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◆JUNK12

JUNKには、ブログなどで勢いのままに書きなぐった小ネタが5話ずつ格納されています。たまにこっそり加筆したり訂正したり。↑OLD↓NEW


◆夢占い…(カノサガでもサガカノでも)

弟と寝る夢を見た。
何故そんな夢を観たのかは判らないし、どうして自分がカノンの求めに応えていたのかも判らない。
ただ、無性に気持ちよくて充足したのは覚えている。
夢の中で私は、弟と自分を幽体離脱したような第三者として映画のように眺めていた。
黒サガとの分裂ともまた違った、夢ならではの現実味ある多角視だ。
普段の私であれば、血の繋がったカノンと寝る事に躊躇するに決まっている。
なのに、夢の中ではとても自分とは思えない行動でカノンと繋がった。
思い出して顔が赤くなる。
あれは無意識の私の願望なのだろうか。
いやいやそんな筈は絶対に無い。
絶対にないが、何だか不安になって図書館から夢分析の本を借りてきた。

「なに読んでるんだよ、サガ」
「なっ…なんでもない、ちょっと夢について調べ物があってな」
こんな時に限ってカノンが興味を寄せてくる。
普段は私の読む本になど見向きもしないくせに。
「夢調べんのにユングとかフロイトとかでなく、夢占い本…?」
カノンが呆れたような顔をしている。私だって恥ずかしいが、真面目に調べるのはもっと恥ずかしかったのだ。
「た、たまには良いだろう!」
「サガは占いを信じるタイプじゃないのに?」
「星占いも星見も似たようなものだ」
「まがりなりにも教皇経験者がそんな事言っていいのかよ。まあいいや、どんな夢を見たんだ?」
言えるわけがない。
「お前には…」
関係ない、と続けようとして口ごもる。そう言っては嘘になる。
このような些細なことであっても嘘は嫌だった。嘘はあの13年間でもう十分だ。
「オレが何だよ、途中で途切れると気になるだろ」
「うっ。その、お前の事を調べようと思って」
これなら嘘ではない…と思う。
カノンはふぅんと納得したようなそうでないような顔をしながら、私から本を取り上げた。
「オレもちょっと見てみようかな」
「お前が何を調べるというのだ」
「兄さんのことを」
ニヤリと意地悪く笑いながら私を見る。
ポーカーフェイスでいるつもりだったのに、意図せずして顔が赤くなった。
あんな夢のせいだ。
カノンは私に構わず頁をめくっていたが、見つけたらしい項目に目を通すとパタンと本を閉じた。
「何が書いてあった?」
「兄弟姉妹ってトコロを見てみたんだがな…」
肩をすくめてカノンは本を放り投げてくる。
「夢に出てくる兄は父や恋人の象徴だってさ。ホントかっての」
そんなことを言われるとますます意識してしまう。


後日、あの夢は黒サガの見せた嫌がらせだったと判明した。
しかし黒サガも私である事を鑑みると、やっぱり自分の願望である気がして、その度に私はその考えを水面下へと押し込めるのだ。


2007/7/27

◆邪魔せずとも馬に蹴られる…(ロスサガ+デス)

 蘇生後。
「サガ、今度こそ君を守ってみせる」
 アイオロスは相変わらず真っ直ぐで堅物だ。
「気持ちは嬉しいが、むしろ教皇となる君が守られる立場ではないのか?」
 サガはサガで真面目かつ色気がないっつーか。

 こいつらはある意味似たもの同士だ。色恋沙汰からは何光年も遠い場所にいやがるのに、アテられている気分になって砂糖を吐きたくなるのは俺のせいじゃないと思うわけよ。

「守るという字はケモノヘンを付けると狩るという字になるな」

 徒然なるままに心に移りゆくよしなし事を、そこはかとなく口に出してみると、二人から困ったような呆れたような目を向けられた。

「けもの偏は犬という字を崩したものだな…それは私が女神の犬としてサガを狩るんじゃないかという揶揄か?」
「私の中の獣がアイオロスを狩ることへの牽制だろうか、デスマスク」

 こんな二人でもやっぱり13年前のアレがトラウマなのかもしれない。
 連想内容が微妙に暗いぞ。

「さすが黄金年長組は東洋のコトバにも詳しいね。だが別に他意はねーよ。それに、守りあうより狩りあう方が楽しそうじゃん」
「なんだか黒い方のサガみたいな台詞だね」
「えっ?アイオロスの中でもう1人の私はそんなイメージなのか?」
「しなやかで美しい野生の獣っぽい感じ?」
「私は逆に、アイオロスの方が気高い獣の印象がある」

