JUNKには、ブログなどで勢いのままに書きなぐった小ネタが5話ずつ格納されています。たまにこっそり加筆したり訂正したり。↑OLD↓NEW
◆慰問…(双子+星矢+翼竜)
「歌や劇…というのが、やはり無難だろうか」
真剣な表情で考え込んでいたサガが顔を上げると、隣でカノンが呆れたように口を挟んだ。
「老人ホームでの出し物なんだろ?素人の学芸会なんざ見せられて楽しいのか」
「こういうものは気持ちだ」
「どうせなら聖闘士の能力を駆使して、冥土の土産になるくらいハデな演出で楽しませてやれよ。心臓が止まらぬ程度に」
「不謹慎だぞ、カノン」
事の発端は、サガが頻繁に訪れる老人福祉施設で、なにか出し物が出来ないかという話が出たことによる。その施設は貧しい街の外れにあり、運営は聖域からの寄付などで何とか続いているものの、余裕は無く、小さなラジオが唯一の娯楽という有様だ。
周囲には宿泊施設もない。そのため、遠方からボランティアが来てくれる事もまれだ。そこで暮らすお年寄りたちに、何か楽しんでもらえるような企画を…というのがサガの希望だった。
双子の言い合いを聞いていた星矢が首を傾げる。
「聖闘士の能力を駆使したイベントっていうと…日本で沙織さんがやった銀河戦争みたいなやつとか?」
しかし、聞いたサガの顔がとたんに曇った。
「あれは論外だ」
「やっぱ、不謹慎かな。あそこまで規模が大きくなくても、庭とかで対戦すれば盛り上がりそうなのになあ」
悪気のない発案であるものの、星矢に甘いサガが珍しく眉間に皺を寄せ、カノンに話を振る。
「海将軍、お前から見た銀河戦争はどうであった」
兄から海将軍と呼ばれたカノンは、鼻で笑い返す。
「ま、オレは聖闘士崩れだから元々それなりに情報を持っていたが…むろんビデオにとって保管させてもらったさ」
「…そうだろうな。ではワイバーンよ、冥界ではどう反応した」
さほど離れていないソファーに腰をかけ、本を読んでいたラダマンティスが顔を上げてこちらを見る。会話には混ざっていなかったものの、話は聞いていたようだ。
「その当時には、まだ冥闘士の封印が解けていなかったので、詳しくは知らん。が、先に足場固めをしていたパンドラ様の手の者が、画像情報を取得済と聞いている」
「お前は見ていないのか?」
「青銅聖闘士ごとき、いちいち個別研究などせずとも、俺の相手ではないと思っていたのでな」
サガとラダマンティスのやりとりの間へ、カノンが割って入った。
「おいおい、1度も聖戦に勝った事が無いくせに余裕すぎだろ」
「どちらにせよ、封印が解かれて直ぐ聖戦に突入したのだ。見る暇などなかった」
「音楽会やる余裕はあったくせに」
「あれはパンドラ様が…」
言い合いをはじめた二人には触れず、星矢が『どういうことなんだ?』という目でサガを見る。サガはため息混じりに後輩へ諭した。
「あの件でわたしはお前達の抹殺を命じたが、もともと保身が理由ではない。女神の存在に確信が持てたのはその後のことだからな。また、聖闘士の名を見世物的なショーで汚したという精神論だけでもない」
「抹殺の理由になるくらいには、掟破りだというのは判ってるつもりだケド、他にも理由が?」
「大有りだ…青銅とはいえ、88名のうち10名もの聖闘士の能力と戦い方を、聖戦前にご丁寧にも映像つきで全世界に晒したのだから」
「あ、そっか」
「早々に処分を行い、次点の候補者に継承しなおして、建て直しを図ろうとしたところで…女神が聖域に乗り込んで来られたというわけだ」
自嘲の響きが混じるのは、気のせいではないだろう。
反逆の過去を持つ先輩の肩を、星矢はぽんぽんと叩く。
「じゃあ、そういうのでなければ良いんじゃないかなあ。折角やるのなら聖闘士ならではの内容でっていう、カノンの言い分も一理あると思うんだ。サガはイリュージョンとか見せることが出来るし、やりようによっては低予算で華やかに楽しい出し物が出来ると思う」
「そうか…そうだな」
星矢の笑顔につられるようにして、サガの顔にも笑顔が戻る。
そんなサガへ、星矢はにこやかに続けた。
「なあ、ところでなんでラダマンティスが双児宮にいるんだ?」
