JUNKには、ブログなどで勢いのままに書きなぐった小ネタが5話ずつ格納されています。たまにこっそり加筆したり訂正したり。↑OLD↓NEW
◆擬態…(双子+アイオロス)
「13年前は、恥ずかしながら君が短剣を振り下ろすのを邪魔したあと、仮面が落ちるまでシオン様ではないと気づかなかったんだよね」
双児宮へ帰ってみると、アイオロスがサガへそんな事を話していた。
サガは困ったような微笑んでいるような、あの微妙な表情で振り向き「カノン、おかえり」と言った。
アイオロスも来たばかりらしい。
何故なら、椅子に腰掛ける彼の前には茶の一杯もない。
アイオロスは「お邪魔しているよ」とだけオレに告げて、サガへと向き直った。
「カノンは君に化けるのが上手いけど、君も実は誰かの振りをすることが、とても上手いんだ」
「それで?」
サガが曖昧な笑みを浮かべたまま答える。
「オレはもう間違わない。あの時の感覚を絶対に忘れない…だから、ねえサガ。意地悪しないでもう一人の君に会わせてくれないか?」
オレは驚いてサガを見た。
サガは視線を僅かに伏せ、それから顔を上げてそれは綺麗に笑んだ。
「断る。私たちを見分けた事は褒めてやるが、アレはいま眠っている。貴様のために起こすつもりはない」
口調をのぞけば、どうみてもいつものサガにしか見えない。驚いているオレに気づいたのか、サガが苦笑をしながら言い訳めいたことをいった。
「お前の前では化けるつもりなどなかったのだが…すまん。サジタリアスが来たので、つい」
横からアイオロスも口を挟む。
「カノンはなまじ両方ともサガだと感じるから、判別しにくいんじゃないか?」
「貴様は私とカノンを時折間違うくせに、偉そうに。カノンの前ではつくろう必要がないゆえ、アレも私も互いに化けた事がないのだ。だから知らずとも仕方が無い」
どうやら目の前にいるサガは、白サガの外見ではあるものの、中身は黒い方であるらしい。聞けば13年間の長きにわたり、見た目を変えぬまま入れ替わらねばならない事態が多く(主に黒サガ側の都合でだが)、元々シオンに化けた上での二重擬態ゆえに、他者のフリはすっかり馴れたものなのだという。
「幻魔拳と併用すれば、大概の者のフリをすることが出来る」
とサガは言い、アイオロスは
「でも君は誰に化けても、オレ様オーラが滲み出る気がするよ」
などと口を挟んで、サガに睨まれている。
言われてから観察すれば、確かに目の前のサガは黒いほうで、双子のオレが本気になればサガが化けようが見分けは容易そうだった。
けれどもオレは、黒かろうが白かろうが、サガを区別する必要もないんじゃないかと思うのだった。
目の前でサガとアイオロスがまだ仲良く(としか見えない)言い合いをしているので、オレはサガに変わって二人にお茶を出してやった。
2009/2/1
聖戦後のアイオロスは、カノンが本気でサガに化けた時の見分けにはまだ苦労するものの、黒白サガの区別は一目でつくという拙宅捏造設定。
◆のど飴…(双子)
喉が痛い。
そう言って首筋に手を当てていたら、通りすがった童虎が飴をくれた。
「カノンよ、今年の風邪は喉を痛めるそうじゃ。体調管理を万全にせよ」
喉の炎症に効果がある漢方の飴だという。
肉体をいつでも最高の状態に保つのは戦士の義務であり、休めるときには休んでおくのも勤めのうちだ。
大人しく双児宮で休むことにしたオレは、ソファーでぼんやり寝転がりながら飴を舐めていた。寝台で休むほどには悪化しておらず、さりとて起きているほど健康でもないといった、中途半端な時間が過ぎていく。
3つ目の飴を口に放り込んだときに、サガが帰ってきた。
「どうしたのだ?」
双子の兄であるサガは、すぐにオレの体調の不全を感じ取ったらしく、傍へ近寄ってくる。
飴が口内にあるオレは、黙ったままひらりと手を振って、何でもないと主張した。
なのにサガはオレの意思を無視して顔を寄せ、口元でなにやらフンフンと匂いを嗅いでいる。
「変わった薬香のする飴だな…私にも味見をさせてくれないか」
そんな事を言うので、童虎にもらった飴の袋を取ろうとしたら、サガは何を考えたのか強引にオレが今舐めている飴を取ろうとした。それも口移しに。
「!!!!!!」
