JUNKには、ブログなどで勢いのままに書きなぐった小ネタが5話ずつ格納されています。たまにこっそり加筆したり訂正したり。↑OLD↓NEW
◆仲裁…(白黒サガとアイオロス)
聖戦後のサガは、分裂した精神それぞれに肉体を得て復活していた。
人格ごとの責任を明確にわけるためであったが、それまで脳内で行われていた彼らの争いが、現実の世界で実体化されるという弊害も生み出している。
今日も互いに折れることの無い丁々発止が拳つきで繰り広げられており(他人には優しい光のサガも、自分自身に対しては容赦がなかった)、双児宮付きの雑兵に泣きつかれたアイオロスが仲裁に入ることとなった。
「サガ、私闘はいけないよ」
叱責にはほど遠い、まったりとした語りかけである。
「「わたしたちは両方サガなのだから、私闘ではない。自己鍛錬だ!」」
両サガから同時に反駁が返る。同一人物だけあって、息はぴったりだ。
アイオロスは少し考え、にこりと答えた。
「わかった、では止めないで応援しよう。勝者には俺から祝福のキスを贈る」
その途端にサガたちが顔をこわばらせて争いをやめたので、雑兵たちは『さすがアイオロス様、サガ様の扱いに長けておられる』と皆で噂した。
2012/10/15
◆聖域の花…(カノンと海神と花)
朝がたにカノンが海界へ出かける準備をしていると、サガが花を抱えて入ってきた。
「アフロディーテが来たのか」
「ああ、朝一番で届けてくれたのだよ」
魚座の守護者はマメにサガへ花をよこす。おかげで双児宮に華やぎの欠くことはないが、それにしても量が多い。
「半分持って行きなさい」
「は?オレが?」
「海界神殿にも飾る場所くらいあるだろう」
こんなときのサガは、おかんとしか言いようがない。
強制的に渡された花束を、仕方なくこそこそ隠れるようにして持っていく。大の男が花を携えて職場に行く気恥ずかしさを、サガは判っていない。
適当な花瓶を探し出してつっこみ(女官やテティスへ命じるのも恥ずかしいので自分でやった)、ポセイドンの主神殿に飾ってやったら、花に惹かれたのか珍しくポセイドンが降りてきた。
ポセイドンは機嫌よさそうに、話しかけてきた。
『ほう、地上では今このような花が咲いているのか』
「ええ、まあ」
『ふむ。やはり地上も捨てがたい。アッティカをまた狙ってみるか』
「おやめ下さい」
『素っ気無いな』
「花をご覧になりたいのであれば、お連れしますので」
『本当だな?』
「はい」
『では、この花の咲いた庭を見たい』
思わず言葉がつまり、そして、やられたと思った。
アフロディーテの寄越したこの花の咲く場所といえば、双魚宮の庭に違いない。十二宮の守りを抜け、教皇宮をのぞけば女神神殿に1番近い場所なのだ。
『神への約定をたがえはせぬな?』
にっこり笑ったポセイドンへ、内心”この狸め”と苦虫を噛み潰しつつ、「庭の主の了承を得ないことには」と、何とか返事を保留する。
ちなみに小宇宙通信による女神の返事は
『構いません。私も以前、単身にてそちらの神殿へお邪魔したことがありましたものね。単身でお越しになられるのなら、同じように歓迎いたしましょう』
というものであったので、カノンの古傷はちくちく痛んだ。
(これもそれもサガが花を持っていけなどと言ったせいだ)
帰ったら八当たりをしてやると心に決めながら、カノンは海皇のスケジュール調整をはじめた。
2012/10/17
◆金銀木犀…(双子神)
タナトスはそろそろ待つことに飽いていた。
ヒュプノスは隣で仕事中である。金木犀の香りにのせて、陶酔とともに人間たちへ夢を届けているのだ。
暇をもてあまして地上へ一緒に降りてきたものの、やることのないタナトスはここでも暇であった。
構ってほしくはあるが、神の職分を邪魔する事は許されない。
ためしに同じ事をしてみるかと、銀木犀の香りにのせて死を運ぼうとしてみるも、銀木犀の香りは金木犀よりも弱く、神力は全然広がらなかった。
不機嫌になりはじめたタナトスを見て、ヒュプノスが苦笑する。
