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◆2008-JUNK6

JUNKには、ブログなどで勢いのままに書きなぐった小ネタが5話ずつ格納されています。たまにこっそり加筆したり訂正したり。↑OLD↓NEW


◆過保護…(黒&蟹&山羊)

「異次元と冥界、どちらが良いか選ばせてやろう」
 とあるマフィア組織をデスマスクとともに軽く壊滅させた黒サガは、まだ意識のある構成員を床に足蹴にしながら笑った。デスマスクは飽きたのか、少し前から窓際に腰掛けて煙草を吸っている。
 二人とも息すら切らしていない。黒サガが相手の返事を待たずにアナザーディメンションを放とうとした直前、シュラが大慌てで割り込んできた。
「サガ!!一般人相手に何やってんですか!教皇にバレたら厳罰ものですよ!」
 目をぱちりとさせている黒サガに代わり、窓辺からデスマスクが答える。
「証拠は残さねえって」
「駄目だ!デスマスク、お前が付いていながら何故止めんのだ!」
「だってこいつら、サガを襲おうとしたんだぜー。歳はイってるが顔が良いから薬漬けにして売り飛ばすかって」
 シュラの表情が一瞬で変わった。
「…この連中を塵になるまで切り刻んで良いか」
今度はシュラを慌てて止める事になったデスマスクとサガだった。


2008/6/25
◆一人どんぶり…(タナトス&白黒サガ)

 サガは溜息を静かに零し、顔にかかる前髪をかきあげた。
「私が相手では不足か、タナトス」
 目の前ではタナトスが口元に笑みを浮かべている
「そうは申さぬ。隠されたもう一人のお前がどのように私へ対するのか、見たいというだけだ」
 黒の意思を持つ魂の方を、表へ出せとタナトスが言い出したとき、常ならばその命に素直に従うサガが珍しく躊躇した。
 だが、この死を司る神が、言い出したことを簡単に変えたりはしないことを、サガはよく知っている。
「アレが表に出るのを、嫌がっている。それに…このような、コトの途中で…」
 口ごもりながらも、請いをこめてタナトスへ瞳を向ける。
 そう、サガとタナトスは先ほどから向き合い、手合わせを始めたばかりだった。
「…タナトス、アレにあまり無体なことをしないでやってくれないか」
「案ずるな。奴もまたサガなのだろう?可愛がってやるさ。お前にするようにな」
 その言葉をどこまで信じてよいのか知れたものではないが、白い意思をもつサガはもう逆らわず内面に沈んだ。サガの面に苦渋の色が見えたかと思うと、ざあっと髪が黒く染まる。
 次にタナトスを見つめ返した瞳は赤く染まっていた。
 タナトスは満足そうに黒サガを見つめた。
「フ、ようやくお前を屈服させる機会を得たぞ」
 対して、黒サガの無表情は逆に秘められた怒りを強く表していた。
「この下衆が…私を呼び出したことを後悔させてやろう。私はアレと違い貴様に遠慮などせん」


 そんなわけで対戦中のチェスを再開させた二人だが、全世界と神を相手に策謀を巡らしてきた黒サガの巧みな戦略の前に、短慮なタナトスは簡単に撃沈し、渋面を作る羽目になったのだった。


2008/7/1 チェス対戦で、白サガはたまにわざとタナトスに負けてあげてるというプチ設定
◆具現化…(LCネタあり三巨頭寄り合い)

 冥界の最奥ハーデス城の控え室で、ラダマンティスとミーノスは会議前の時間を世間話によって潰していた。
 聖戦が終わって以降、冥界はわりと平和であった。
「ヒュプノス様は想い描いた想像の世界を現実化できるそうだな」
「凄いですね。ただ、具現化出来るのはあくまで現象だけで、相手の精神内などまでは変えられないみたいですよ」
「ああ。前教皇シオンの師匠とやらは、ヒュプノス様が具現化した隕石も聖衣なしで受け止めたそうだし、意外と無敵な技でもないのだろうか」
 そこへ割って入ったのはアイアコスである。
「何を言っている、あんな無敵な技はない。やり方次第だ。ヒュプノス様はまだ想像力が足りん!」
 勢いよく断言する彼を、残りの二人は胡散臭そうな顔で見やった。
 アイアコスは続ける。
「例えば、日本最大の夏の同人誌即売会での男性向けサークル最大大手の行列空間をぶつけるとかだな」
「何を言っているのか相変わらず良く判らんぞ」
「全くですよ」
「喩えるとブランドバーゲンに突撃する女性の群れの熱源200%増しのようなハイパー空間だ」
「そ、そうなのか?」
「どっちにしろ私には全く理解出来ません」
「凄まじい破壊力なのだぞ!隕石などメではない」
「…よくわからないがヒュプノス様は採用しないと思う」
「貴方に賛同などしたくはありませんが同意ですよ」
「ヒュプノス様の力があれば触手空間も猫耳空間もメイド空間も思いのままなのに!」
「いや、先ほどミーノスが言っていたではないか。具現化可能なのは現象のみらしいと」
「ええ、人や生物は具現化対象にはならないのでは。断言は出来ませんが」
「何!では非現実を司るパンタソス様のほうがお役立ちではないか!」
「…………とりあえず今の暴言はヒュプノス様に内緒にしておいてやる」
「アイアコス、貴方のお役立ち基準がちっとも判りませんよ。その何とか空間とやらも」

 ラダマンティスとミーノスは、アイアコスを遠くに感じながら、さらりとその罰当たりな話題を流した。


2008/7/5
◆決戦前…(冥界蘇生組)

