JUNKには、ブログなどで勢いのままに書きなぐった小ネタが5話ずつ格納されています。たまにこっそり加筆したり訂正したり。↑OLD↓NEW
◆YOU LOSE…(星矢←サガな双子会話)
パリン、と音がして背後のテーブルに置かれていた花瓶が割れた。
慌てて振り返ると、カノンが既にサイコキネシスで花瓶を丸ごと包み込み、床に破片と水が零れるのを防いでいる。
「すまぬ、カノン」
「気にすんな。それより画面」
「あ、ああ」
TV画面を見ると、もう自分の使っているキャラはヒットポイントを失って地に伏していた。YOU LOSEという声が無情に流れてくる。星矢が貸してくれた格闘ゲームなのだが、実際の戦闘とは勝手が違い、どうも上手くいかない。攻撃を受けそうになると、無意識に小宇宙が高まってしまう。実際の戦闘では反射のレベルで対応できるよう訓練を積んでいるのだが、それがあだになって、仮想戦闘だというのに、高まる小宇宙が周囲にあるものをうっかり壊してしまうのだ。
気をつけているのだけれども、ゲームに夢中になると駄目だ。
「サガ、お前、目はいいんだから、そんなに焦らなくても、相手キャラの攻撃動作が出た後でも、充分対応できるぞ?」
「し、しかし、私は光速で動けるが、機械は光速で処理できない」
「いやそこまで早く反応しなくていいんだ。タイミングを計れ。お前そういうの得意だろ」
「それが、機械を通すと難しいのだ…」
「お前アナログだもんな」
悔しいが言い返せない。
だが、頑張ってノーマルモードでくらい勝てるようにならないと、星矢の相手にはならないだろう。折角貸してもらったゲームなのだから、星矢と対戦したときに楽しいと思ってもらえる位には強くなりたいのだ。
「おまえがまさか、そこまでゲームに真剣になるとは思わなかったが、やっぱりあのガキのためなのか?」
カノンが横から突っ込んでくる。
「う、うるさい。また負けてしまったではないか!」
「兄さんが負けまくるのを見れるなんて新鮮だな」
そういうカノンこそ、小ばかにしながらも楽しそうな、呆れたような、面白く無さそうな新鮮な…珍しい顔をしている。
双子の兄弟どうし、相手のことは何でも知っていると思っていたけれども、まだまだこんな風に知らない顔もあるのだろうか。
サガはコンティニューボタンを押しながらそんなふうに思った。
2012/9/8
◆異次元…(星矢&サガ)
双児宮にペガサスの聖闘士が押しかけるのは、もはや十二宮でも見慣れた風景である。今日もアテナ神殿からの帰りがてら、星矢は元気にサガのところへ立ち寄っていた。
「サガって異次元を操作できるんだよな!」
後輩が無邪気に懐いてくる姿を、サガは微笑ましく見つめている。
「繋いだり、移動できる程度だがな」
「充分凄いって。一輝なんかは異次元に飛ばされても帰ってきたりするけど、俺だったら宇宙に飛ばされた時点で死ぬ気がするもん」
「お前ほどの小宇宙があれば、コツさえ掴めばすぐできるようになる」
サガの基準はかなり高い位置にあるので『それくらい簡単だろう』と言う内容は、一般青銅にはかなり厳しい。しかし、この場合はサガの言うとおりで、すでにテレポートを可能にしている星矢ならば鍛錬次第と思われる。第一、聖戦時に移動した冥界とて異次元の一種だ。
星矢は目を輝かせながら続けた。
「なあなあ、サガなら二次元とかも行けるのか?」
「難しいが、投影的な移動ならば」
「じゃあ漫画の世界に入れたりするんだな!」
「………」
「いいな、凄く楽しそう」
「………星矢、このあと時間はあるか?」
「ああ、今日は暇だよ」
「では、今から要素数としての次元と別界の違いおよび量子論について、簡単な講座を行うので聞いていくように」
時間の都合を聞いてくれているようで、サガは真顔であったうえ、言葉の最後は命令形だったので、星矢は大人しく黄金聖闘士の指導を受けることにしたが、1時間後もやっぱりよく判らなかった。
2012/9/14
◆お前にだけは…(ロスとカノンでサガ会話)
海界から十二宮への帰り道にアイオロスとはちあわせた。
仕方ないので双児宮までの道のりを一緒にあるく。道中あたりまえのように世間話をふってくるが、おまえはサガと知己でも、オレとは友人でもなんでもないだろう。誰にでも親しげなその距離感は、誰にでも優しいサガに似ている。
「サガは、意外と負けず嫌いだな」
オレの歩調に合わせながら、そのアイオロスが言う。
「今はなんていうか、穏やかなところは以前と変わらないのだけれど、負けたくないという意志を隠しきれてないっていうか」
思わず睨んだが、相手は飄々としたものだ。
「昔はもう少しおっとりしていたと思うのだけど…」
「お前のせいだろ」
我慢できなくて、言い返した。
強めの語調に、アイオロスが驚いたような、面白そうな顔でこちらを見る。
だが、溢れる言葉を今更とめられない。
「サガはな、1番であることが当たり前だった。誰よりも優れているのが普通の環境で、だから競いあうなんてこと自体知らなかった。まれに誰かと争うような状況になったときには、『たまには譲ってやった方がいいだろうか』などと傲慢な配慮をするようなヤツだった。克己心のみで上を目指していたんだよ。それをお前が」
「私が?」
アイオロスが語尾を繰り返す。
「お前が、サガを負けず嫌いにしたんだ」
ああ、本当の事を教えてしまった。
「そっか、それは少し嬉しいね。教えてくれてありがとう、カノン」
英雄が浮かべた笑顔は、おそらく本心からのものだろう。
このズレ具合、やっぱりどこかサガに似ていると思った。
そして、こいつにだけはサガを取られたくないとも思った。
2012/9/15
◆引き継ぐもの…(駄目な年長組とムウ)
「アイオロス、貴方が教皇に就任するにあたり、法衣を新調したいのですが」
「ああムウ、私は別に前の法衣で構わないぞ」
「新教皇の法衣を仕立てられぬほど、聖域は緊縮財政ではありません」
「まだ使えるのだから勿体無い」
「しかし…」
「それに、その法衣はサガが着ていたのだろう?全裸で」
「………」
「まあまあムウ、アイオロスの気持ちはわたしも判るよ」
「サガ!」
「わたしも当初はシオン様の法衣を着ていたからな、胸の穴を夜なべして繕って…懐かしい」
「ちょっと二人とも、それ照れながら微笑ましい恋慕みたいに語るのやめて下さい。貴鬼、今の話は聞かなかったことにして、仕立て屋を呼ぶように!」
2012/9/19
◆サガに見つかったら即破棄…(駄目系ロスの念写練習)
「アイオロス、先ほどから真剣に何の写真を見ているのですか?」
「やあムウ、メディテーションの修練の一環で念写をしてみたのだが、なかなか上手くいってね」
「はあ」
「ポイントは28歳、男性、法衣、ニーソ、半裸、だ」
「グロ写真ですか」
「どちらかといえばエロ写真だよ」
「今のキーワードで、とてもそうは思えません」
「まあ見てくれよ」
自慢げにサガの捏造着替え写真を見せてきたアイオロスの頭を、ムウは遠慮なくファイリングケースではたいた。
※ハヤテのごとくの漫画オマケカードをサガで描いたときに妄想したSSでした。
2012/9/20