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◆2008-JUNK4

JUNKには、ブログなどで勢いのままに書きなぐった小ネタが5話ずつ格納されています。たまにこっそり加筆したり訂正したり。↑OLD↓NEW


◆ざる…(ロス×サガ)

 目の前で次々に空けられていくワインの瓶を見て、サガは青くなった。
「アイオロス、お前はたしなむ程度しか酒を飲まぬと言っていなかったか」
 ロドリオ村住民たちから英雄へ届けられた10本の地ワイン。それは既に半分以上無くなっている。
「そうだぞ?だがワインは水代わりだろう。酒のうちに入らないと思うが」
 言っている傍からクイクイ飲み干していく親友を見て、サガはようやく「たしなむ」基準が違うのだと気づくがもう遅い。
 考えてみればサジタリアスはケンタウロスの守護を持つ。酒好きでもおかしくはない。
 そこまで考えてサガはハッとした。
 ケンタウロスは酒に酔うと、乱暴かつ好色な本性をみせるという。
「お、お前はあまり飲むな」
「なんで?」
「なんでって…」
 気心の知れているアイオロスは、小宇宙でサガの意識の表層を読み取ると大笑いした。
「射手座はケンタウロスの例外、賢者ケイロンなんだけど」
 それでも飲みすぎを心配している様子のサガに、グラスを置く。
「そうだね、俺が好色になって誰かさんに乱暴したら困るからねえ」
「なっ、そんな心配はしていない!」
「俺は小休止するから、その分もサガが飲んでね」
 全然酔った様子のないアイオロスから自分のグラスへなみなみと注ぎ返されたサガは、なんだか丸め込まれているような気持ちになりながら、仕方なくそのワインへと口をつけた。


2008/5/3

◆飼育…(山羊黒監禁)

 女神の盾によって地上から弾き飛ばされたサガの一部は、欠片となって冥府に堕ちている。
 黒サガと呼ばれていたその欠片は、ハーデスとの聖戦ののちに見出され、今は女神によってタルタロスの片隅へと封印されているのだ。
 シュラは自らその監視を申し出た。
 場所柄を考えても、監視なくばソレは隙をみて冥界勢と手を組み、何らかの企てを起こさぬとも限らない。
 欠片とはいえ双子座の聖闘士サガに繋がり、影響力をもつソレを放置しておくのは危険だった。

 シュラは時のないその獄へ、二日と日をおかず通い続けた。
 女神の結界を抜け、かつて自分の主であった存在を探す。
 六畳ほどの狭い空間に、彼はいた。
 黄金聖衣と同じ素材で作られた首輪を嵌められ、枷となる腕輪、足輪で二重に封じられている。
 彼はシュラに気づくと、狂気にも似た憎悪をもって睨んだ。
「裏切り者」
「それは貴方もでしょう。聖闘士でありながら女神に刃を向けた、裏切り者は」
 シュラは意に介することもなく近づいて、紅い瞳をじっと見つめた。黒サガのギラギラと光る視線が刺すように鋭い。
「ここから出せ」
「それは出来ません」
「せめて服を寄越せ」
「必要ないでしょう。貴方は外に出ることはないし、ここへはオレしか来ない」
 黒サガは、長い艶やかな髪が身体を覆うとはいえ、黄金の枷以外は何も身につけていない。
 シュラは黒サガの首輪を掴むと、引きずり倒すようにして床へと押し付けた。力を封じられている状態では、黒サガといえど黄金聖衣を着用するシュラに抵抗するすべもない。
「貴方が教えてくれたんですよ、力こそが正義なのだと」
「貴様…っ!それを是とせず、女神に忠義を戻したくせに…っ!」
「そうです。だから、これから貴方にするのは間違ったこと」
 未だ抵抗のやむ気配のない黒サガを、シュラは小宇宙だけで圧する。
「オレに飼われて、オレのものになってしまいなさい、サガ。オレだけを見て、世界なんて気にならなくなってしまったら、ここから出してさしあげられます」
「ふざけ…るな」
「ここでは自害も無駄だ。冥府で死ぬことなど出来はしない」
 とつとつと語るシュラの手が、首輪から頬へと優しく移されたとき、初めて黒サガの目に動揺の色が浮かんだ。


2008/5/5

◆必殺技対決…(シャカVS蟹+リア)

「…出来ればお前たちの宮でやってくれないだろうか」
 獅子宮のど真ん中に繰り広げられている異空間を前にして、守護主のアイオリアが迷惑そうに声をかけたものの、シャカとデスマスクはさらりと聞き流した。
 その間にも、シャカの繰り出した天空覇邪魑魅魍魎は大量の怨霊モドキを発生させており、デスマスクは積尸気冥界波によって、その霊的生命体を沸いたそばから冥界へ送り返している。

 二人の行なっている事はいわば消耗戦であり、どちらかの小宇宙が尽きるまで無駄な千日戦争が続きそうだった。

 アイオリアは諦めず、デスマスクを説得する事にした。
「デスマスク、お前が小宇宙の総量でシャカに適うわけないだろう。ここは諦めろ」
 説得しようという気持ちはあっても、説得能力をあまり持たぬのが彼だ。
「ふざけんな!天舞宝輪ならともかく、魑魅魍魎相手ならオレの得意分野なんだよ。小僧は下がってろ」
 アイオリアの率直過ぎる評価は、却ってデスマスクを煽ってしまった。
「大体、何故オレの宮なのだ!」
 諦めず噛み付くアイオリアへ、今度はシャカが応える。
「君の宮が我々の宮の真ん中にあるからに決まっているだろう。互いの宮では守護主側が有利になるので公平にしたのだよ」
 何が悪いのかねと平然と言い切るシャカに、常識人のアイオリアは返す言葉を探し出せず頭を抱えた。

