奔放さには慣れているシュラなのだが、白サガの面差しでそのようにされる事にはまだ躊躇があり、山羊座はらしくもなく身を固くした。
黒サガはすっかりシュラを自分の所有物として認識しており、その意識が今のサガにも反映されているのだろう。シュラが隙を見せたのをいいことに、簡単に寝台の上へと彼を引き上げる。
「そのように警戒するほど、お前にとって、私は危険か?」
天使のような笑顔で黒サガの強引さを見せる目の前のサガに、不器用なシュラは本気で困っていた。
からかわれているのだろう事は判っている。いつものように、多分何事もない。
それでも、いつのまにか体勢が逆転し、押さえつけられながら名前を呼ばれると、ゾクリと背を這い上がるものがある。
シュラはサガに弱い自分を再認識すると、小さく苦笑した。
「危険です…と答えたら、貴方は喜ぶのだろうか」
そして山羊座の男は、自分の上に煌く王の瞳から逃れるように目を伏せた。
2007/1/20
◆悪党…(デスとカノンなサガ話)
「オレは悪党だが悪人じゃあねえよな」
デスマスクがニヤつきながら言うので、カノンは呆れた顔を見せた。
「自称とは図々しいな。それに、お前なぞ小悪党で充分だ」
「それはお互い様だろ?」
サガが出かけているので、双児宮で鬼のいぬまに酒盛り中の二人だった。
「悪人てのは、お前の兄貴のようなのを言うと思うわけよ」
「まあ、それは否定せん」
「しかも、困ったことにサガは嘘偽りなく善人でもあるわけだ」
デスマスクはグラスを傾け、カノン提供のマッカランを舐めるように飲む。
「そーいうのが1番始末に負えねえよなあ」
適当に話を聞いていたカノンだが、その言葉にますます呆れた顔を見せた。
「デスマスク…お前このあいだ、手がかかって始末に終えないような女が好みだとか言っていなかったか」
「そうだったかな」
「しらばっくれるな。弟の前で遠まわしに兄へのノロケを聞かせるな」
「たまには良いだろ。いつも散々お前の兄から弟へのノロケを聞かされてるお返しだ」
「………」
「内容、聞きたいか?」
カノンは黙ったまま、デスマスクのグラスへなみなみと酒を継ぎ足した。
2007/1/24