JUNKには、ブログなどで勢いのままに書きなぐった小ネタが5話ずつ格納されています。たまにこっそり加筆したり訂正したり。↑OLD↓NEW
◆恭順のシナリオ…(次期教皇アイオロス&黒サガ)
教皇宮で瞑想の修練を課せられていたアイオロスは、ふいと顔をあげた。聖域へ侵入しようとしている一隊の気配を感じたためだ。まがまがしい敵意と小宇宙からして、友好的な部隊であるはずがない。
女神は現在日本へ出かけていて不在であり、シオンはムウとともにジャミールで聖衣の修復を手がけている。
(さて、どうしたものか)
思いをめぐらせたのは、敵襲に対してではない。
指令系統および、現状の聖域の勢力図についてだ。
己は教皇となる身であるとはいえ、まだ候補の身である。しかも蘇生後は死亡時年齢でよみがえっているため、熟練の黄金聖闘士に采配を振るうには未熟であることは自覚していた。
迷ったのは一瞬で、アイオロスはすぐに聖域中に聞こえるほどの大音声の小宇宙念話でサガへ部隊の殲滅を命じる。双子座の攻撃的な小宇宙が高まり、敵軍の小宇宙が途絶えたのは、そのすぐ後のことだった。
黄金聖衣を着用した黒髪のサガが教皇宮へ上り、アイオロスの前へ跪いて任務完了の報告をした姿を、大勢の仕官たちは感慨をもって眺めた。
それは本来13年前にあるべき姿であり、反逆者が未来の教皇へ恭順を示した瞬間でもあった。
さすがアイオロスよとの声が広がり、その光景はまたたくまに十二宮下の面々に伝えられていく。
雑兵たちが教皇の間を去って行き、その場にアイオロスとサガの二人だけとなると、黒サガは今までの丁寧な態度をやめて立ち上がり、アイオロスを睨んだ。
「命令が遅い!」
「ごめん、ちょっとは遠慮したんだよ」
「敵襲の際に遠慮もなにもあるか」
「君ならすぐに倒せる敵だと思ったからね」
アイオロスも不敬を叱るどころか、逆に言い訳めいたことを口にしながら、サガの機嫌をとっている。もっとも媚びているのではない。あくまで上に立つものとしての態度は崩さない。
黒のサガは『ふん』と小馬鹿にしたように鼻を鳴らし、宣告した。
「わかっていようが、今回はサービスだ」
「ああ、パフォーマンスにご協力感謝する」
教皇補佐と、偽であったとはいえ13年の実績のある元教皇では、有事の際、咄嗟にサガの判断や指示を仰ぐものが出てもおかしくないのだ。もちろんサガはそつなく完璧に対処するだろうが、それではアイオロスを軽んじるものが出る。また、再びサガを御輿に乗せようとする勢力が出てくる可能性もある。
聖域を二つに割るわけにはいかないのだ。
アイオロスもサガもそれはわかっていて、それゆえにサガは敢えて黒サガの姿でアイオロスに従うところを聖域に見せたのだった。
「お礼に何か奢るけど?」
「勅命に礼をいう馬鹿がいるか」
「じゃあ個人的にデートしてくれ」
「そういうことは、わたしではなくアレに言え」
文句を言いながらも、中へ引っ込んでもう一人のサガを表に押し出してきた双子座を見て、アイオロスはこれまでの長かった道のりと幸せをかみ締めた。
2011/3/20
◆わたしの未だ知らぬなにか…(13年前の白黒サガ)
『いくらお前が偽ったところで、真実をくつがえすことは出来ない』
愛おしくも小うるさい我が半身が、性懲りもなく今日もわたしを諌めようとする。
「そうでもないぞ」
窓の外には花々が咲き誇り、暖かな風が春眠を運んでくる。
昨年の冬にはアイオロスが死んだばかりだというのに、世界はのどかに季節をうつしてゆく。
「事実など簡単に書き換えることが出来る。アイオロスは女神殺害を試みて脱走したのだと、ただ大量に発信しつづければいい。メディアリテラシーなどというものは、比較する情報があって初めて成せるもの。真実を閉ざし、それでも信じぬ者には擁護の方向性を少しいじってやればいい。『アイオロスの反逆が事実か否か』を論じさせるのではなく『反逆者アイオロスの黄金聖闘士としての功罪』のような、一見バランスの取れた捌け口を提供して論じさせてやるさ。みていろ、弟のアイオリアですら、じきに兄を信じられなくなってゆく。事実などその程度よ」
そう笑うと、半身は心の中で首を振った。
『アイオロスにいっとき罪を負ってもらうことについては、もう止め立てせぬ。こうなった以上、聖域をまとめてゆくには、そうするほかない』
「わかっているではないか」
『それでも、誰が知らずとも、わたしたちが知っている。この身が恥知らずであるということを。わたしたちはもっと畏れるべきなのだ』
「神すら殺そうとしたわたしが、一体何を今さら畏れよと?」
『わたしの未だ知らぬ、矮小なわれらなどを超越した何かを』
「フン」
わたしはまた哂った。
「お前もその何かとやらを知らぬのだろう。お前とて、わたしなのだからな!」
『…何かは知らない。けれども確かにそれはあるのだということを、わたしは、アイオロスに教えてもらったのだ』
名も知らぬ何かを畏れるなど、ススキに幽霊をみて怖れるようなものではないかと思うのに、半身は譲らない。
アイオロスが死をもって遺した何かが、13年にわたってサガを侵食していくことになるのを、そのときのわたしは知る由もなかった。
2011/3/29
◆…こんにゃく問答(たまには自分アピールする黒サガ→シュラ)