「という訳で、我らは冥闘士のフリをして聖域へ乗り込むゆえ心せよ」
 18歳の姿で一同をまとめるシオンは、無駄に元気だ。
 遠慮がちにカミュが手を上げる。
「しかし、聖域には残りの黄金聖闘士が揃っております。我らの行く手を阻むかと…」
「フ…カミュよ。我らは何人いる?」
「シオン様、サガ、シュラ、デスマスク、アフロディーテ、私の6人です」
「聖域側の黄金聖闘士は?」
「ムウ、アルデバラン、シャカ、アイオリア、老師、ミロの6人です」
「じじいの童虎は我らに相対するほどの力はあるまい。手こずるかもしれんが、戦力から外しても構わんだろう。我が弟子のムウは儂が対処するとして残り4名。一人に対して一人が千日戦争で足止めをすれば、残りの者が女神のところへ辿りつくのは楽勝じゃな」
 サガが眉間に縦じわを作る。
「シオン様、どんぶり勘定で勝算を誤魔化すのは止めていただきたい」
「…なんじゃ、女神の元までゆける可能性はゼロに等しいなどと、本当の事を言ってやる気を削いでも始まらんだろう」
「聖域は難攻不落の地、それは我らが一番良く判っております。今更そのようなことで士気の落ちる者はおりません」
「相変わらず真面目だの、お前は」
 サガに軽く睨まれるも、素知らぬ顔で流してシオンは静かに笑った。
「計算などしても仕方がない。我らは何があっても女神の元まで辿りつく、それだけだ」
 シオンの言葉に感動している素直なカミュとシュラを横目に、デスマスクが突っ込む。
「そのお嬢さんの元へ行くために策が必要なんでしょうが。じーさんの事だから何か考えてあるんだよな?」
「シオン様と呼ばんか」
 一言の下に殴られ、デスマスクの頭にはタンコブが増えている。
 アフロディーテが呆れた顔をしつつも、その頭へヒーリングをしてやった。
 シオンは何事もなかったかのようにその光景も無視して宣ずる。
「策ならば考えておるぞ。…サガがな」
 一同は真剣な顔となりかけるも、付け足された語尾に遠い目となる。指名されたサガは最も遠い目をしていたが、直ぐに真剣な面差しとなって黙り込んだ。
「どうじゃサガ、お主の思うところを述べてみよ」
 シオンに促され、サガは重い口を開く。
「……計算なしの強行突破となろうかと」
「そうであろう?」
 恐らくは冥界軍の監視もつき、対黄金聖闘士戦では何が起こるか判らない。互いの隠し奥義など、当たってみなければ知る由もないのだ。不確定要素の多いなか、綿密な計画を立ててしまうと逆にそれに縛られかねない。
 デスマスクの傷を治したアフロディーテが、淡々とした口調で述べた。
「では、女神の下へと辿りつく事を第一の目的とし、脱落したものは冥界に戻り一人でも冥闘士を倒して露払いとする。それでいいのですね」
 一同は頷く。
 そして魂は光となり、聖域の墓場に眠る己の肉体を目指して飛び立っていったのだった。


2008/7/8 童虎の脱皮とカノンの存在が特に計算外
◆ぐだぐだ対決…(黒サガVSシオン)

「むう…やはり動かざるべき北極星がわずかに傾いている。聖戦の予兆か」
 スターヒルの頂で、シオンは星を見上げていた。
 教皇たる彼の役目の一つに星見がある。星の動きによって災厄の兆しを読み、それに対して万全の策をとるのは、神の代理人としての義務だ。
 聖なるスターヒルの祭壇は、教皇以外立ち入ることの許されぬ禁区である。
 しかし、その場所へ突如現われた人影があった。
「サガ!?」
 シオンは驚いた。この地は黄金聖闘士といえども立ち入りは困難な、切り立った断崖絶壁の頂点にあるのだ。
「どのようにして…」
 思わず洩れた言葉に、サガは笑う。
「別に私には困難なことでは…老いたあなたでさえ登ってこれる場所ですからね…」
 じっとシオンはサガを見た。笑いながらもサガは苦しそうだ。隠せぬ荒い呼吸をハァハァと繰り返している。
「そのような事を申して、息切れをしておるではないか」
「…いや…これは息切れではなく…心の葛藤で…」
「虚勢を張らずとも良いぞ?」
 基本的にシオンは人の話を聞かないところがある。
「…違うと言っておろうが!耄碌ジジイ!」
 怒鳴り返したサガの髪は、黒く染まっていた。
「大体、教皇以外は立ち入り困難なはずのこの地に、どうして聖堂が建っているのだ!どうやって建てたか不思議には思わんのか!」
 シオンが思わず背後を振り返ると、そこには祭壇のある立派な聖堂がそびえたっている。
「過去の建築職人は黄金聖闘士より優れていたのであろう」
「そんなわけがあるか!」
「それより、どうやってお主が髪色を変えたかの方が不思議なのだが」
「見たな、私の秘密を…」
 黒髪のサガが獰猛に唸る。しかしシオンもそれを恐れるようなタマではない。
「いや、お主が勝手に見せたのではないか!」
「こうなった以上、お前を生かしておくことは出来ん!」
「フ…そのような短気な性格では、ますます次期教皇に向かぬな」
「この妖怪じじい、言わせておけば」
「外見の変化するお主に妖怪呼ばわりされたくないわ!」
 黒サガとシオンはとても似たもの同士だった。

 朝まで全力の口喧嘩をしたために力を使い果たした黒サガは、日の出とともに白サガに主導権を取り戻される羽目になり、起こるべきサガの乱は回避されることとなった。


2008/7/22

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