Gemini_Birthday

◆連携技…※ロストキャンバスネタ(単行本9巻キャラ)が混じります

「なあサガ、オレ達はもっと協力しあうべきだと思わないか」
 弟が突然そのようなことを言い出したので、サガは読んでいた雑誌から顔をあげた。
「どうしたのだ突然」
 二人は女神の命により、朝から双児宮で待機中の身だ。
 本日が双子の誕生日であることから、別会場ではささやかな宴の準備が進められている。
 大富豪である沙織基準の『ささやか』さであるため、料理・設営その他に時間がかかり、主賓の二人はすることもなく自宮で迎えが来るのを待っているのだった。
「まあ聞けサガ。小宇宙の質を同じくするオレ達は、他の者よりも連携技を出しやすいと思うのだ」
「連携技?Wエクスプロージョンのようなものか」
「ありていに言えばそうだ。だが、オレ達ならば、同じ技の重ねがけではなく、別種の技でも重ねがけが出来るのではないだろうか」
「ふむ。それで?」
「二つの技を合わせる事により、別の効果が発動されるかもしれん」
「…暇だったのだな、カノン」
 時間つぶしに、最近はまっているゲームから連想でもしたのだろうとサガは思ったが、内容には興味が持てたので話の続きを聞くことにした。サガも暇であったのだ。
「とはいえ、最初から別属性の技で試すのは難しいだろうし面倒だ。オレのゴールデントライアングルとお前のアナザーディメンションあたりで試してみないか」
「青銅たちから話を聞く限り、それは名前が違うだけで同じ技の気がする…」
「何を言う。アナザーディメンションの方が大雑把な技だろう」
「広範囲と言ってくれないか。だが、まあいい。モノは試しだ、やってみたい」
 二人は立ち上がり、双児宮の中央通路へと向かった。

 戦闘用に造られた石造りの宮内部、とくに通路となる領域はとても簡素だ。ここで二人してギャラクシアンエクスプロージョンを放ったら崩壊間違いないが、ゴールデントライアングルとアナザーディメンションであれば、異世界へ飛ばされそうな設備品の心配をするだけでよい。
 幸いここには何も置かれていない。
「では、発動のタイミングに注意して技を重ねるぞ」
「了解した、カノン」
 到着早々、二人は息の合うところを見せて小宇宙を高めていく。多分にお遊び的な試みであるので、いつもの7割程度の力しか篭めていない。そのため発動までの時間は短かった。
「ゴールデントライアングル!」
「アナザーディメンション!」
 同時に叫ばれた気合一閃、見事に二つの技が融合していく……かに見えた。
 しかし、技の発現ポイントはぴたりと重なったものの、二人の見ている前でゴールデントライアングルはアナザーディメンションへと飲み込まれ、強大なエネルギー源を飲み込んだアナザーディメンションはそのまま相殺されて消えてしまったのだ。
 サガは真顔でカノンを見た。
「……確かに別効果だな?」
「タイミングが微妙に合っていなかったろう!お前の技が遅れていたぞ」
「意外と難しいのだ。お前は私の技を知っているが、私は海龍の技を知らぬ…初見なのだから無理を言うな」
「ああ、それもそうか」
 もう一人のジェミニであるカノンはサガの技を全て習得済みだが、サガの方はカノンが海界で編み出した技を知る由もない。
「この機会に覚えてみるか?ベースはアナザーディメンションと大差ないぞ」

 ということで、ひょんな理由から技のレクチャーを受けることとなったサガである。カノンの言うとおり同属性の技なだけあり、コツを掴めば簡易版ながらも真似モノを出せるようになるのに時間はそうかからなかった。
 そうなると、練習がてらゴールデントライアングルをまずは同時に出して重ねてみようという話になるのは当然で、双子は再び小宇宙を高めあう。慣れぬ技用の小宇宙を練るのに多少サガの方が手間取ったものの、三角を描く指先の動きは鏡を合わせたように寸分の狂いもなく。
「「ゴールデントライアングル!」」
 光を放つ二つのトライアングルが回転しながら重なると、それは六芒星の形となった。
 それを軸に空間が歪み、異界への扉が開かれていく。
 しかし、その向こうに現れたのは、いつもの異次元ではなかった。幻想的かつ形状しがたい非現実が広がり、しかもその異世界から、とてつもなく強い力がこちらの世界にむかって溢れ出してくる。それも複数。その中でも最も大きな力…小宇宙に、二人は覚えがあった。
「カノン!」
 慌ててサガが弟を見る。
「…ちっ」
 カノンが急いで六芒星を閉じようとしたものの、時既に遅し。
 二人の目の前には強制召喚されたヒュプノスと、その眷属神であるオネイロスたち四神が、空間の裂け目から団子のようにぼたぼたと降って来たのだった。


 宴の準備が整い、双子を呼びに来たシュラの見たものは、我が物顔で双児宮を占拠している神々と平身低頭なサガ、そして渋々といった体で茶を出しているカノンの姿だった。
 元敵神にも関わらず、強制召喚を怒りもせず逆に四神を宥めてくれたヒュプノスに対して、流石にサガもカノンも恐縮せざるを得なかったのだ。
「何をやっているんですか」
 シュラの声にいくぶん呆れの色が混じったのも仕方がない。
「いやその…暇つぶしをしていたらこんな事に…」
「くそ、まさか夢界に繋がるとは。ゲートが六芒星となった時点で気づくべきだったか」
 一体どのような暇つぶしをしたら、このような状態になるのかシュラには全く把握できなかった。けれども、シュラに気づいた女性神(のように見える)パンタソスがニコニコ手を振ってきたので、何となく火の粉が我が身にも降りかかる予感を覚えて後ずさる。
「誕生祝いの席の準備が整いましたので、いらしてください。では」
 用件のみ伝えると、シュラは挨拶もそこそこに踵を返した。

「お前達、今日が生誕日なのか?」
 残された部屋では、シュラの言葉を聞きとがめたヒュプノスが双子へと問いかけていた。頷くサガと肩を竦めたカノンへ、神々が顔を見合わせる。
「…そういう事であれば、事故とはいえ呼ばれた神のならいとして、祝福を与えるしかないだろうな」
 不本意そうではありつつも、きっぱりとオネイロスが言えば、
「祝福はしてやるから、供物くらい用意しろ」
 とイケロスが続ける。
 古来より、生誕の日に呼ばれた妖精や神は、その相手へ贈り物を与えることとなっている。しかしギリシアの神がそこまで律儀だとはサガもカノンも思っておらず、あっけにとられた。
「い、いや、この上何かして戴くのは申し訳なく…」
「サガの言うとおりだ。その言葉だけで充分だ」
 速攻で辞退するも、
「招いておいて何もさせぬとは、我らが吝嗇と笑われても構わぬということか」
 とモルペウスに返されては、返す言葉も無い。
 思わぬ展開に動揺しているサガとカノンへ向かい、ヒュプノスが告げた。
「我々眠りの神は、お前達に夢での安息を約束しよう」

 柄にも無くますます恐縮する羽目になった双子と神々の会話を背に聞きながら、
(宴の席を五人分増やす必要がありそうだ)
 とシュラは内心でひとりごち、再準備のために会場へ急いだのだった。


 

HAPPY BIRTHDAY Gemini 2008

双子誕企画「ふたごを祝うかい」様に出させて頂いた双子絵+SSです。
闘衣の塗り方に描いたときの時間の無さが見て取れますよ…
そしてSSは例によってマイ設定テンコ盛りなのですよ…
今年も双子大好きです。