 …。
 やっぱりアテられている気がするのは俺の思い込みじゃねえと思う。
 ま、これも平和な証拠だと俺は生あくびを噛み殺す。


2007/7/31
◆溶かしたい…(年の差ロスサガ)

「その奥のいちごとラムレーズンのジェラードを1つずつ。ドライアイスは1時間分ほどでお願いする」
 聖域用の買出しで共に街へ降りたサガが、横で珍しく自分用の買物をした。
 あんまり嬉しそうに氷菓を頼んでいるので、つい俺は尋ねる。
「サガってそんなにアイス好きだっけ?」
「私ではなくカノンが…」
 言いかけてサガは俺の顔を見た。そして店の奥へ再度声をかける。
「すまない、チェリーブランデーと白桃のを1つずつ別箱で追加してこの男に」
「えっ、いや別に請求したわけじゃないぞ」
 慌てて横から口を挟むが、サガはこちらを見て笑いながら片目を瞑った。
「たまにはお前も、弟のアイオリアへ土産を持って帰ってやれ。それに私もお前の目の前で、自分達の分だけ買うのは気が引けるのだ」
 こういうときのサガはすっかり兄の顔をしている。
 いやでもサガとカノンは双子で同い年なんだけどな。
 そんな俺の内面を知ってか知らずか、サガがニコニコしたまま話しかけてくる。
「なあ、アイオロス」
「何だ?」
「二人分買えるというのは、いいな」
 なにげないサガの言葉に、一瞬言葉が詰まった。
 何かを買うとき当たり前のように兄弟分を買ってきた俺達と違い、双子であることを隠してきたサガとカノンは、物を買うのにも細心の注意を払ってきたのだろう。
 サガの上機嫌の理由が判った気がして、俺はわずかな嫉妬を追い払う。
 こんな笑顔をされたら何も言えない。俺も柔らかく微笑み返す。
 でも、それはそれとして、少しぐらい俺がこの状況に便乗したっていいよな?
「次は俺のためだけに何か奢って欲しいな」
「まったくお前は…奢られる事が前提なのか」
 サガが呆れたような可笑しそうな顔で返事をする。それでも嫌とは言わない。その優しさに俺は付けこむ。
「そんなことは無いぞ。では逆に今回のお返しにサガへ俺が奢るってことで、どこかへ遊びにいかないか」
 さりげなくさりげなく、デートのお誘いを持ちかけてみる。
「そうだな…お前の奢りというのは怖い気もするが、久しぶりに二人で職務と関係なく出かけるのも楽しそうだ」
 多分サガはデートなんてつもりは無いのだろうが、了承をとりつけた者勝ちだ。

 一番の難問は、14歳と28歳でどこに出かけるのかという事だった。
 まあ蘇生後の年齢差のおかげで、サガの俺へのガードが緩んでいるわけだけど。
 逆を言えば年下扱いで、俺の望む関係からは距離が遠ざかったともいえる。

 店員からジェラードの入った箱を受け取りながら、離れていた13年間がアイスのように溶けて流れてしまえばいいのにと思った。


2007/8/8
◆似たもの兄弟同士…(双子に負けない兄弟馬鹿なロス&リア)


「サガって真っ直ぐなんだよな」

 アイオロスがジェラードをスプーンで行儀悪く突付きながら呟いた。
 ジェラードはアイオロスが弟である獅子宮の主に持ち帰った土産だ。
 木製の粗末なテーブルを挟んで、アイオリアとアイオロスは氷菓を口に運んでいる。
 兄がサガのことを語るのを、アイオリアは複雑そうな面持ちで聞いていた。

「彼は人格が白い方へ傾いても、黒い方へ傾いても、ベクトルが逆なだけでどちらも真っ直ぐで純粋だ。純粋であるために二つに分かれているのかもしれないけれど」
「…黒い方は野望に正直なだけな気もするが」
「正直だね。正直すぎて不器用なタイプだ」
「うー…賛同はしかねるが、二重人格なだけで、個々では裏表の無い人だとは思う…」

 二重人格を心の弱さであるかのように思うのは、うつ病が心の弱さによる甘えと考えるのと同じ誤解である。アイオリアはそれを良く知っている。確かにサガは心身ともに強く、真っ直ぐだ。
 だが、流石にアイオリアは、黒サガに対して兄のようには論ずる事が出来ない。
 それは、過去の黒サガの仕打ちを振り返れば無理もないことだった。兄が汚名をきせられた事による被害は、全て弟であるアイオリアが被ったと言っても良いのだから。
「お前には苦労をかけた」
 スプーンを持ったまま、アイオロスがニコリと笑う。
 この笑顔が曲者だとカノンがその場に居たら言うだろう。全ての闇を洗い流すような太陽の笑み。
 その微笑も、ある意味で神のような笑顔であるわけだが、アイオロスは別にその笑顔で誤魔化そうとしているわけではない。サガと同様に心からのものだ。
 ただ、それを見た弟たちが、兄の笑顔に負けてしまうだけで。
 カノンもアイオリアも、兄の笑顔には弱かった。

