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◆ジェミニ誕2009

1. 三日前 …(双子AA)
2. ニ分割 …(白黒サガ)
3. ストラップ …(双子)
4. 変換 …(シオンとサガ)


三日前…(双子AA)


カノンよ。お前への
誕生日プレゼントを
考えているのだが
          ∧_∧  
    ∧_∧  (´<_` ) ほう
   ( ´_ゝ`)  /    ⌒i 
   /   \       | |
  /    / ̄ ̄ ̄ ̄/ | |
_(_ニつ /  FMV  / .| .|____
    \/____/ (u ⊃ 


ストップに
しようと思う
          ∧_∧  
    ∧_∧  (´<_` ;) ストリップかよ!
   ( ´_ゝ`)  /    ⌒i  まさかお前の!?
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  /    / ̄ ̄ ̄ ̄/ | |
_(_ニつ /  FMV  / .| .|____
    \/____/ (u ⊃ 


ストラップだ
相変わらず発想が
悪だな
          ∧_∧ 
    ∧_∧  (´<_`; ) じゃあなんで
   (  ´_ゝ)   /    ⌒i  伏字にするんだ
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_(_ニつ /  FMV  / .| .|____
    \/____/ (u ⊃ 


当日まで秘密に
しようと思って
          ∧_∧  
    ∧_∧  (´<_`   ) なら黙ってろ
   ( ´_ゝ`)  /   ⌒i   兄者
   /   \       | |
  /    / ̄ ̄ ̄ ̄/ | |
_(_ニつ /  FMV  / .| .|____
    \/____/ (u ⊃ 

(2009/5/27)


ニ分割…(白黒サガ)


 いつものように目覚めたサガは、内面にもうひとりの自分の気配を感じぬことに気づいて、ぱちりと目を瞬かせた。
 よくよく意識を集中させてみれば、全く存在が消えたわけではなく、自身の奥底深くに身じろぎもせず沈んでいるようだ。
 サガは深層意識のほとりで佇み、それから意をけっしてその中へと降りていった。
 本能と呼ばれる原始的感情の源泉近くに、黒サガと呼ばれる半身が横たわっている。
 サガはそっと話しかけた。
「何をしているのだ?」
 黒のサガは、白のサガの呼びかけに振り向いたが、すぐにフイと視線を逸らす。
「お前こそ何をしに此処へきたのだ」
「お前を呼びに」
 間髪いれず返された声を聞いて、黒のサガは苦笑する。
「今日が何の日か知らぬお前ではあるまい」
「誕生日、だろう?わたしの。つまりお前の」
 白のサガは黒のサガの隣へと腰を下ろした。
 黒サガは相変わらず視線を合わせない。
「女神がわたしとカノンの為に、ささやかながら一席を設けてくれたそうだよ」
「知っている」
 最低限の言葉でしか答えようとしない半身に、白のサガも苦笑した。
 頑固なところも自分たちは共通している。
 手を伸ばして半身の頭をぽふと叩くと、その手は振り払われなかったものの、初めて黒のサガがギロリと睨み返した。
「祝われるのはお前だけであろう。わたしは邪魔にならぬよう此処にいる」
「何だ、拗ねているのか?」
「違う」
「そんな理由であるのならば、わたしは力づくでもお前を連れ出すぞ」
 いつになく強引な半身に、黒のサガが目を丸くする。
「何のために」
「お前がわたしだというのなら、祝いも侮蔑も等しく受けるべきだからだ」
 白のサガは、半身を撫でていた手を離して腕を掴んだ。
「もっとも本当にお前が望まぬのなら、わたしも行かない。ここで一日お前と過ごす」
「……」
 黒のサガは諦めたように小さな溜息を付いた。
 対照的に白のサガは微笑んで「Happy Birthday」と囁いた。

(2009/5/30)


ストラップ…(双子)


「HAPPY BIRTHDAY カノン」
 そう言ってサガが持ってきた皿の上には、シフォンケーキが乗っていた。
 薄いピンクのクリームがたっぷりと添えられていて、受け取りつつ顔を近づけると、ほんのり覚えのあるローズの香りがする。
「アフロディーテのところの薔薇か」
 毒入ってねえだろうな、などと思いながら呟くと、サガが微笑んだ。
「ああ、アフロディーテがお前のためにと沢山薔薇をくれたのだ。ちなみに、それを使ってケーキを作ってくれたのはデスマスクだよ」
 サガは菓子の名前が判らないのだろう。バームクーヘンだろうがタルトだろうが、全部ケーキと呼んで誤魔化している。甘いものはそう好きというわけでもないのだが、デスマスクが作るものは絶品で、辛党のオレでも美味しくいただけるのが嬉しい。
 サガは自分用のケーキもテーブルに置き、紅茶を淹れ始めた。端で見ていても、気持ち悪いくらい機嫌がいいのが判る。サガはいつでもニコニコしているが、意外と感情は表に出さない奴なのに。
 珍しいなと思いながらもフォークを手に取り、ケーキに突き刺すと、その先端に何か硬いものが当たった。
(ま…まさか、指輪か?)
 祝い事・ケーキ・中に入っているプレゼント。この三点セットが揃っている状況下では、そんな連想をしてしまっても仕方ないだろう。
 平静を装いつつも、多少震える手で慎重にケーキをほぐしていくと、中から出てきたのは予想外のものだった。
「…何だこりゃ」
 親指の爪ほどの大きさの、精巧なジェミニ聖衣のミニチュアが、スポンジの間から煌いている。
 サガは、淹れ終わった紅茶のカップをオレの前へと押し出した。
「それは本物の聖衣と同じ素材で出来ている。私の聖衣が砕けた部分を、ムウに頼んで加工して貰ったのだ。足りない部分の原料は、シュラが探してきてくれた」
「オレにジェミニとしての自覚を持てということか?」
 思わずそう言うと、サガはごそごそと何やら取り出した。
 今度こそオレは目を丸くした。それはシードラゴンの鱗衣を模したミニチュアの小さなストラップだった。…どうみてもオリハルコン製の。
「おい、それの原料はどうした!まさか鱗衣を削ってきたのではあるまいな!」
「お前の想像どおり、これもシードラゴンの一部だが、削ってはいない。ポセイドンが砕けた部分を下さったのだ」
 シードラゴンの鱗衣が砕けたときというと、海王の矛を受けたときしかあるまい。ポセイドンとサガの間でどんな話がなされたのか気になるが、まずはサガの話を大人しく聞くことにする。
「聖衣には共鳴する性質があることを知っていよう」
「ああ、鱗衣も同じだぞ」
「このミニチュアも、わずかながら同じ性質がある」
 サガはそのシードラゴンのストラップを大事そうに両手で持った。
「海界と地上では界が異なるため、小宇宙通信が上手く届かぬ事もある。いや、海界に限らず、お前も私も立場がらさまざまな界を渡ることもあろう。そんな時でも、これがあれば…聖衣や鱗衣をまとっている互いへのナビとなり、交信が容易くなる」

