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◆矯正開花…(別途のタナサガ話前提な歪みサガJUNK)
11.足を舐めろ/12.薮蛇/13.破壊者/14.自賛批判/15.着用状態で
足を舐めろ…タナトスと統合サガ。統合しているので逆転ぎみ。


「おい、サガ」
 長椅子へ尊大に腰をかけているタナトスが、何やら思いついたようで、サガに声をかけた。
 サガはといえば来客用の茶菓子を用意しようとして見つからず、隠してあったカノンの酒で賄おうとしているところで、酒杯とともにそれを銀盆に乗せタナトスの元へ戻る。
「なにか?」
 カノンの酒ならば上質であろうと勝手にあたりをつけて、サガはそれをテーブルへと置く。
 カノンには後でつまみでも追加して買い直して謝れば良いと考えているあたりが、いつものサガではない。
 タナトスもそれは分かっているものの、しかし己の側の態度を変えるつもりは無く、逆にいつも以上に隷従を強いた。
「もてなすつもりならば、酒などよりも、跪いてオレの足を舐めろ」
 さらりと無茶をいうのがタナトスである。
 しかしサガはその手の定型句に疎かった。微妙な顔をしながらも、タナトスの足元へ屈みこみ、履いているサンダルを脱がせ始める。当然タナトスが突っ込んだ。
「舐めろといったら、履物の上からにきまっておろう」
「外履きなのだぞ、汚いではないか。そもそも自分の靴を舐められて嬉しいのか?」
 サガも直球で疑問を零す。タナトスに対しても遠慮がない。
「そこを敢えて舐める事によって忠誠の高さを示すという様式美だ!」
 言葉に出して説明すると、とても間が抜けてしまうが、説明しただけタナトスにしては親切だ。だがこのサガは空気も読まない。
「わたしの忠誠先はお前ではないし、たとえ女神であろうと靴先は舐めない。わたしの忠誠は、そんな方法では測らせない」
「お前は善の半分に習って、もう少し歯に衣を着せることを覚えろ…こら、足をくすぐるな!」
 そう、今日タナトスを目の前にしているのは、珍しく白のサガではなく統合しているサガなのだった。
 機嫌を悪くしかけたタナトスの足からサンダルを外し、くすぐって弄んでから、その足先へと軽く口付ける。
「靴の中身ならば、もっと存分に舐めても構わぬが」
 低い声で笑い、長めの前髪の間から見上げてくるサガの瞳を覗いたタナトスは、何となく身の危険を感じ、黙ったまま自分でサンダルを履き直した。

2009/9/14 統合サガには弱いタナトスだと私が萌えます。

◆薮蛇…白サガと感覚共有する黒サガ


「なあなあ、白いほうの兄さんは、今どうなっているのだ?」
 弟の何気ない発言と同時に、黒サガは目の前のテーブルを叩き壊した。
 どす黒いオーラを発しながら紅い目でカノンを睨みつつ、それでも返答は返す。
「…冥界にいる」
 精神だけ黒サガと己を切り分けて冥界へ飛んでいる白サガは、タナトスに会いに行っているのだった。
 部屋の空気の重さが一気に10倍になる中、カノンはめげずに話を続けた。
「や、やっぱ記憶とか繋がってるのか?感覚の共有とかどうなって…」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 なんだか黒サガから魑魅魍魎が溢れ出しそうな勢いになってきて、流石のカノンも地雷を踏んだことに気がついた。
「あっ、オレ急用を思い出した!」
 慌てて立ち上り、ミロの宮にでも避難するべく逃げかける。しかしその手を黒サガが掴んだ。
「愚弟…アレが現在どのような状況なのか貴様も知りたいか…」
「け、結構だ!」
 何だかわからないが、恐怖のあまり涙目になるカノン。

 黒サガの手を振り切って逃げ出したものの、拒絶した機会が惜しいものであったのか、逃げて正解であったのか、後から振り返ってもカノンには判別しかねた。


2006/12/13 格納し忘れのSSって結構いっぱいありますね…

◆破壊者…タナサガとヒュプノス(エピG設定あり)


 時の流れの定かではない冥界では、エリシオンの存在自体が夢のようなもの。
 眠りを司るヒュプノスは、そのエリシオン内に一人の男の姿を見つけて溜息をついた。
 その相手の名はサガ。アテナの黄金の走狗。
 にも関わらず、タナトスの気まぐれによりこの花園に留め置かれている異形の存在。

 彼は見かけだけであればニンフにも劣らぬ美しさをもち、凛としたその魂もプリズムのように十色に変化して飽きることはない。二重精神構造を持つ魂独特の危うさがサガを引き立たせており、ただでさえ美しいものを好むタナトスが、生前から死を求め続けてきたサガを宝石のようにお気に入りとするのは良く判る。

 しかし、危険な存在だ。

 敵方の黄金聖闘士であるという以上に、サガという男自身の持つ何か得体の知れない因子をヒュプノスは気にかけていた。クロノスをさえ動かしたサガの特性…変革や騒乱をもたらし、時には破滅に向かわせる、そういった因子を彼はもっている。そのような不安要素をハーデス様の眠るこの地には持ち込まないで欲しいと思っているのだが、人間を見下しているタナトスから言わせると、たかが人間一匹に対して心配のしすぎだということになってしまう。

 個人としてのサガのことは気に入っていると思う。性格も穏やかであり、品格も高く、神への礼も心得ている。タナトスと気の合うのが不思議なところだが、女神の下僕であるということ以外は審美眼の厳しい自分から見ても余裕で及第点を与えられる。しかし、その事とエリシオンの守護者としての心配は別物だ。

