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◆時限計画遅感症2

 殺気も隠さず、来た早々マヴロスエリプションクラストたあ、よっぽど腹が立ったんだなァ弟くん。あ、技の名前はお前の兄ちゃんから聞いたのよ。こんな長え名前を一発で覚えたなんてスゲエだろ、褒めてくれよ。…何、違ってる?細けえなあ。

 ていうか、お前バッカじゃねえの?俺、『兄』は大嫌いだが『弟』には優しいわけよこれでも。だからせっかく兄貴をぎゃふんと言わせてやれるような、おいしい据え膳状態用意してやったっていうのに、まさかほっぽって来たのかよ。は?兄のプライドを傷つけたくない?はー、何でそんなイイ子ちゃんなの。俺には理解できんね。あの兄ちゃんにも理解されてないと思うぜそーいうの。うわ、熱っちい、いきなりマグマ噴出させるなよ、そのキレやすいとこは兄ちゃんに似てるよお前。

 は?俺がアスプロスを誑かした?人聞き悪いなァ。そりゃ子供の頃に闇の一滴を落としたけどさ、その闇が育ったのは、聖域のクソッタレな因習の下地があったのと、お前がその因習破って修行したからだろ。だからあいつは追い詰められた。光と影しか役割分担がないんじゃ、光やめたら影になるしかないからな。弟思いみたいなこと言っておいて、結局は自分だけが可愛かったのサ。お前の変わりに自分が影になるのは嫌だったってことだ!

 まあ、そんな怒るなって。だけどさ、お前がそうやって下から脅かし続けたおかげで、あの兄ちゃんの中では愛情と脅威と憎悪がキレイに混ざった。ぐるぐるぐるぐるな!俺、マーブルは好きなのよ。あのクソ生意気な兄ちゃんに評価できるところがあるとすれば、そこだね。

 知ってるかい?幼いころから虐待を受け続けた子供は、それが愛情だと錯覚してしまう。成長しても、暴力や憎悪がないと、どこか安心出来ないんだ。優しくされればされるほど、本能的に愛されてないって思ってしまって、恋人から殴られたりすると安らぐんだぜ。アハハ!おっかしいよな!

 自分は暴力なんて振るってないって?いつも見てただけだ?ああ、今のは喩えだ。色黒くん、わかってねェなあ。俺は兄ちゃんの気持ちがよく判るがなあ。

 誤解がとけて、弟に寝首をかかれる心配はなくなった。俺にとってはそこムカツクけど、もうお前はあの兄ちゃんにとって、大事な家族で、安全牌なんだよ。もうお前に脅威を感じてないの。
 だから俺んトコに来る。失ったモノを求めてさ。クックック、失ってるモノなんて、何も無いのに!お前から命を狙われる不安がなくなったのと引き換えに、お前からの執着や愛情も零れ落ちたように感じてるんだぜあいつ!『自分は弟から愛されていなかったのだ』って。馬鹿すぎて笑えるだろ!
 その点、俺は気が向けばいつでも殺そうとするぜ?あの兄ちゃんが傷つこうが貶められようが知ったこっちゃない。知ってるだろう、俺は『兄』が大っ嫌いなんでね。
 だからアスプロスにとっちゃ、心地良く安らげるってわけ。意味が判らない?あ、そう。
 お前、兄貴に優しすぎなんじゃねーの?
 優しくなどしていない?じゃあ言い直そうか。お前、兄貴に甘すぎるんじゃねーの?え、甘くもしていない?そりゃお前…もうすこし自分を理解しようぜ。
 ま、真っ直ぐな弟くんには俺達のことは理解できないだろうねェ。あの状態の兄ちゃんを一人で置きざりに出来るような、残酷な弟くんにはサ! 

(−2012/5/22−)


こんな事を言ってますが、杳馬もクロノスへの自分の気持ちに気づかないお馬鹿さんです。