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◆2013-JUNK2

JUNKには、ブログなどで勢いのままに書きなぐった小ネタが5話ずつ格納されています。たまにこっそり加筆したり訂正したり。↑OLD↓NEW


◆そういうのじゃない…(双子とポセイドン)


「13年ぶりに一緒に過ごす弟に対して、サガはそっけなさすぎるのだ」
 愚痴をぶつぶつ職場で零していたら、ポセイドンが話しかけてきた。
『そなたはもう少し兄離れしても良いのではないか?』
「判っております。だから愚痴も独り言として、誰にも聞かれぬようこっそり吐いていたのではありませんか」
『いや、我が海将軍筆頭が、そんな痛々しい理由で一人書類に向かいながら呟いているのをみると、主である私が居たたまれぬ』
「寝てればよろしいでしょう」
 無視してペンを走らせていたが、ポセイドンは唐突なことを言い出した。
『そういうな、お前の願いを叶えてやろうと起きだしてきたというのに』
「は?」
『お前の兄が、お前に依存するようにしてやろう』
「出来るのですか、そんなことが」
『神に不可能はない』
「ではオレ無しには暮らせないくらい重度の依存にして下さい」
『…そこは断るところではないか?』
「神に二言はないですよね」
 渋々ながらも海皇が頷いた気配がしたので、さっそくオレは仕事など中断して(もともと急ぎの内容でもない)聖域に戻ることにした。


 帰ると待ちかねたようにサガが飛び出してきた。
「カノン、おかえり!今日は早かったのだな」
「ああ、予定よりも仕事が簡単に片付いてな」
 嘘だけど。
「良かった、寝室用蝋燭のストックが切れてしまって、どうしたらいいか困っていたのだ」
 ん?
「あと、洗濯物を干してあるのだが、丁度良い。しまってくれないか」
 んんん?
「夕飯はパエリアとブイヤベースが良い。しかし食材がないのだ。でもカノンならわたしのために作ってくれるだろう?」
 ………。

 双児宮に戻ったら、兄が生活無能者になっていた。
 これはこれで新鮮なので今日一日は楽しむが、明日には元に戻してもらうぞと、オレは心のなかでポセイドンに毒づいた。

2013/1/28
◆お膳立て…(星矢と沙織ラブなサガ)


沙織「あら。今日の警護はあなたなのですね、星矢」
星矢「ああ、急遽日本へ行けってサガが」
沙織「視察先にアクアリウムが組み込まれていたので不思議に思っておりましたが、これで理由がわかりました」
星矢「サガって可愛いよな。こんなこというと生意気だって怒られるから、本人には言えないけど」
沙織「判ります。こういっては何ですが、サガはこういう方面に向いていません。なのに、苦労して私たちのためにお膳立てをしようとしてくれるのを見ると…」
星矢「でも、こんなにあからさまなのに、こっそりお膳立てしてるつもりなんだぜ」
沙織「まあ、それでは気が付かないフリをしなければいけませんね」
星矢「あとでサガへのお土産を一緒に選ぼう」
沙織「カノンとお揃いのものなど、喜ぶのではないかと思います」

2013/2/1

◆こうもり…(サガとアイオロス)


 夕暮れ時の低空を、ひらりと黒い影が飛び、サガがびくりと足をとめた。
 横を歩いていたアイオロスも立ち止まり、サガの視線の先を追う。
「コウモリだね」
「ああ」
「苦手なの?」
 いや、と言いかけてサガは苦笑した。
「苦手なのかもしれないな。子供の頃は自分を思い起こすようで、嫌いだった」
 アイオロスはちょっと目を丸くした。サガが何かを苦手とするなんて、しかもそれを認めるなんて珍しい。
「コウモリのどこが君に似ているのかな」
「…イソップの話にあるだろう。鳥のようで鳥ではなく、動物のようで動物でない。お前たちの前では聖闘士の顔をしているが、悪の顔も持っていて、別の場所では聖域の簒奪を願うような存在になるのだ。どちらもわたしだが、コウモリは結局誰からも見捨てられる」
 アイオロスは内心でますます珍しいと思った。弱みまで見せるなんて。
 サガは誰よりも、ライバルへはそういう姿を見せたがらないだろうと思っていたのに。
(少しは心を許してくれたのかな)
 自嘲するサガは、欲目かもしれないが、ちょっと可愛かった。
「それなら俺もコウモリだ」
「…お前が?」
 サガが納得できないというような、妙な顔をする。
「だって、人馬だぞ?人の前では人のような顔をして、馬の中では馬の仲間のような顔をしてるに違いない」
「いや…ケンタウロスはそういう生き物であって…別に八方美人はしていないと思う。お前はむしろ、異なる種族の架け橋になりそうなイメージだ」
「じゃあ、お前もそうなればいい」
 アイオロスは笑ってサガの顔を覗き込む。
「聖域の光と影の勢力の架け橋となって、それでも孤独だなと思ったら、同じコウモリ仲間の俺を頼れ」
 断言された側のサガが、今度は目を丸くする。
「お前にかかると、何でも大したことのない悩みのような気がしてくるから不思議だ」
 そう言って、どこか照れたようにサガは笑い返した。

2013/2/7
◆箱入り黒…(職場で野鳥を預かった実話の半置き換え妄想)


野生の黒サガが落ちていたので、雑兵たちで保護することになった。
黒サガは獰猛な生き物の筈なのだが、怪我をしているためか、用意された段ボールの中でも大人しい。

雑兵A「ど、どうしよう、こういうとき何処に連絡すればいいのか」
雑兵B「そりゃ…教皇様にじゃないか?」
雑兵C「そうだけどさ…上に連絡すると回収はしてくれるかもしれないが、処分されちゃうかもしれないだろ」
雑兵A「飼えないのかな」
雑兵D「野生の黄金聖闘士は飼っちゃいけないことになってるだろ」
雑兵C「野生にしちゃ逃げないし、おとなしくないか?」
雑兵D「元気そうにはみえるけど、実は怪我して弱ってるのかも」
雑兵A「野生じゃなくて、実はもう誰かに飼われてるとか」
雑兵B「何かこっちみて首傾げてるぞ」
一同「「「「可愛いから写真とろう!」」」」

通報により回収にきたシオンに持っていかれてしまうまで、雑兵事務所で遠巻きにアイドル状態の黒サガなのであった。

2013/2/11 ↑こんなんだったんです(>▽<)
◆ありえない未来…(虚無)


(オレがサガに幻朧魔皇拳を撃って「一緒に聖域を出て行こう」という未来はあっても、サガがオレへ幻朧魔皇拳を撃って「一緒に聖域を出て行こう」という未来は決して無いんだろうな)

 それは予想ではなく、確信であった。
 その確信はカノンの心のどこかを強く軋ませ、タールのように希望を塗りつぶした。

2013/3/2
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