 思考を巡らせていると、サガがこちらに気づき、振り向いて微笑んだ。
「タナトス様ならば、離宮におられます」
 気を遣っているのか、他のものの前では敬称をつけてその名を呼ぶ。ヒュプノスがタナトスに会いにきたのだと思ったのだろう、死の神の居場所を伝えてきた。離宮とはタナトスがサガへ与えたエリシオンでの仮住まいだ。最近のタナトスは、よくそこへと入り浸っている。
「それでお前は、ここで何をしている」
「…何も。ただ、あの方が休まれたので、邪魔にならぬよう外へ出たまで」
 ヒュプノスは眉をひそめた。休んだというのは、眠りの事ではあるまい。それならば己の管轄であり、半神が寝たというのに判らぬ自分ではない。
 サガがゆるりと自分の髪をかきあげた。その動作に含まれる無自覚であろう微細な色香に、ますますヒュプノスは顔をしかめる。この男は、タナトスと同衾したばかりなのだ。
 タナトスは死の神。それゆえ戯れにニンフや人間と肌を合わせたところで、それは生の営みとしてではなく、快楽の為だ。サガとのそれとて同じ事のはず。同性と身体を結ぶ時点で、命を生む行為からはかけ離れている。その代わり死のありかたとは矛盾しない。手慰みの交わりなど、それこそ神代の時代から何度も繰り返されてきたことだ。
 しかし、秘めごとの後で神であるタナトスが休んでいるという。神を受け入れたサガではなく。
(まさか)
 ヒュプノスは背筋が寒くなるのを覚えた。
 もしも死の神が、サガを抱いたその後に回復を図るとするのならば、可能性は1つしかない。
 永遠の存在である神以外の、有限の命あるものを(つまりサガを)、タナトスは生の営みの一環として抱こうとしたのだ。つまり、何らかの愛情を持って。
 死の神がそのようなことをしたのならば、存在に負荷の掛からぬわけがない。
 タナトスは文字通り「休んでいる」のだ。

 ヒュプノスは黙ってサガを見た。
 サガは何も言わずに足元の花を摘み、それを風に流して散らせていた。


2006/12/5 これもブログからの発掘書きかけSSに続きを付け足したものです。
自賛批判…人間嫌いのタナトス


 エリシオンに与えられた離宮で、サガが言葉どおり浮世を忘れて寛いでいると、不機嫌そうなタナトスがやってきて長椅子へどかりと腰を下ろした。
 突然の来訪はいつものことなので、サガは慌てず神酒と酒肴の用意をして銀盆に乗せる。
「また人間界へ?」
「ああ、人間どもが大量に仕事を沸かせてくれたのでな」
 おそらくどこかで内乱でもあったのだろう。サガは眉を潜めた。
 タナトスは構わず吐き出し続ける。
「散々自分たちで醜く争い殺しあっておきながら、オレの来訪を忌むべきものと唾棄する。そのくせ最後には人間賛歌だの生命の尊さだの持ち出して誤魔化そうとする。アテナあたりが言うのならばともかく、人間がそのように言うのは単なる自画自賛であろう。そのような事は世界中から争いを無くしてからほざくが良いわ」
 望まぬ死の訪れを歓迎する者など、そうはいないだろう。タナトス側からすれば理不尽なことではあるので、忌まれ続けたその怒りを人間にぶつけ、見下すのは仕方のないことなのかもしれない。
 サガはタナトスへそっと酒杯を渡した。
「貴方を称えるわたしも愚かだろうか」
「なに」
「生を讃えるも死を称えるも、わたしには同じに思える」
「…」
「それに、神々同士ですらやまぬ争いを、貴方の言う愚かな人間に終止符をうてなど、それは無理と言うもの」
「…フン」
 タナトスが受け取った杯へと神酒を注ぎ、サガはタナトスよりも一段低い床へと座する。
「人間を、わたし達を見捨てないでくれないか」
 そう言って見上げるサガから視線を逸らし、タナトスは黙って酒を呷った。

2009/11/24
着用状態で…コスチュームプレイの一種?

「サガよ、次に冥界へ来る折には、黄金聖衣を着てくるが良い」
 そのように話したところ、目の前のサガは不思議そうな顔をした。
 黄金聖衣は女神の聖闘士の証でもあり、死人の嫌う太陽の光をはなつものでもある。武具を持ち込むことによる無用な警戒を受けぬためにも、サガは通常、私用では冥界で聖衣を着用しない。黄金聖衣を着たほうが阿頼耶識まで小宇宙を高めやすい筈なのだが、それでも自力で死界へ降りてくる。
 視線が『よいのだろうか?』とタナトスへ尋ねている。半分疑心も篭っているようだ。
「安心しろ、今さら砕くつもりも無い」
「では、何のために?」
 まだ多少の不安を見せるサガへ、オレは当然のように告げてやった。
「女神の聖衣を付けたままのお前を抱くのも面白いかと思って」
 一瞬サガは何を言われたのか理解できなかったのか、目をぱちりとさせ、それから真っ赤になって反駁してきた。
「そ、そのような不埒な目的で黄金聖衣を纏うなど、わたしが許しても、聖衣が許すまい」
「ほう」
 オレは目を細める。
「お前は、許すのか」
「ち…違う、今のは言葉のあやだ、タナトス」
 相変わらず反応が若々しい。聖域純粋培養のこの男は、こちら方面にはとても疎く、反応に困っているのが判る。ますます困らせたくなって、オレはサガの身体を引き寄せた。
「ならば、冥衣ならば良いのだな」
「な、」
「黄金聖衣はいずれまた、先に双子座の冥衣で試すこととしよう」
 サガが反論の糸口を見つけられずに口をぱくぱくさせているので、動きを止める為に顔を近づけ、その唇をぺろりと舐めてやった。

→オマケ(闘衣SS「戦闘利用以外お断り」)へ

2009/12/05
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