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◆どらブレス

1.設定 / 2.ねずみ来襲 / 3.耳落ちの過去 / 4.カノン来襲
◆設定

サガが国民的猫型ロボットだったらという、しょっぱい妄想パロ群。
猫耳が落ちているのはラブレス方式(Hをすると猫耳が落ちてしまい大人になる。普通の耳は残る)。つまり、どら●もん+ラブレス=どらブレスという無茶コラボ。
サガは未来からアナザーディメンション通路を使って星矢のもとへやってきたものの、しょっぱなから引き出しが小さすぎて出ることが適わず、洋服ダンスを利用するナルニア方式に変更。
自分用の住居に定めた押入れも入ってみたら狭かったので、迷宮作成の応用で、勝手に異次元につなげて広くしました。星矢が押入れをあけると、ちゃんといつも上の段に正座してにこにこしています。お風呂が好きなため、しず●ちゃんも兼用。以下、その他設定。

・製造時に分離したオイルを使ったために、善悪二種類の心を持っている。
・どら焼き大好き。エネルギー源。
・耳を落とされたのでねずみが怖い。
・出来のよい弟のカノンがいる。
・サガが持ってきたペガサスの聖衣を着て、星矢は今日も町内の悪の冥闘士たちを退治しています。
・ねずみ×猫です。


◆ねずみ来襲

「何で逃げるのかなあ」
 四畳半の部屋の隅へサガを追い詰め、アイオロスはにっこりと笑った。
「だだだ、黙れ、何故お前がここにいる」
 対照的にサガはといえば、いつもの完璧で穏やかな振る舞いはどこへやら、壁を背にしてあぶら汗を流している。
「ほら、サガの好きなどら焼きも買って来たんだよ。京都の高級店で」
「それはどら焼きではなく、三笠だ!」
「同じだろう」
 がさがさと薄い和紙の包みをあけ、現れた半円の和菓子を差し出してみるも、サガの反応は変わらない。
「口移しなら食べてくれる?」
「こ、ことわる」
「傷つくなあ。あの時はあんなに可愛かったのに」
「黙れ!わたしが物識らずだったのを良いことに、あのような不埒な真似を…」
 防音設備などない一般家屋ゆえ、言い合いは外まで響いている。部屋での騒ぎに気づいた星矢が駆けつけると、サガは光速で星矢の背に隠れた。
「ちょ…っと、どうしたんだサガ、この人は知り合い?」
「ねずみに知り合いなどいない」
 星矢が尋ねても、らちがあかない。
 仕方なく、星矢は見知らぬ青年の方へ向き直った。青年は星矢にもニコリと笑いかける。人好きのする笑顔だ。だが、星矢はどこかぞくりとした。
「ふうん、君がサガの、いまの家主?」
「星矢だ」
「はじめまして。俺はアイオロスという。サガに随分と懐かれているようだね」
 笑っているのに、その瞳には射抜くような力が篭っている。
(サガを守らなきゃ)
 星矢は、何故かそう感じた。
「そういうアンタは一体サガに何をしたんだ。第一ここはオレとサガの部屋だ。無断侵入だろ」
 あのサガがここまで怯えるなんて、尋常ではない。
 サガを背に庇いつつ睨みつけた星矢を、アイオロスは上から見下ろした。
「ねずみは、無断侵入するのが仕事だからね」
「アンタ、何を言って」
「それに、怯えられる方が心外だよ。俺はサガの猫耳を落としただけなのに」
 星矢の目が丸くなる。そういえばサガは以前、自分は猫型ロボットなのだと言っていた。どうみても神のような造形美の人型にしか見えなかったが、本当は猫耳がついていたらしい。
 思わず振り返ると、そのサガは真っ赤な顔で涙目になっている。
「…星矢の前で、そんな話をするな」
「ふうん?随分この子を気にするんだね。妬いていい?」
 アイオロスはサガの髪に触れようと手をのばす。しかし、その手を星矢はぱしりと払った。
「サガが怖がってる」
 星矢は目の前でなされている会話を理解できたわけではない。
 だが、今までみたこともないサガの表情が、正義感の強い星矢の庇護欲をかきたてていた。そのことがアイオロスに対しては逆効果であることは気づかない。
 アイオロスは肩をすくめ、面白そうに星矢の顔をみた。
「サガは怖がっているんじゃあないよ。いや、やっぱり怖いのかな」
「何を言っているんだアンタは」
「サガはね、俺の事を好きなんだよ。だけど俺のものになることを怖がってる。俺だけを見る事を恐れてる。何でかなあ」
 心底不思議そうに呟くアイオロスを、星矢は絶句して見つめ返した。

