JUNKには、ブログなどで勢いのままに書きなぐった小ネタが5話ずつ格納されています。たまにこっそり加筆したり訂正したり。↑OLD↓NEW
◆処罰方式…(冥王+ルネ)
ハーデス瞬「今回もロストキャンバス方式で抹殺するのはどうであろう」
ルネ「全人類の人口も寿命も、比較にならぬほど増えているのに無理です!」
ハーデス瞬「無理か?」
ルネ「時間設定などされた日には、絶対に記録が間に合いません」
ハーデス瞬「そうだな、余も描ききれん。此度の依代は絵心もなし」
冥王の足元には、描こうとして諦めたと思われる、残念な画力のラクガキが数枚落ちていた。
2010/2/12
◆傍観者…(LC杳馬&冥王)
オイラはね、真っ直ぐな人間が大好きなんですよ。それも将来有望な若い子がいい。大人になってからだと固まっちゃってて、柔軟性の無いやつが多いですからね。その点、子供は純粋だし成長するでしょ。出来るマーブルが綺麗なんです。見所のある子がいたら、オイラはその子に囁いて悪意の苗床を作り、そこへ闇の一滴を落とす。あ、たった一滴かって馬鹿にしませんでした?たった一滴だからこそ、本人も周囲も異変に気づかないまま見過ごしてしまうんですよ。
それに、その一滴は最初こそ一滴だけど、永遠に魂を蝕み続けるんです。密かに奥底まで落ちた一滴は、じわりじわりと根を広げて、何年もかけて心のほとんどを侵食してしまう。成長とともに闇も増殖して消え去ることは絶対にない。
そうなった人間の末路はわりとワンパターンですねェ。家族に手を掛けるとか、人間不信になって命を絶つとか、お定まりのコースだ。でも踊らなくなっちゃつまらないですからね。そこに至るまでのあいだ、どれだけ激しいダンスを踊ってくれるのかが見所ってワケですよ。
え、心は痛まないかって?どうしてです?人生面白いか面白くないかじゃないんですかね?つまんない一生送るよりもずっと楽しいと思うんだけどな!
オイラ、別に大層なことは望んでないですし。
パーティーを宴の端で静かに眺めていたいってだけの、ささやかな壁際族なんです。 ね、ハーデス様もそうでしょ?
人間ごときの処罰は人間が自ら行えば良いのだと、依代を躍らせてますものね!
2010/2/16
◆ダンス…(杳馬+アスプロス+テンマ)
「お前、母さんにすまないと思わないのかよ!」
いかにも胡散臭い無精ひげの男へ、テンマは容赦なく怒鳴りつけた。
怒鳴られているのはテンマの父だが、父親を『お前』呼ばわりすることについて怒るものはその場に誰も居ない。むしろテンマに同調、もしくは同情するものばかりだ。
それというのも、ヘラヘラと笑うその男は、天魁星メフィストの杳馬であり、掛け値なしの外道だからだ。他人に闇を面白半分に吹き込んだり、人生をひっかきまわしては高みの見物をするのが趣味という、最悪の性格を持ち、その為に誰かが死んだり破滅をしても、彼は全く気にしない。
そんな父親が双子座の黄金聖闘士をターゲットにしていると知れば、テンマでなくとも怒鳴るだろう。
「何で?」
「何でって、その、男に手を出すとかどういうつもりだ!」
「ああ、なんだテンマも父さんに構って欲しいのかい?」
「違うわ!!!」
「このお兄ちゃんのことなら単なる遊びだし、パルティータの方が千倍も可愛くて夜のダンスも上手かったぞぉ」
にこにこと息子の怒りを笑い飛ばす杳馬を前にして、テンマは絶句し、アスプロスは横で色んな意味で涙目になっているのだった。
2010/3/15
◆同衾…(双子+女神)
星矢が双児宮へ遊びに来た挙句に泊まっていくのは良くある事であったが、さすがに女神を星矢と同列に扱うわけには行かない。
夜も更けたからと同じノリでアテナを寝室へ誘った黒サガを、カノンは傍にあった雑誌で殴りつけた。
「何をする、愚弟」
「こっちの台詞だ!」
「いくら発育が良くとも、小娘に手を出したりはしないが?」
「そういう問題ではない!」
「私はサガを信じておりますよ、カノン」
「それでも駄目ですアテナ」
「それでは小娘をどこに休ませればよいのだ。ソファーか」
「従者が今日のオレの海界からの帰省に合わせて布団を干してくれてある。むさくるしい部屋で申し訳ないが、女神はオレの寝台をお使い頂く」
「まあ、それではカノンはどこで休むのです?」
「ソファーでも床でも構いません」
「それはいけません。宮の主を差し置いて私が寝台で休む事など…そうだわ、カノンもサガの寝台で寝れば良いのです」
「…は?」
「たまには兄弟水入らずで、布団の中で語らったらどうでしょう」
「…女神、普通兄弟は布団の中で語らいません」
しかし、反駁しつつもカノンのツッコミはどこか弱い。
翌朝、何も言わず仏頂面ながら大人しくなっているカノンを見て、女神は『照れているのね』と思ったものの、懸命にも口に出す事は控えた。
2010/3/19
◆星を護るもの…(年の差ロスサガ)
聖闘士を目指してひたすら修行に励んでいたあの頃、アイオロスとわたしは良く二人で星を見た。星の見えるような時間にならなければ、訓練生は自由な時間をとれなかったということもある。
同期の者たちは、たいてい日中の修行が終わると同時に疲れ果てて泥のように眠りに付いたが、幸いわたしたちには多少の余力があった。
旧態依然とした聖域では、夜ともなれば守衛地以外の灯りは落ち、静かな闇が訪れる。そのぶん天蓋には煌々と星が輝いていた。
「綺麗だな」
「ああ」
そんな凡庸な会話を交わしたと思う。
「あの満天の星々の全てよりも、きっとこの星は美しいに違いない」
空を見上げてアイオロスがそう言うと、まるでそれが唯一つの真実であるかのように思えた。
「サガよ、俺たちは星を護るものとなろう」
そう笑いかけてくれた瞳のなかに、わたしは星を見ていた。
それも今は昔のはなし。
聖戦が終わり、新たなる生を受けたわたしたちは、新たなる日常をも手に入れた。
少年のまま蘇ったアイオロスは、昔と同じように「星を見よう」わたしを誘った。
28歳になったわたしにも、彼は変わらず輝いて見える。
わたしは少しだけ迷い、それから首を横に振った。
「アイオロス、私は星を砕くものとなったのだ」
そう言うと、アイオロスはただ寂しそうに微笑んで「そうか」とだけ答えた。
2010/3/26