HOME - TEXT - ETC - 2011-JUNK7

◆2011-JUNK7

JUNKには、ブログなどで勢いのままに書きなぐった小ネタが5話ずつ格納されています。たまにこっそり加筆したり訂正したり。↑OLD↓NEW


◆夜半の月…(微妙にアテナサガ)

 戦女神ゆえに無骨と思われがちなアテナの私室にも、諸所に女性らしい華やぎが見える。活けられた生花であるとか、柔らかなレリーフで縁取られた鏡であるとか、宝飾類を収める可愛らしい小箱であるとか。
 サガが恐る恐る足を踏み入れると、アテナはにこりとソファーに掛けるよう勧めた。
「いま、茶を用意させています。そんなに畏まらなくても良いのですよ」
「畏まりもします。せめて場所を変えませんか」
「私の部屋は不満ですか?」
「鍵が掛からぬとはいえ、ここはプライベートエリアです。このような時間に不逞の罪人をいれては、よからぬ噂が立たぬとも限りません」
 窓の外には大きな三日月が見えている。陽落ちの遅いギリシアで、これだけはっきり月のみえる時刻に男を私室へ呼ぶのはいかがなものか。
「あら、13歳の小娘と28歳の元教皇でも、そんな噂が立ちますかしら」
「貴女はそれだけ魅力のあるかたですから」
 何気なく口にされた『元教皇』の言葉は、サガが述べた『不逞の罪人』に対するものだろう。女神はサガの罪を裁きながらも、13年間聖域をまとめあげた業績を、元教皇と呼ぶことで認めてもいるのだ。
 そのことを嬉しく思いつつ、サガは困ったように眉を顰める。
 見た目は年下であるはずのアテナのほうが、落ち着いて微笑む。
「よからぬ噂とやらが立つのならば、それは私の不徳です」
 アテナは処女神であり、ここはその聖域である。そこで『よからぬ噂』を立てるような者がいるとするならば、それは奉じる神を信じぬ不敬者であろうということを、遠まわしに言っているのだ。
「しかし、月が」
 サガはちらりと窓のほうを見た。燭台の灯りを打ち消してしまうほど、月明かりがこうこうと挿し込んでいる。アテナはサガの言いたいことに直ぐ気づき、立ち上がって木の窓隠しを下ろした。
「ふふ、アルテミスお姉さまは覗きなんていたしませんけれど、時間監視の職分ゆえに、月明かりの下の出来事は全て把握してしまいますものね」
「いえ、あの、アテナ」
 サガが主張したかったのは、『だから公の場所に移ろう』であって『プライベート性を強化しよう』ではなかったのだが。
「ゆっくりお話しましょうね」
 神のような微笑みで(実際女神なのだから当然ではあるが)サガを見つめる少女を前に、自分がからかわれていることを自覚しつつも、サガは顔を赤らめて視線を落とした。


2011/11/4
◆すれちがい1…(双子・カノンver)

「少し前に話してた旅行、来週の週末にしないか?」
 カノンがサガに尋ねた。海界と聖域の休日システムはだいぶ異なるので、休みを合わせるのはなかなか難しい。ましてカノンは海将軍筆頭だ。サガの休みに合わせて予定を組み、ようやくそのあたりに休みをもぎ取れそうな状態になったのだ。
 しかしサガは困ったように首を振った。
「すまない。その日は予定が入っている。その次の週末はどうだろう」
「再来週は海界で外せない仕事がある」
「そうか」
 今回もどうやら旅行は流れそうだった。前回のときには旅行には行けたものの、出先でサガに聖域から緊急連絡が入り、とんぼ返りすることになったのでカノンはひとりで時間を潰したのだ。とてもつまらなかった。
「仕事か?」
 カノンが尋ねるとサガはすまなそうに答えた。
「いや、アイオロスとの先約があって」
「そうか」
 タイミングの合わない相手というのはあるんだな、とカノンは思った。
 遠い昔、初めてカノンからサガに誘いをかけたときも、手ひどくサガに振られたのだった。スニオン岬へ閉じ込められるという手段でもって。
 あの時は確かに自分の言動に問題があったのだと思う。けれども、もしもあと少しだけ我慢をして、サガがスターヒルへ行ったあとに誘ったのなら、どうなっただろう。