 『むやみに束縛するつもりはないが、これを持っているだけで、離れていても安心できるのだ』サガがそんな事を言うものだから、オレは赤くなった顔を誤魔化すために、ひたすらデスマスク製のケーキを無言で食うしかなかった。

(2009/5/31)


変換…(シオンとサガ)


 ほぼ垂直に切り立った崖の上に、星見の聖壇がある。
 スターヒルと呼ばれるその場所は、聖域の中でも禁区とされ、教皇以外の者が立ち入る事はまずない。立ち入ろうとしても、その険しさは物理的に人を阻む。
 出入りが可能であるのは、黄金聖闘士と一部の白銀くらいのものだろう。
 教皇とて昼のスターヒルに登る事はほとんど無かった。シオンは感慨深げに辺りを見回す。夜には賑やかでうるさいくらい星がシオンへと語りかけてくるが、昼のこの場所の侘しさときたら。ときおり風だけが、強く岩場をなめしている。
 シオンは迷わずに聖堂へと向かった。
「サガ、おるのだろう?」
 勝手知ったる入り口から無造作に足を踏み入れると、案の定、長い髪の男が振り向いた。名を呼ばれた双子座の聖闘士は多少バツが悪そうに、けれども直ぐに膝をついて礼をとった。
 シオンは当然のようにそれを受け入れ、聖堂の内部を一望する。サガによって定期的に手入れをされていたのだろう。そこは小奇麗に清められたままで、積年の埃なども感じられない。
 顔を伏せたまま、サガは神妙に侘びを述べた。
「無断で侵入した罰は、いかようにもお受けいたします」
「何を今更」
 シオンは半分呆れたように切り捨てた。過去の経緯を思えば、ことさら今になって無断侵入を咎めるのも馬鹿らしい。
「かように生誕日を祝われるのが嫌か。余人を避けるほど」
 単刀直入に問うと、サガはますます顔を伏せたが、返答は無い。
 シオンは溜息を付いた。サガが朝から姿を見せぬと言ってきたのは射手座のアイオロスだ。ほおっておけと言い置いたものの、真っ先に脳裏に浮かんだのがここスターヒルだ。聖域から出ることなく、守護宮以外で黄金聖闘士が一人で過ごせる場所となると限られている。
「まあ、嫌な事は嫌なのだと行動で示せるようになったのは、お主にしては進歩だの」
「嫌なのではありません。私などには過分な厚意に思うだけで」
 やはり嫌なのではないかと、シオンは心のうちで苦笑した。
 サガは子供のように、ぽつりと呟いた。
「それに、私はもう充分に祝われてまいりました」
 自ら生を断ったサガが、己の第二の生をよしとしていないことに、シオンは気づいていた。
 聖闘士として、元反逆者として、贖罪のために生を受けたものの、未だにこちらのサガにとって命とは罰なのだ。
「祝われたとてそれは、このシオンとしてであろう」
 13年間、殺した者の誕生日を代わりに祝われる気持ちというのは、いかようなものかシオンには判らない。ただ、サガのような男にとって、それは地獄のような一日であったということは想像出来る。たとえもう一人のサガが、その痛みを簒奪の証と誇らかに笑っていたとしても。
 そして、サガはその痛みから逃げるような男でもなかった。彼は決して半身の傲慢を肯定はしなかった。
 13年間の誘惑を退け、苦しみを耐え抜いた男が、今こうして他人の許しから逃げている姿は、滑稽でもあり哀れでもあった。
「サガよ、私はお前自身の生を祝う」
 サガは顔を上げた。その表情にはまるで断罪されたかのような畏れととまどいの色がある。それを見たシオンは、手のかかる子供ほど可愛いものだという言葉を思い出し、老いたものだと自嘲した。いまサガへ沸いた感情は、まるで孫の成長を楽しむ曽祖父のものではないか。
「お主の奪った、私の誕生日は返してもらったぞ。後は勝手にするが良い」
「私に、戻れと命じないのですか?」
「それはお主の決めること」
 誕生祝いに、1日くらいスターヒルの使用権をくれてやるわと伝えるシオンへ、サガは再び黙って頭を下げる。
(サガはきっとこの孤高から降りるだろう)
 そんな予感を胸に、シオンはサガの頭を撫でた。

(2009/6/5)

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