びっくりして、飴を飲み込んでしまったオレは悪くないと思う。
なのにサガは恨めしそうな目でオレを見た。
「ケチだな…飴の1個くらい味見させてくれても良かろう。何も返さぬわけではないのだから」
すると何か。味見したら返すつもりでいたのか。また口移しで。
オレはクッションでサガを殴り、黙ったまま横に置いてあった飴の袋を突きつけた。
2009/2/4
◆禁じられた遊び…(双子)
双生児は忌み子だという。不吉の証だという。
「そんなのは下らない俗説だって思っていたさ」
カノンが吐き捨てるように言う。
「片方が影扱いだろうが、聖衣が一つしか無かろうが関係ない、オレ達は好きに生きていく。そう思っていたのに」
言いながらカノンは私に眼差しをむけた。いつも強くて揺らぐことのないその視線が、まっすぐに私を貫く。しかし、どこかカノンは泣きそうに見えた。
「私たちが二人で俗説など覆してしまえばいい。二人で幸福になれば」
「どうやって?」
泣きそうな、怒ったような顔のまま、カノンは口元を歪ませて笑った。
「私が教皇になって、ジェミニの聖衣はお前が」
そう言うと、カノンははっきりと笑い出した。
「は、ははは、そんなんじゃねえよ。判っているんだろうサガ、オレの言う意味が」
笑いながら私の肩を掴む。
「オレ達は双子だから、半身だから、愛し合ったらいけないんだろう?オレがお前に愛を囁くのはいけないことなんだろう?だったらオレ達が双子として生まれてきたこと自体が呪いだ。オレ達は愛を禁じられて生まれてきた」
「…やめろ、カノン」
ああ、とうとう言葉にしてしまった。私は両手で耳をふさぐ。
けれども、こぼれた水はもう盆に戻すことは出来ない。
「愛を囁けないのならば、オレは別のものをお前に囁こう。お前をそれで満たしてやる。お前がオレと同じになるまで」
それはいけないことなのだ。
そう口にする事がどうしても出来ず、私はただ耳を塞ぎ続けた。
2009/2/17
◆選択肢…(タナ+サガ←アイオロス)
突如、巨蟹宮の方角から立ちのぼった不吉の気配を、獅子宮にいたアイオロスは瞬時に感じ取った。
隠す気もないのか、容易に捉えることの出来る禍々しい神気。特にこの神気は女神の慈愛溢れたそれとは正反対に近い代物だ。
「これは…タナトスか!」
アイオロスは直ぐに聖衣を呼び、隣にいる弟のアイオリアにも戦闘態勢に入ることを促す。
しかし、何故かアイオリアの反応は鈍かった。
「兄さん、落ち着いてくれ」
「何を呑気な。同盟を結んでいるとはいえ、かつての敵神が聖域に足を踏み入れているのだぞ!?」
鋭い視線でアイオロスは弟を睨む。
アイオリアは気まずそうに視線を逸らした。
「兄さんが知らないだけで、もう何度もタナトスは来ている」
「…何」
鋭さに加えて怒りまで追加されたアイオロスの視線は凄みを増し、さすがの若獅子も縮こまる。それでも兄の爆発を止めるために、必殺の一言を付け加えた。
「女神もシオン様もご存知だ。黙認という形で放置している」
「どういうことだ」
アイオロスは愕然とした。いくら時期教皇としての修練で教皇宮に篭りきりの日々が続いているとはいえ、アイオリアですら知っているような聖域の内情を、教皇候補の自分が知らないで良いわけが無い。
そうしているうちにも、タナトスの気配は双児宮へと向かっている。
巨蟹宮にはデスマスクがいるというのに、争った様子さえないという事は、彼もタナトスを素通りさせたのだ。
そこまで考えてアイオロスはハっとした。タナトスは十二宮を下へ進んだ。つまり目的は女神ではないのだ。
「女神は、他界の者との交流も害意がなければ否定なさらない。むしろこの事が良い方向へ流れればいいと思っておられる。シオン様は猫に鈴をつけるという意味でなら政治的に歓迎している」
「何を言っているのか判らない、アイオリア」
まっすぐに見つめるアイオロスの瞳は鋭く、完全に狩人のそれと化している。
アイオリアはため息をついてから、諦めたように口を開いた。
「サガが、タナトスと懇意だということだ」
アイオロスは目を見開いた。
「何故」
「知らん。それはサガに聞いてくれ」
アイオリアが言い終わるや否や、アイオロスは止めるまもなく双児宮へ向けて走り出していた。
「そこをどけ」
「いいや。今のアンタは通せねえな」