 どちらにしろ、カノンが誘ってもサガは一人で先に行ってしまうし、そうでなくても他の誰かと出かけてしまうのだ。
「なら、もういい」
「カノン?」
 自分を呼ぶ声に振り向かず、カノンは双児宮をあとにした。
(ポセイドンなら相手にしてくれるだろうか。いつも寝ていて暇そうだしな)
 もうこのままずっと海界に降りてしまおうかと、カノンは思った。


2011/11/12
◆すれちがい2…(双子・サガver)

 銀の髪が、豪奢にソファーから零れ落ちている。それだけではなく、着崩れた法衣の合間から、けだるげに伸ばされた手足も覗いている。
 サガがソファーの上で、やる気なく横たわっているのだ。
 几帳面なサガが、このようにだらしのない姿を見せるのは、非常に珍しいことだった。
『ほうけているのならば、身体を使わせろ』
 精神内でもうひとりのサガが呆れたように半身を見下ろした。精神内でも白のサガは横たわっていた。
「勝手に使えばよい」
『それでは遠慮なく』
 途端に現実世界のサガの髪が、さあっと黒くなっていく。
 白のサガは抵抗する様子もみせない。
 黒のサガとなった彼は、ソファーの上へ上体を起こした。
「先約があったのならば仕方なかろう。気分を変えてお前も誰かと出かければよかったではないか」
 肉体を支配したサガが、精神内のもう一人へ囁くと、内部で彼はやっぱりやる気のない声で答えた。
『今日はカノンと出かける気分だったのだ』
「そんなことで神とまで讃えられたお前が拗ねるな。カノンの交遊が広がるのは良いことだろう」
『それは嬉しいと思っている』
 その言葉が嘘でないことは、同一体である黒サガには判っている。
 しかし、精神内でサガは転がったままだ。
「起きないのならアテナのもとへ行くぞ。あの小娘の前では、お前もそのような腑抜けた態度ではいられまいからな」
 そう伝えると、ようやく白のサガは顔だけ上げて黒サガのほうをみた。
『カノンがわたしの誘いを断るなんて、初めてだったのだ』
「……」
 存在を秘されていた自称悪の弟は、まともな交友関係など持っていなかった。つるんでいた悪童たちとサガでは、カノンの中で比較にもならず、よって、サガが休暇に弟を誘えば、カノンは素直でないながらも必ずその誘いに応えてくれたのだ。
『今日くらい、カノンに文句を言いながら1日寝ていてもいいだろう』
「……カノンは悪くないぞ」
『わかっている。だからどこへも出かけない。誰にもこんな姿は見せない。お前以外には』
 黒のサガはため息をこぼし、白サガの隣へ腰を落とした。白のサガは真っ直ぐだが、そのぶん不器用で頑固だった。
「仕方がない。わたしが1日つきやってやろう」
 黒髪の彼がそう答えると、サガはじっと半身を見上げ『お前だけは最後までわたしと一緒にいてくれるのだな』と笑った。


2011/11/13
◆回復アイテム…(PS3聖闘士戦記ネタ)