2010/7/27


◆耳落ちの過去

 また来るからねとアイオロスが去っていった後には、へたり込んだサガと、サガを慰める星矢が残された。
「大丈夫か、サガ。あいつは一体何者なんだ」
「…彼はねずみだ」
「ねずみ?」
「正確にはねずみ型スパイロボット…猫の駆除対象の1つ」
 未来科学の発展方向が、いまひとつ理解できない星矢であったが、今はそんなことよりもサガのことが心配だった。
「いつも冷静なサガがあんなに怖がるなんて、一体何があったんだよ」
 落ち着かせるように、サガの背中を撫でながら尋ねると、サガは自嘲気味に零した。
「みっともないところを見せてしまったな…家を守る立場にありながら、ねずみをあれほど怖がるなど、わたしは猫失格だ」
「みっともなくはないぞ、ちょっと驚きはしたけど」
 星矢の知るサガはいつも大人びていて、何事にも動じず、神のようなという形容に相応しい完璧さを誇る青年だった。それでいて奢ることなく、誰にでも優しい。そんなサガの事を、星矢は大好きだった。
 そのサガは憂いに満ちた面差しでうち萎れ、睫毛を震わせている。
「昔、わたしもまだ若くて…仲良くしようと言う奴の甘言に乗ってしまったのだ」
「甘言て…騙されたの?」
「仲良くするどころか、奴は散々わたしを噛んだ後に、あんなことを…」
「………」
「猫耳は落ちてしまい、わたしはねずみに懐柔された駄目猫の烙印を押された。ねずみと猫が仲良くなれるわけがなかったのだ」
「…それ、あのひと的には仲良くしたつもりだったんじゃ…」
 あまり深く追求するとやぶ蛇になりそうな予感がして、星矢は曖昧に突っ込む。
 しかし、サガは何も言わず溜息をついた。
 整った指先で床へ転がったままになっている三笠を拾い上げると、ぱく…とそれを口にしている。
(あ、それでもお土産は食べるんだ)
 複雑な顔をしている星矢の前で、サガは黙々と三笠を食べ続けている。
 覚えた胸の痛みを持て余しながら、星矢はサガが食べ終わるまで、ずっと黙ったまま隣でそれを見つめていた。

2010/7/28


◆カノン来襲

「あれっ?」
 いつものように、四畳半の自室へ入ろうとした星矢は足を止めた。後ろから歩いてきたサガもまた、ぶつからぬよう立ち止まる。
「どうしたのだ、星矢」
「いや、中にもサガが…あれ?」
 サガが星矢の肩越しに部屋を覗き込むと、中にはサガと寸分たがわぬ姿の青年が、胡坐をかいて星矢の漫画を読みふけっている。
「カノン!」
 サガが叫ぶのと、来訪者が顔をあげて片手をひらりと振るのは同時だった。
「驚いたぞ。突然来るのならば、前もって知らせを入れなさい」
「そりゃオレとて連絡したかったが、お前はこの時代の連絡ツールしか持ってないだろ。しかも、使いこなせていないという噂だし」
「う…携帯電話の電話機能は使えるようになったのだが…」
「携帯電話で電話機能が使えなかったら、文鎮と変わらん」
 カノンと呼ばれた青年は、サガと同じ顔立ちをしているにも関わらず、その印象はまったく異なるものだった。星矢が恐る恐る口を挟む。
「サガ、この人は?」
「ああ、すまない。わたしとした事が家主に身内を紹介もせず。カノンは私の…」
 言いかけられた台詞をさえぎり、青年が自ら名乗る。
「オレはサガの妹のカノンだ、よろしくな、小僧」
「…え?弟じゃなく?」
 星矢が思わず聞き返す。しかしカノンは馬鹿にしたように言い放った。
「お前は服を着た猫の性別を一瞬で見分ける事が出来るほど、猫の生態に長けているとでも言うのか」
「いや、どうみても…」
「どうみても妹だろう」
 押し切られた星矢は黙るしかなかった。心が女性のロボットだとしても、口調その他に全くその気配が感じられない。ついでに猫にも見えない。
 遠い目になっている星矢をよそに、サガが苦笑しながら言った。
「カノン、お前は自宅警備員のわたしと違って頭がいいのに、まだそんな事を言っているのか」
「雄同士ではサガと結婚出来ないからな。それならオレは妹でいい。製造記録も書き換え済みだ」
「結婚届の方を偽造すればいいと思うのだが」
「嫌だね、オレは愛の証はきちんと手続きを踏みたいタイプなんだよ」
「なあサガ…未来ロボット的には、妹なら兄弟でも結婚できるのか…?」
 隣で星矢がとても遠い目になっている。星矢には22世紀のロボット工学倫理観はちょっと難しかったようだ。
 その星矢をじろりとカノンが睨む。
「サガとてアカデミー創立以来の天才と言われていたのに、こんな小僧のお守りなど」
 突然お鉢が回ってきて星矢は目を白黒させた。しかし、その言葉にはサガが反論する。
「失礼なことを言うな。こう見えて星矢は凄いのだぞ。射撃などは世界でも三本の指に入る腕前だ」
「そうなのか。だが聖闘士は武器の使用を禁じられているだろう」
「…あやとりの才能も素晴らしい」
「……ほお」
 自分から矛先を逸らすため、星矢は慌ててカノンに尋ねた。
「カノンは何でまたここへ?」
「ああ、そうだった」
 手に持ったままだった漫画本を戸棚に戻し、カノンは立ち上がる。
「あのねずみ野郎がこの時代に向かった形跡があった。だからサガのことが心配でな」
「ねずみって、もしかして昨日来たアイオロスのこと?」
「なに、1日遅かったか!あの野郎、痕跡を偽装していたな。くそ、何もされなかったろうな」
 サガの顔が曇り、星矢は慌ててフォローを入れる。
「だ、大丈夫!いまのところ何も無かったよ」
「あの男は油断ならん。だいたい兄さんの猫耳はオレが落そうと思っていたのに」
 この人、返事のしにくいことばかり言うなあと星矢は思った。
 カノンは眉間に縦じわを寄せ(そうするとさらにサガに似ていた)暫し考えたあと、星矢の肩をがっしりと掴んだ。
「サガの安全が確保できるまで、しばらくオレもここで暮らすので宜しくな」
「ええええっ!?」
「1日1回はおやつにメロンパンを用意しろよ」
 星矢の返事もまたず、カノンは押入れを開けると、早速下の段を居住用に改造し始めたのだった。

2010/7/30

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