光速で駆け下りてきたアイオロスの前に、デスマスクが立ちふさがった。
巨蟹宮を一気に抜けようとしていたアイオロスは、思わぬ足止めに苛つく声を隠さない。
「お前も知っていたのか、タナトスとサガのことを」
先輩格であるアイオロスの問いを、デスマスクは流した。
それどころか、逆にアイオロスを哀れむような目で見る。
「行ってどうすんだ?制裁でもすんのか?冥界と聖域の同盟関係から考えても、私生活での個人的な交流という意味でも、教皇候補サマがアイツの行動に口出す権利はないぞ」
建前上はデスマスクの言うとおりだった。
「違う、私はただ、サガに問いたいだけだ」
「何を?」
そう言われて初めて、アイオロスは自分が何を問いたいのか良く判らないことに気付いた。
黙ってしまったアイオロスを前に、デスマスクも溜息をついた。そのため息は獅子宮でアイオリアが零した溜息ととても似ていた。
「まあ、悪いのはアンタじゃなくサガの方だろうさ。だが、それでもあの死の神がサガの安定に役立ってるのは間違いねえ。そうでなきゃ、俺だって」
「安定?」
「サガはかつて自ら死を選んだ。いかなる理由があったとしても、自殺の罪は最大級に重い。サガは蘇生後もしっかりしているように見えて、魂はボロボロなんだよ。こればっかりは心の強さとは関係ない」
「その事とタナトスとどういう関係があるのだ」
幾分落ち着きを取り戻したかのようにみえるアイオロスだが、その瞳は獰猛なままで、むしろ隠した猛禽の爪が研ぎ澄まされていくかのようだ。
「自死したサガの魂の所有権は、世界のきまりに従えば死の神タナトスに帰属する。タナトスは気に入った玩具が地上で壊れないように、定期的にメンテナンスをしにくるってわけだ」
「…サガは女神の聖闘士だ」
ギリ、と歯をかみ締めてアイオロスは呻る。その体からは金の小宇宙が抑えられずに強く濃くゆらりと湧き出している。
デスマスクはぽつりと呟いた。
「タナトスとアンタなら、迷わずサガはアンタを選ぶだろう。だが、それではサガは壊れる。だから今はアンタを通せないんだよ」
アイオロスの苛立ちは頂点に達した。そして、
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>ルート1「それがどうした」 →サガ壊れエンドでロスサガ
>ルート2「サガを癒すのは俺だ」→ロスサガ愛の再生劇場
>ルート3「勝手にしろ!」と引き返す→タナサガエンド
2009/2/19
SS締めずにセレクト逃げという酷さ。そのうち締め部分も追加したいココロ
◆ゲーム…(双子)
「カノン、やらせろ」
黒い髪のサガが真剣な目つきで隣に立ったかと思うと、突然こんなことを言い出したものだから、オレは固まった。
な、なんだ朝から。しかも命令形か。もう少し風情を考えろ。折角記念すべきサガからの告白が…いやいや、違うだろうオレ。なに手を震わせてるんだ落ち着け。
つとめて平静を装おうと努力したものの、コントローラーを握る指が上手く動かず、やっと5面まで進めたオレの戦闘機は、TV画面の中であえなく撃沈されている。残り機もないから、また最初の面からゲームスタートか。くそ。
どう返事を返したものか、超高速で頭を回転させているオレをよそに、サガもTV画面を見た。
「終わったのか。丁度いい、次は私にやらせろ」
…………。
オレはまた固まった。
「何をだ」
「そのゲームに決まっているだろう」
…………。
黒サガは、自分が何をしでかしたのか全く気にした様子もなく、嬉々として説明口調で話している。
「以前のギリシアではTVゲームが法で禁じられていたが、EUの反発によりその法も緩和され、結局廃止された。法的に問題ないとなれば、世俗の文化に触れる良い機会かもしれん。幸い、ゲーム機はお前が以前より違法所持していると思い出したのだ」
…………。
この怒りは直接本人にぶつけていいよな。
「ふざけんな!愚兄に貸すゲーム機などないわ!あと物を頼むとき命令形にすんな!それから期待させんな!」
大声で一気に言うと、サガは目を丸くして、それから鋭く目つきを変えた。
「ゲームくらいで心の狭い男め」
朝から大喧嘩になったので、恋愛パラメータも多分2〜3ほど下がった。
2009/3/5