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◆2012-JUNK8

JUNKには、ブログなどで勢いのままに書きなぐった小ネタが5話ずつ格納されています。たまにこっそり加筆したり訂正したり。↑OLD↓NEW


◆仕事依頼…(教皇ロスと補佐サガのお仕事一例)


アイオロス「A国のB自治区から聖域へ聖闘士派遣の依頼が来ているが、これは例の巨人族の封印が破れた件と関係があるのでは」
黒サガ「ああ、聖域でも調査をしていた件だ。依頼がこなければ独自に動くつもりだったが、そうなると聖域の持ち出しになるからな。どうせ対応するのならば、A国に恩を売り、収入もあったほうが良かろうということで、引き受けることにした。貴様の認可印を押せ」
アイオロス「うーん、君、そういう感じで13年間も収益を増やしていたんだよね。あまり聖闘士を公の場に出すとシオン様が怒らないかい?」
黒サガ「アテナが銀河戦争をTV中継で世界発信した件を話したら、頭を抱えて好きにしろと言っていたぞ」
アイオロス「そ、そうなんだ…(シオン様、投げたな)」

2012/11/22
◆継ぎ目のない二極…(簒奪時代のサガとデスマスク)


「冥闘士らしき奴が、黄泉比良坂をうろうろしていたから捕まえてきたぜ」

 デスマスクが一人の兵士を教皇の前へ放り投げるようにして突き出した。
 黄泉比良坂は冥界と繋がっている。普通はアテナの結界により冥界側から侵入することは出来ないのだが、そのアテナをアイオロスが聖域外へ連れ去ってしまったため、時折結界がほころびる。

 配下の報告を受け、仮面をつけた教皇は静かに椅子から立ち上がった。法衣の裾で衣擦れの音をさせながら玉座前の数段を降り、倒れ伏している異界の兵士を見下ろす。
 捕虜が身に付けている冥衣は下級兵のもので、冥闘士といっても魔星を持つものではないようだ。魔星ならば老師が五老峰で見張っている。封印されている108人には含まれぬものの、結界のほころびを潜り抜けられる程度には腕のたつ斥候といったところだろうか。
 既にデスマスクによってボロボロにされ、立ち上がることも敵わぬ様子ではあるが、目だけは敵意を失わず、憎しみの篭った視線で聖域の統率者を睨み上げてくる。
 教皇はその兵士の前で仮面を外した。
 兵士の息を飲む音が聞こえた。それほど教皇の素顔は美しく静謐であり、宗教画にある聖人のようであったのだ。天使や神とまごうほどの輝きを、女神の教皇は持っていた。
 魅入られたかのごとく視線を外せなくなっている兵士へ、教皇は慈愛の微笑みを向ける。
「わたしにお前の知っていることを全て話してくれないか」
 教皇の指がきらりと光ると、もう兵士は自分の意思で考えることはできなくなった。


 数刻後には、幻朧魔皇拳で情報をすべて吐かされた冥闘士の死骸が転がっていた。教皇の手刀によって貫かれた胸からは、どういう処置をされているのか血の噴出すこともない。
 デスマスクは慣れた動作で積尸気冥界波を放ち、その死骸を黄泉比良坂へ放り込んだ。魂だけでなく肉体ごと死界へ送る方法も先代から伝わっている。冥界からの侵入者に対しては肉体ごと送り返しても意味が無いので、普段は魂だけを切り離すのに使っているのだが、死骸なら肉体ごと始末してしまった方が都合いい。
「結界のほつれの場所が知れた。塞ぎにゆくぞ」
 教皇が、冷たい笑みを浮かべている。もう先ほどの微笑みは影も形もない。
「いつから、貴方のほうだったんですか」
 デスマスクがぼそりと尋ねると、教皇は笑いながら仮面をつけた。髪の先がわずかに黒い。
「当ててみるがいい、キャンサーよ。わたしにも判らぬ境目を、お前が知っているのなら」
「サガ」
「教皇と、呼べ」
 しかし、デスマスクが名を呼んだとたん、その場の空気が凍りつく。
(…やべ、おっかねーの)
 心の中で軽口を叩くも、この偽教皇の恐ろしさは、側近として働いているデスマスクが1番良く知っていることだ。神のような双子座は、悪魔のように容赦がない。

 仕事モードに切り替えたデスマスクは、サガとの会話をあきらめ、目の前に黄泉比良坂への『道』を開いた。

2012/8/31
◆希望的技名…(Ωネタ)


龍峰「栄斗は凄いな!土属性なのに絶対零度を生み出せるなんて。忍術のほうが小宇宙より温度変化の効率がいいのかな」
栄斗「何を言っているのだ。絶対零度など簡単に作り出せるわけないだろう」
龍峰「え、だってさっき『絶対零度』って水を凍らせて…」
栄斗「あれは技の名前だ。本当に絶対零度なわけではない」
龍峰「ええええええええ」
栄斗「ペガサス流星拳とて、本当に流星が飛ぶわけではなく、比喩だろう」
龍峰「…納得がいきません」

2012/9/2
◆遠隔戦闘…(双子で戦闘訓練)