肘枕でソファーへ寝転がった黒サガが、遠い目をしながら、隣へ立つシュラを見上げている。
「それでその蒟蒻とやらがどうした」
「蒟蒻と言うのは、コンニャクイモに含まれる多糖を利用して加工されますが、本来は白いのです。それにわざわざ海草を混ぜて黒くしているのです。そのほうが人気だからです」
「……」
「アテナのいらした日本では大人気の食材です」
力説している磨羯宮の同僚へ、黒サガはさらに遠い目で話しかけた。
「…シュラよ、お前がわたしを慰めようとしているのは何となくわかる。しかし、一つにはその話で何が慰められるのか全くわからぬ。二つには、わたしは別に慰められる理由がない」
「えっ、しかし先ほどから何か悩んでいるようだったではないですか」
驚いた顔でシュラが語りを中断する。黒サガはこめかみを押さえながら説明した。
「カノンが置いていった作り置きの夕食を、風呂の前に食うか、風呂の後に食うか考えていただけだ」
「すみません、そんなどうでも良いことであんなに真剣な顔をしていると思いませんでしたので…」
「……」
何気に爆弾発言の多い元部下であった。黒サガが反駁する。
「どうでも良いことで悩むのが贅沢なのだと、あの小娘が言っていたからな」
この場合の『小娘』は、アテナを指す。
シュラは納得したようなそうでないような顔で、手に持っていた箱をサガの前へ置いた。
「ご飯は風呂前に食べてください。そうしたら風呂後に俺の持ってきたデザートを一緒に食べましょう」
「なるほど、良い解決策だ…わたしがデザートになっても良いぞ?」
黒サガはソファーから起き上がり、あっけにとられたシュラをその場にのこして、夕食をとりに台所へ向かった。
2011/4/5
◆テルメ…(双子と青銅年少コンビで慰安旅行1)
星矢は身を起こし、隣に横たわるサガを見下ろした。
サガの腰には一枚白の布地がかけられて、一糸纏わぬ姿ではないものの、それ以外はほんのり赤く上気した素肌を晒している。しっとりと汗ばんだ肌には、銀糸のような髪が流れ落ちていた。
普段は絶対にみることの出来ぬ無防備な姿だが、今でさえ戦闘を仕掛ければ、大抵の相手は敵わぬであろうことを星矢は理解している。
星矢の視線に気づいたサガが、やわらかく笑んだ。
「…このような感覚は知らなかった」
「サガ」
「お前は、色々なことをわたしに教えてくれる」
「そ、そんなこと」
サガの真っ直ぐな視線に、何故か気恥ずかしくなって星矢は目を逸らした。高鳴る鼓動を誤魔化すように、星矢はサガに尋ねる。
「その、意外だった。サガはこういうの、とっくに知ってると思ってたから…その」
「意外か?」
サガがまた微笑んだ。星矢は素直に頷いておく。
「うん、意外だった。風呂好きのサガが岩盤浴未体験だなんて」
「お湯に浸からずとも、こういった方法で寛げるのだな」
二人の世界に入っているサガと星矢を、一緒に慰安旅行に来ているカノンと瞬が呆れたように(瞬は微笑ましい視線で)眺めた。
2011/5/12 双子+星矢+瞬の慰安旅行妄想の一環…氷河はシベリアンメンバーと、紫龍は五老峰メンバーと旅行している設定です。一輝は音信不通ですが、多分そのうちシャカが捕まえますよ。
◆震える器具…(双子と青銅年少コンビで慰安旅行2)
「そこに座って、サガ」
星矢に言われるままにチェアに腰を下ろす。座り心地は悪くは無いが、これから始められるであろう行為に、わずかな不安が先立つ。
見上げた視線からその気持ちを汲んでくれたのか、星矢が近づいてきて、顔の近くで囁いた。
「力を抜いて…すぐに気持ちよくなるから」
「星矢」
「大丈夫」
彼が大丈夫というのならば、安心していいのだろう。星矢は言葉だけでなく、手を伸ばして肘掛に乗せられた私の腕に触れてくれた。
「慣れてほぐれるまで、弱にするな?」
星矢はリモコンらしきものを、もう片手に持っている。その指がスイッチを押すと、わたしの身体を振動が襲った。
「…っ」
その器具の動きは緩慢でありながら、しだいに肉へ食い込むように圧迫してくる。強弱をつけてほぐされつつ、突き上げられる動きで、腰が浮きそうになる。けれども、それは確かに痛みだけではなかった。的確にツボを抑えたその動きは、じんわりと快感を生んでいく。
我慢できず、わたしは目を閉じた。
「サガ、痛くない?」
「…ああ、気持ちいい」
「じゃあ、もう少し強くするから」
星矢がリモコンを操作したのだろう、すぐに器具の振動が激しくなり、声が漏れそうになった。このような感覚は 知らない。こんな無防備な姿を晒せるのも、星矢の前だからだ。
わたしは手を伸ばし、触れてくれていた星矢の手を、逆にぎゅっと握り締めた。
「カノン、なんだかサガと星矢のまわり、人だかりが出来ていますね」
「…何やってんだあいつら」
「あ、もしかしたらカノンは知らないのかな。あれは温泉場に付きもののマッサージチェアです」
「何だそれは。色気を振りまくための機械か」
「違いますよ。名前のとおり、椅子に座ると自動的にマッサージしてくれるんです…でも確かにサガさん色っぽいですね」
カノンが二人をその場から引き剥がしに行くまで、星矢とサガは温泉地に別種の独自空間を作り出していたのだった。
2011/5/15