 アイオリアは短気ではあったが、不遇の13年間の生活で理不尽を流す処世術も学んでいた。
(宮を破損されたら、修理費の請求書はこの二人宛にするようシオン様に伝えれば良いか)
 さくりと割り切ると、生まれて初めて己の宮の守護を諦め、人馬宮へと避難していったのだった。


2008/5/11
◆黒点…(LCキャラ有・シジフォス←サガ)

 夢界は、ありえぬ事を可能とする世界だ。
 他人の心を覗くことも、死者に会うことも、過去を塗り替えることも簡単だ。
 ただし、それが真実か否かは判らない。真実を問う事自体意味がない。
 現実を生きる者にとって、夢は夢に過ぎない。

「だから、君はあまり夢界に来てはいけないよ」

 そう告げる彼は、前聖戦の代のサジタリアスだという。
 面差しはアイオロスに似て、それでいて彼にはない翳りと、同じだけの光を持っていた。
 サガは何故か、この太陽になら触れることが出来る、そう思った。
「夢界でないと、貴方に会えないだろう」
 既に転生を果たした魂は、冥界で探しても無駄だ。そして、転生先の現世でその魂を見つけたとしても、出会える相手はもうシジフォスではない。
 サガがそう言うと、シジフォスは困ったように笑い「こんな俺でも会いたいと思うのかな?」と己の胸に手を当てる。
 すると、いつの間にかその姿は射手座の冥衣を纏ったものとなった。
「今は自責のためではなく、自戒の為にこの冥衣を残している。俺の過ちを忘れないために」
 闇の闘衣が羽を広げ、夢の空間で黒くキラキラと輝く。
「でも、君には射手座の光だけ見て欲しい。アイオロスもそう願っている」
「それは、ずるいだろう」
 サガは即座に言った。
「私は私の光も闇も全て見せる。もう隠さない。だから、もし射手座に闇があるというのならば、それを私にも受け入れさせてくれないか」
 一拍おいて、サガは続けた

「それでもサジタリアスは、私の光に違いないのだ」

 シジフォスは目を見開き、先ほどよりももっと困ったように笑った。
「君は理想家だから、俺より夢に囚われやすい」
 だからあまり来てはいけないのだよと、今日も彼はまた同じ言葉を繰り返す。


2008/5/16
◆太陽…(真紅の少年伝説・サガv星矢)

 今日も双児宮へ遊びに来た星矢を、サガはいつものように笑顔で迎え入れた。
 年の離れた後輩との会話は、同僚である黄金聖闘士たちとの会話とはまた違った楽しさがある。
 頻繁に訪れる星矢のために、双児宮には常備菓子まで用意されるようになった。
 その菓子をつまみながら、星矢がサガに問う。本日の話題は、隠された太陽神との戦いだった。

「黄金聖闘士の力があれば、自分達でアベルを倒せたんじゃないのか?」
 自分を教え諭し、敵であるジャオウを道連れにして果てたサガの姿を思い出すと、今でも星矢は悔しくて納得がいかないのだ。
 いや、サガはまだいい。コロナの聖闘士に敗れたシュラとカミュの話を聞くと、黄金聖闘士の力はその程度ではないのにと、星矢の憤りは深まった。
 憤懣やるかたないという風情の星矢へ、サガは微笑んで答える。
「アベルに拳を向けるのは無理であったろうな。その瞬間に、私達は死体へと戻されていたろう」
 確かにあの時のサガ達は、アベルによって蘇生された身であったので、アベル自身へ拳を向けることは無理な状況にはあった。
「そもそも、最初から太陽神とその眷属に対しては、力を発揮できぬように蘇生されていたゆえ」
「そんなのずるいだろ!」
「怒るな。私が太陽神でもそうする。当たり前のことだ」
 サガが穏やかになだめる。
「知っての通り、黄金聖衣は太陽の光を古来より溜めている。それはつまり、太陽神の干渉を受けやすいという意味でもある。まして、あの時の私達はアベルによって蘇生された。創造主でもあり太陽神でもあるアベルに逆らうことは出来なかった。叛旗を翻すことが出来たカミュやシュラの精神力こそ驚嘆すべきだと思う」
「でも、…サガはジャオウと同等に戦ったじゃないか」
 納得のいかぬ顔で星矢がこぼす。
「私は身のうちに闇を持っている。それゆえ、カミュやシュラと違い、ある程度は太陽の力を相殺出来たのだよ」
 そう答えたサガの視線は自嘲を含んだもので。
 星矢ははっと表情を変え、座っていた椅子から降りて回り込むと、サガをぎゅうっと抱きしめる。
「それなら、サガの中の闇がオレを救ってくれた事になる。だから、そんな風に自分の中の闇を嫌うな。その闇もサガにとって必要なものなんだから」
 サガは困ったように笑いながらも、後輩の腕を振り払らわずに受け入れた。
「私にとっては、お前もまた逆らえぬ眩しい太陽なのだ、星矢」


2008/5/20
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