 乾いた岩肌の切り立つ谷間に、わずかながら平らな土地がある。
 その空間で、二人の男が対峙していた。一人は双子座の聖衣をまとっており、もう一人はシードラゴンの鱗衣をまとっている。
 おもむろに鱗衣の男が動いた。距離を詰めると、まずは蹴りで足を払おうとする。対して聖衣の男は動かない。しかし、相手の蹴りは宙を切った。どうなっているのか、蹴りは相手の身体を捉えることなくすり抜けたのだ。
「おい、幻惑もありなのかよ」
 少し離れた場所から声があがった。カノンである。
「当然だ、そのために開けた野原などではなく、囲まれた空間を選んだのだろう」
 返事をしたのはサガだ。二人は並んで大岩の前に立ち(カノンは岩に寄りかかり)、目の前の戦闘を眺めている。聖衣と鱗衣を纏った男たちは肉体を持つ人間ではない。、それぞれサガとカノンが映像つき遠隔操作で闘衣を動かしているのだ。
「まあ、オレらの幻術は基本迷宮仕様だからな。外じゃやりにくいが、その分いい訓練になる」
「そういうことだ」
 会話の合間にも戦闘は続けられている。遠隔操作の訓練はカノンが発案した。昔は双子座の聖衣しかなかったため、こういった想定の訓練は考えることもできなかったが、今はカノンが海龍の鱗衣を手にしている。互いに遠隔操作をすることで、操作の粗や弱点をみつけようという趣旨であった。
 模擬戦は聖衣のほうが押していた。やはり、鱗衣よりも慣れた聖衣のほうが扱いやすいため、一日の長が出ているのだろう。また双子座の聖衣は、遠隔操作を受け付けやすい性質ももっている。
 それに気づいたカノンは、隣のサガの腰をさらりと撫でた。
「な、何をする!」
「驚きすぎだ。むこうの聖衣の動きが止まってるぞ」
 視線の先では、その隙を突かれた聖衣が、鱗衣に殴られている。
 サガが『む』という顔をした。
「本人に手をだすなど、卑怯だぞ」
「卑怯でも何でもないだろ。幻術において本人を叩くのは基本だ」
「そういう想定の訓練ではなかったはずだが」
「では今からそうすればいい。本体に手を出されても、どれだけ集中を散らすことなく対応できるかのな」
 カノンはしれっとした顔でサガの腰に手を回した。引き寄せられたサガはあっけに取られた顔をしたものの、直ぐに言い返す。
「なるほど、ではこれも訓練だな」
 言い終わると同時に、カノンの頭に聖衣の手刀が落ち、ごつんという音がした。いつの間にか、聖衣が戦闘の場を離れ、カノンの目の前に立っている。
「いってえ、聖衣で攻撃するなんて卑怯だろ!」
「本人を叩くのは基本と言ったのはお前だ」
「…じゃあ、こっから先は訓練じゃないから、攻撃するなよ」
 カノンは兄の腰を抱いたまま、鼻の頭へチュと軽くキスを落とした。目の前の聖衣が人の形を失い、パーツになって転げ落ちていく。
「兄さんて、意外と奇襲に弱いのかな?」
 にやりと笑うと、訓練ではないと言ったのに、やっぱりカノンの頭には本人による拳骨が落ちた。

2012/9/4
◆捕獲された獲物…(ロスに捕まったサガ)


 聖戦後、主人格より少し遅れて目覚めた闇のサガは、己を取り巻く環境の変化に呆然としていた。頼ることのできる唯一の相手、もうひとりの自分である光のサガへ恐る恐る尋ねる。

『まず、何故わたしは人馬宮にいるのだ?』
「わたしがここで暮らしているからだ」
『わたしたちの守護宮は双児宮であろう』
「いまはカノンが守っている」
『ありえぬことだが、カノンに追い出されたのか』
「違う。わたしがアイオロスと暮らすために宮を出たのだ。弟は反対している」
『…………は?よく聞こえなかったのだが』
「弟は反対している」
『その前だ!』
「わたしがアイオロスと暮らすために宮を出たあたりか?」
『さらりと言うな、貴様、男と同棲とはどういうつもりだ!しかもあの男と!』
「同棲ではない。同居だ」
『似たようなものだ!わたしに何の断りも無く!』
「しかしお前は話したら反対するだろう」
『当たり前だ!』
「わたしが彼と暮らしたところで、お前になんの不都合があるというのだ?」
『ありまくるわーーーーー!!!』

 知らぬうちに自分が男と付き合っていたショックで、闇のサガは眩暈を起こしている。しかも、その相手と言うのは、かつておのれが濡れ衣を被せ、死へ追いやった相手なのだ。

『あの男だけは、駄目だ。あの男はわたしたちを敗者へ貶める』
「違う。アイオロスはわたしに、勝敗のない関係を教えてくれた。愛情に勝ちも負けもない」
『その状態がすでに負けていると言っているのだ!』

 噛みあわぬ言い争いを脳内で繰り広げていると、当の射手座が帰ってきた。
 ひと目みて、サガの中にもう一人の人格が戻ってきたことを察した彼は、臆することなく近づくとサガを抱きしめて耳元へ囁く。

「ごめんね、『君』が不在の間にサガを手に入れるのは、フェアじゃないかなとは思ったんだけれど」

 内側の闇の反発を無視して、光のサガとその身体はアイオロスを抱き返す。
 アイオロスは満足そうに微笑み、サガの肩に頭をのせた。

「俺は『君』も欲しいよ」
『ふざけるな』
「勝敗なんて、どうでもよくしてあげる」

 柔らかな口調であるのに、矢を番えた狩人の姿が見えたような気がして、闇のサガは肉の檻のなかでぞっと魂を震わせた。

2012/9/5
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