他意がないゆえに直球で放たれた質問で、横で言い合っていたカノンとラダマンティスが固まる。
サガは目を丸くしたあと笑いを堪えつつ、
「言うなれば、ラダマンティスによるカノンへの慰問だ」
と答えて星矢の首をひねらせ、横の二人の言葉を詰まらせた。
2011/5/19
◆トランプ…(サガ&星矢)
テーブルの上には、シャッフルされたトランプが伏せられたまま広げられている。
そのテーブルを間に挟んで、サガと星矢は腰を下ろしていた。
トランプは星矢が持ち込んだものだ。
元不良の弟のせいで、カードといえば賭博というイメージしか持っていなかったサガに、星矢が手土産として持参して、遊び方をレクチャーしているというわけだ。
「まず、簡単なやつからいくな」
この場合の「簡単」とは、星矢的に「教えるのが簡単」という意味である。
「バラバラに伏せられたカードを2枚めくって、同じ数字ならそのカードを取れるんだ」
サガは真剣な顔をして卓上のカードを眺めている。
「なるほど、透視もしくは空間把握の訓練か」
「記憶力のゲームだよ。一般の人は透視できないって」
超常的手段で裏面を読み取ろうと、小宇宙を燃やし始めたサガを星矢が軽くいさめる。
「両者でカードをめくっていって、より多くのカードを手に入れた方が勝ちなんだ。これなんてサガ向きのゲームだと思うんだけどなあ」
こうやるんだよ、とカードを二枚めくって見せた星矢の手元を、サガは真面目に視線で追っている。
「これは何というゲームなのだ?」
「神経衰弱」
「名前がわたし向きなのか」
「ち、違うって!」
星矢は慌てて否定する。
サガもそれは冗談であったようで、『楽しそうなゲームだな』とにっこり微笑んだ。
2011/5/25 星矢と一緒にいると神経衰弱とは無縁でいられるサガです。
◆翼あるひと…(ロス→←サガ→星矢)
(星矢が神聖衣を発現させた姿を、初めてサガが見た時のあの顔ときたら)
アイオロスはその時のことを思い出して、軽いため息をついた。
(魂を引き込まれているのが、傍から見てもバレバレだった。サガらしくもない無防備さで一心に見つめて、そうしてすぐに、サガらしい訓戒を与えつつも、手放しで嬉しそうに賞賛したのだ)
負けず嫌いのサガが、心の底からだ。
星矢のことはライバルとして見ていないせいかもしれないが、自分が1度だけサガに褒められたときのことを思い出すと、気分が落ち込む。
『アイオロスこそ次期教皇にふさわしい立派な聖闘士だとわたしも思っておりました』
あれはどう考えても、嘘が8割だろう。
そんなサガでも、射手座の聖衣のほうは良く褒めてくれた。特に翼が好きなことは、言葉よりも雄弁な視線が物語っていた。サガにとっては、翼というものが、何か特別なものの象徴に感じられているようだった。天高く昇ってゆける、御使いのしるしであるかのように。
(でもサガ、ケンタウロスに翼はないんだよ)
アイオロスは目を閉ざした。こんなことで落ち込んだり怒ったりするのは、子供と変わらないと、心の中の客観的な部分が囁く。
(サガが好きなのは、俺ではなくて、サジタリアスのあの翼なのだ。しかも、今は本物の翼をみつけてしまった)
かつての自分は、なんの疑問もなくサガの特別は自分だと思えたのに。
珍しく人馬宮内で自室へ篭っていたアイオロスは、午後はそのままフテ寝をすることに決めた。
「サガがあんなに翼が好きだとは思わなかった」
星矢が無邪気に指摘する。サガは少しバツが悪そうに『すまなかったな』と、元気いっぱいな後輩へ返した。星矢は既に聖衣をパンドラボックスへとしまい、今は双児宮でお茶を飲んでいる最中だ。
「あ、怒っているんじゃないんだ。サガにしては珍しく興味津々って感じで、可動部分をみたり羽に触れたりして浮き立っていたから、よっぽど好きなんだろうなあって」
「あの神聖衣は、お前にとてもよく似合う」
それはサガの本音であった。ペガサスの青銅聖衣も星矢に似合っているが、神聖衣もまた、あつらえたように星矢になじんでいた。
「だが、わたしが好きなのは、翼ではなくてお前だ」
「えっ?」
苦笑しながら伝えられた言葉に、星矢が目を丸くする。
「最初に出会ったとき、お前はお前自身の足で十二宮を昇りきり、その拳でわたしを倒した。翼など関係なく、わたしはお前を認めている」