「兄さんが帰ってきてくれたから、もういい」
 アイオリアはぶっきらぼうに答えると、ジェラードを黙々と口に運んだ。
 アイオロスが目を細める。
「お前は素直で嬉しいよ。サガの弟くんは素直でも正直でもないからなあ」
 そこが可愛いんだけどと平然と言う兄に、アイオリアは口に入れたばかりの氷菓を盛大に噴出しそうになる。
「それ…本人の前で言わない方がいいと思う」
 当然の弟の心配をよそに、こともなげにアイオロスは続けていく。
「カノンのあれは、偽るのが習いになってるんだろうね。最近はそうでもないようだが、まだまだサガに対しても素直じゃないし。海神を騙していたという頃は自分の心すらも騙していたのだろうな」
 ポセイドンとの戦いを経験しているアイオリアは、その言葉には頷いた。
 直接は戦いに参加していないものの、その時の海将軍たちとのやり取りは、星矢たちから話を聞いていた。
 13年間を憎しみで生きるなどという事は、自分を騙さなければ無理だろう。
(俺が同じだけの期間、逆賊と言われた兄さんを心から消そうとしても、最後までは憎みきれなかったように)
 アイオリアは海の底でのカノンを想像した。
 13年前に兄を亡くした自分とは違い、13年たってから兄の死が訪れたカノンでは兄に対する憎しみの昇華の仕方も、気持ちの区切りも、また異なったに違いないとアイオリアは思った。
 ただ、それも想像でしかないが。

「しかし、今のカノンは真っ直ぐだと思うよ兄さん。それに強い」
「そうだな、サガや女神の事になると素を見せてくる…あれが本来のカノンなのだろう」
 アイオロスは残りのジェラードをひとくちで口に放り込んだ。
 そしてまた笑みを浮かべて弟を見る。
「お前も、カノンと同じくらい兄想いだな?」
 予期せぬ言葉で、今度こそアイオリアは食べていたジェラードを噴出した。
「おっ、俺はブラコンじゃない…あそこまでは」
 反論するも、最後はごにょごにょと小さく付け加え。

 今は弟よりも年下であるアイオロスは、にこにこと『それこそカノンの前で言わない方が良い』と返し、サガと同じ兄としての顔を見せるのだった。


2007/8/9
◆海よりの使者…(双子と海界の関係)

「おいサガ、どういうつもりだ!突然教皇宮へ呼び出して職務を手伝えなどと!」

 怒鳴るカノンのことなど気にも留めぬ顔で、執務席ではサガがペンを走らせている。
 目線は卓上の書類に向けたまま、彼はやんわりと答えた。
「先ほど、お前に用のある海界の使者がきたと白羊宮から連絡が来てな」
 カノンはバン!と机を叩いた。
「知っている!アイザックだろう?用があるのならば直ぐにここへ通せ」
「『残念ながら、双子座のカノンは多忙ゆえ、1時間ほどお待ち願いたい』…使者どのにはそうお伝えした」
「どういうつもりだサガ、海界のことで邪魔立てをするのならば、お前とて許さん」
 珍しく兄に対して毛を逆立てる弟の小宇宙に、ようやくサガは顔を上げた。
「今日はアフロディーテが出かけていて宮におらぬ」
「それが今の話と何の関係がある!」
「ムウがクラーケン殿に用件を伺ったところ、決裁書類に海将軍筆頭のサインがいるというだけで、期限は今日中であれば構わないらしい」
「だから何だ」
「教皇宮に一番近い双魚宮の主がおらぬゆえ、彼にはその下の宝瓶宮でお待ち頂くことになっている」
「…カミュのところか」
 サガは執務席に座したまま、真っ直ぐにカノンを見上げた。
「そうだ。それで、何か不満があるか?」
「………ちっ」
 カノンは口にしようとしていた文句を押しとどめ、どっかりと隣の席に腰を下ろした。

「回りくどいんだよお前は!で、手伝って欲しい仕事というのは何だ!」
 サガはにっこり笑って分厚い書類の束を差し出した。


2007/8/12 サガは弟が迷惑かけた&世話になった海界には無条件で優しいといいな!
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