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  スニオン神殿の足下で


  海鳴りが響いて鳴り止まない。
  躯の奥から共鳴するように唸り響くスニオン岬の潮騒は、
  三叉の鉾の先端で旗めく深紅の帯飾に平伏し鼓舞するように
  足元から地面を揺らして砕け散る
  ここは、海皇ポセイドンの聖地・・。
  『女神への忠誠など聖闘士の誇りなど忘れてしまうがよい。』
  海鳴りが大きく吠える。
  『兄への思慕など血縁への情など断ち切ってしまうがよい。』
  海風に潮を含んだ髪が大きく乱れ散っていく。
  荒れ狂う海原の前では俺の思いなど、どれだけのものだと言うのだろう・・。
  波に降り注ぐ雨粒の一つに過ぎないのではないのか?
  ならば!
  断ち切る・・!
  愚かな兄の面影など、俺は断ち切って見せる・・!
  そして、その名を呟くのはこの地で最後にしよう。
  「・・・・サガ・・!」
  海鳴りが響いて鳴りやまない。
  この躯の深淵にまで鳴り響き、俺の細胞の隅々までを潮で洗っていく・・。
  ここはスニオン岬。
  全てを呑み込む、海皇ポセイドンの聖なる地・・。



アテナ神殿を仰いで
  

どこか遠くに潮騒が聞こえたような気がした。 わたしはそっと耳を塞ぐ。
繰り返す響きは、決して忘れられないあの水牢の波音。
神にしか開けることの出来ぬ牢獄へ、改心を願って弟を閉じ込めたものの、
どうしたことか、弟は消えてしまった。
たぶん、死んだのだろう。神の怒りに触れて。
「・・・・カノン・・」
海鳴りが響いて鳴り止まない。
女神よ、弟が神の罰を受けたと言うのなら、
貴女に刃を向けたわたしにも
同じ罰が下されるべきではないですか?
潮騒の向こうで、闇が高く哄笑した
『女神への忠誠など聖闘士の誇りなど忘れてしまうがよい。』
その闇は、いつも心の内側からわたしを誘うのだ。
『死んだ者を想っても詮無きこと。お前はわたしと共に地上の神となれ』
この躯の深淵にまで声は沈み、わたしの細胞の隅々までも闇に染められていく。
弟の面影を追う資格も、もうわたしには無いのかもしれない。
ここはアテナ神殿。
女神の去ったサンクチュアリ。



ジェミニの聖闘士たちはまだ知らなかった
13年の時をかけて女神の愛が彼らへ届くことを。


HAPPY BIRTHDAY FOR YOU

The Leuchtkäfer.Hotal wrote the first half and Kinnosuke wrote the latter half.
[Sanctuary of Ahena in Delfi - Temple of Poseidon in Sounion]
Photo:Leuchtkäfer.Hotal / Picture:kinnosuke
聖域とはず語り / アクマイザー





お正月にLeuchtkäfer.ホタルさんが双子誕コラボのお誘いとともに、SSとギリシアの素敵なお写真(スニオン神殿とアテナ神殿)をお年玉としてお送り下さいましたので、それへイラスト+テキスト後半を追加させて頂き、双子誕企画「じぇみに☆T×T」様へ投稿させていただいたものです。楽しいお誘いを有難う御座いました!双子誕企画主催者様にも大感謝なのです。

Photo:Leuchtkäfer.Hotal / Picture:kinnosuke