てらいもなく褒めるサガの視線は真剣で、星矢は過分だと思いながらも、真摯に受け止める。
「サジタリアスも…ケンタウロスに本来翼などない。それでも好きだったのは、今思えば翼の造形ではなくて、それを纏うものの魂を認めていたのだと思う」
どこか遠い目で、ここには居ない人間への思いを漏らしたサガへ、星矢は少し首をかしげ、少年らしい率直さをもって話す。
「それ、本人に言ったらいいと思う」
今度はサガが目を丸くする。まるで考えもしなかったことを勧められたかのように。
「そんなことは、出来ない」
「どうして」
「わたしなどにそのような事を言われても、彼とて反応に困るだろう」
「そうかなあ」
追求を誤魔化すように紅茶を口にしたサガを見て、星矢は『このひと意外と不器用なんだ』という感想を浮かばせたが、賢明にもそれは言葉にされることはなかった。
2011/6/6
◆ねずみの国交流…(双子に引率される少年たち)
「サガ、ちょっとお前は黙れ」
「人が話している途中でわりこむな、カノン」
「いや、途中でいいから黙れ。何でお前はこれから行楽を満喫しようというガキどもに、ねずみとペストの歴史などを語りだすのだ」
「こたびの遠征は行楽ではない。あくまで親睦と現代文明の研修を兼ねた交流だ。それゆえ、気が緩みすぎぬよう最初に引き締めを…」
「それは建前だろ!聖戦でがんばらせすぎた青銅に、たまには子供らしい遊興もさせてやろうってのと、海界には聖闘士(オレのことだが)が迷惑かけた詫びも兼ねて、海将軍を招待したってのが本当のところではないか!」
ここはねずみの国の入り口である。
人目も憚らず言い争っている美形の双子は非常に目立った。
イオが遠い目でそれを眺めながら瞬へ尋ねる。
「シードラゴンとお兄さんって、いつもあんな?」
「おおむねそうだよ」
「仲がいいんだな」
「あれでも大人しいほうだよ。僕達や君達がいるからね」
公の場における、シードラゴンとジェミニの印象が覆りそうな情景である。
サガがカノンに反駁する。
「公費で来ているのだぞ。研修が建前というのならば、なおさら最初に建前をなぞるべきだ。この後はどうせ自由行動になるのだからな。お前も海将軍筆頭として、何かねずみに関して啓蒙すべきことはないのか」
べつにねずみについて修学しに来ているわけではないのだが…という青銅一同と海将軍たちの心の声はサガに届いていない。
売り言葉に買い言葉なのか、カノンも怒鳴った。
「ねずみの繁殖力を考えれば、あの彼女ねずみにはもう100匹くらい子供がいるだろうさ!真面目なのはいいが、お前もそれくらい人生楽しめよ!」
言ってしまってから、はっとカノンは口ごもる。サガも青ざめた。
100人の子供…そこから連想されるものは、青銅たちにとって1つしかない。そしてそれが簡単に語れるものではないことを、双子は知っている。
カノンは決して城戸光政をあげつらったわけではない。単なる言葉上の偶然だ。けれども、そう取られても仕方がない台詞でもあると、後から気づいたのだ。
「い、今のはねずみの話だ」
言葉につまっているカノンを庇うように、サガがらしくない下手なフォローをする。
背景をしらぬ海将軍たちは不思議そうな顔をしている。
「わかっていますよ」
瞬は苦笑しながら、落ち込んでいる先輩双子のフォローに入った。
2011/6/18 珍しく失敗する双子。めったにないです。
◆酒池肉林…(悪サガとタナトスと星矢)
(TV版悪サガと星矢)
サガ「権力の最高位についた暁には、美女を侍らせるのが夢であった」
星矢「…それ、楽しいのかサガ?」
サガ「フッ、お前はまだ子供だな」
星矢(……俺が子供なのかなあ)
喜々として夢を語るサガを前にして、星矢は首をかしげた。
(タナトスと星矢)
星矢「サガがそんな事を言っていたんだけど」
タナトス「可愛いニンフに囲まれて喜ばぬ男などおらぬ」
星矢「そ、そういうものなんだ…俺は好きなひとが一人いればそれでいいけど」
タナトス「それはまた別の話よ」
小馬鹿にした目で見下ろしてくるタナトスの前で、やっぱり星矢は首をかしげた。
2011/6/23