「お前がこの一帯に死をふりまいたら、折角配った夢まで消えてしまう。私に免じて力を収めてくれないか?待たせている詫びに今日は私が奢るゆえ」
待たせているといっても、タナトスが勝手に待っているだけなのだが、そこは上手く持ち上げる。
「では、旨い肉が食いたい」
「わかった」
幾分機嫌がもどったのか、タナトスはヒュプノスの仕事へ疑念を差し挟んだ。
「しかし、どうせすぐ死ぬ人間どもに、夢など与えてやる必要があるのか?無駄であろう」
彼らしい言い分にヒュプノスは微笑む。
「神であるお前ですら、時を待つ間の楽しみを要するのだ。人間ならばなおのこと」
説明するも、死の兄弟が納得したようすはない。
「ヒュプノスよ、お前はいつも人間に甘すぎる。お前がオレに構うのは当然だが、お前が人間に構うのは当然ではないのだぞ」
尊大なタナトスの言い分に、ヒュプノスは今度こそ声をあげて笑い出した。
2012/10/20 金木犀のほうが銀木犀の変種なので弟分らしいですよ。
◆香る空間…(ロスサガ)
金木犀のふわりと甘い香りにとろけるようにして、ひそやかにサガの小宇宙が漂っている。
最初は満開の花に惹かれてやってきたアイオロスだったが、そのことに気づいたあとは友の小宇宙を辿った。
茂みの奥を覗き込むと、樹を背にして腰を下ろしている本人と目が合う。
「ごめん、起こしてしまったね」
「…なぜ、眠っていたと?」
一瞬の間のあと、サガが怪訝そうに問い返す。
「だって、ほら。君の身体中に、花が散っている」
そう答えると、サガは己の身体を見回し、その通りであることに気づいて、バツの悪そうな顔をした。
サガは他人の前で眠らない。そしてその事を周囲にさとらせないようにしている。アイオロスも聖戦後にようやく気づいたひとりであった。
寝ているときに髪の色が変わるとまずいからみたいですよ…と教えてくれたのはシュラだ。なら、もう隠す必要はないんじゃないかなあとアイオロスなどは思うのだが、そう単純にすむ話でもないらしい。
「隣、いいかな?」
まっすぐに見詰め返してくるサガの無言を肯定と受け止め、アイオロスは横へ腰を下ろした。肩が触れ合わぬよう、計算してわずかに空間をあける。
息を深く吸い込むと、空気まで甘かった。
リラックスするとともに、アイオロスの小宇宙ものびやかに空間へ広がっていく。金木犀の香りのなかに、サガの小宇宙とアイオロスの小宇宙が交じり合う。
サガは黙ったまま、空を見上げている。
髪に幾つもこぼれ落ちていた金木犀の花をアイオロスが指先で払うと、入れ違いにまたサガの頭へ金色の小さな花が降って来た。
「きりが無いな」
諦めて指を引いたら、初めてサガが笑った。
(こんな風にも笑う男だったのだなあ)
抱きしめたい衝動を押し殺して、アイオロスはサガと共に空を見上げた。
2012/10/22
◆パラドクス…(Ω見ながら双子会話)
カノン「お前がTVを、しかもアニメを見るなど珍しい」
サガ「未来の聖域という設定の話なのだ。しかも、双児宮の回でな」
カノン「…これが双児宮?ずいぶんファンシーっつか…戦闘用の場所に見えねえ」
サガ「ああ、それは本来の宮が破壊され、新たに作られた十二宮となっているせいだ。しかも守護者が女性だから、その趣味に合わせられている」
カノン「へえ、黄金聖闘士に女がねえ。そりゃ新しいな」
サガ「いや、この聖域では昔から力が全てだ。セブンセンシズに至る能力と守護星の導きさえあれば、性別など問わぬ。滅多にあることではなかったようだが」
カノン「それもそうか。しかし、本当にアレは女なのか?こういう疑問は失礼かもしれないが、女なら気になる点が…」
サガ「彼女が双子座の後継者だというのならば、わたしも気になる点がある」
カノン「やはりお前も気になるか」
サガ「ああ、彼女の聖衣の下は全裸だろうかと」
ゴッ
カノン「違うからそれ他の奴の前で言うな。絶対に言うな」
サガ「殴ることはなかろう!わたしは真面目に、」
カノン「よけい性質悪いわ!オレが気になったのは仮面の掟のことだ!」
2012/10/22