「星矢、何をしているのだ?」
 紫龍は声をかけた。雑兵たちとの戦闘が終わった後も、星矢が動こうとしないのだ。
 今はアテナの化身である沙織さんが胸を射抜かれ、12時間というリミットの中で教皇宮を目指さねばならない緊急事態の真っ最中である。時は一刻を争う。なのに星矢は立ち止まり、きょろきょろと辺りを見回している。
 その視線が、道の隅にあった瓶を捕らえたかと思うと、いきなり彼は駆け寄ってそれを壊した。
「星矢?」
「やっぱりあった!」
 瓦礫の中から星矢が拾い上げたのは、干し肉と水筒。
 星矢は倒した雑兵たちの衣服もあさり、飴や菓子などを抱えて戻ってきた。
「紫龍たちは別場所で修行したから知らないかもしれないが、聖域では訓練や稽古の合間も、身体づくりや体調管理の一環として、糖分やミネラル補給を欠かさないんだ。だからみんな簡素ながら何か持ってるし、瓶なんかに隠して置いといたりするんだよ」
 そう言いながら、手に持った飴を瞬や氷河の口にも押し込んでいる。
「12時間というのは結構長期戦だからさ。回復できるスタミナは回復しておかないと」
 干し肉を渡された紫龍は、困ったような顔をしつつ星矢に尋ねた。
「…これは泥棒にならないのか?」
 しかし星矢は爽やかな笑顔で答える。
「ドラクエだってタンスの中から物持ってくっていうじゃん。アテナを助けたら後で返せばいいんだよ」
「そ、そうか。まずはアテナを助けるために、万全を期すのが先決か…」
 手段には不服ながら、今は緊急時である。
 多少の融通をきかせねば最後までたどり着けない。真面目な紫龍も、そう割り切ることにした。
「でも、それなら瓶は壊すことないんじゃない?」
 瞬が女の子のような可愛らしい顔で首を傾げている。
「うん、証拠隠滅しとこうと思って。戦闘で中身ごと破壊されちゃったのなら仕方ないって思ってもらえるよ」
星矢の返事を聞き、これは返す気がないなと瞬だけはこっそり思った。


2011/12/3
ゲームの戦記では道端の壷を壊したり、柱を壊すといろんな色の光の玉が出てきて各種ステータスを回復してくれるのです。それに無理やり理由をこじつけてみました(>▽<;)
ダウンロード販売…(PS3聖闘士戦記ネタ)

 カノンが海界の仕事を終えて聖域へ帰ってくると、なにやら双児宮の方向からただならぬ気配が感じられた。
 それは今までに感じたことの無い、不思議な気配だ。敵の小宇宙ではない。双児宮に守護者以外の存在が入り込んだのなら、自分にもすぐさま察知できる。
 そうではなく、馴染んでいるはずのジェミニの小宇宙が、異様に肥大してざわめいているのだ。小宇宙が高められているのとも違う。コップから溢れた水が零れ落ちるように、増えすぎた小宇宙が、ただ双児宮からあふれ出している。やかましいほどに。

 カノンが双児宮へ近づくと、それは実際の騒音として耳に届いた。
 眉を顰めて居住区の扉をあけると、部屋の中には自分と同じ顔をした者たち大勢いて、一斉にこちらを見る。
「また一人増えたぞ」
「あれはオリジナルだ」
「何が違うと言うのだ。同じだろ」
「どうでもいいが狭い」
 すし詰め状態の部屋のなか、ひとり優雅にソファーへ腰を下ろしている者がカノンへ声をかけた。
「カノン、おかえり」
 こいつだけはサガだ。カノンは直ぐに判別した。
 しかし判別と同時に怒鳴り返す。
「これは一体どういうことだ!説明してもらおうか!」
「いや、その…」
 多少は後ろ暗さを感じているのか、サガの視線は微妙に泳いでいる。
「その、いわゆる異次元界の技術による三次元コピーなのだが、その世界では過去のお前を500円…本日換算約4.92ユーロで買えるというので、つい100人ほど購入してしまったのだ」
「アホか!!!」
 カノンが叱りつけたのも当然だろう。まだ視線を逸らしたままの兄へ、容赦なく詰め寄る。
「何か?オレだけでは足りぬということか?実物がいるのに何故買う!大体どうやって養う気だ!」
「い、いや、お前に不満などない」
 慌ててサガは弁明した。さすがにそこは誤解されたくないのだろう。
「彼らは自分で生活できると言っているので、養育費の心配も無用なのだ。ただ…彼らは改心前のお前でな…先ほどから皆でわたしを悪の道に唆すので困っている」
「困っていると言いながら、何故そんな嬉しそうな顔をしているのだ。自分でなんとかしろ。オレも勝手にさせてもらう。お前の真似をして、過去のお前を買うのもいいな」
「残念ながらわたしは売っていなかった」
「ふざけんな不公平だ!」

 結局コピーたちは異次元界に返されたものの、サガが勿体無さそうな顔をしていたので、カノンは一発殴っておいた。


2011/12/14
追加料金で十二宮編にいないキャラや邪武を購入できます。1ゲームにつき一人しかダウンロードできませんけど!お陰でラダやカノンを聖域でタッグ組ませたりできますよ!

BACK / NEXT